日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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46 巻, 4 号
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  • 佐々木 博之, 西田 隆雄, 藤村 久子, 望月 公子
    1984 年 46 巻 4 号 p. 425-435
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ホロホロチョウにおける排泄腔旁脈管体の微細構造とリンパの生産機構を明らかにする目的で, アルコール割断法による走査電顕観察および凍結割断法お上び過酸化酵素 (HRP) 注入法による超薄切片の透過電顕観察を行った。雄ホロホロチョウの脈管体は被膜, 小柱, 被膜下周縁リンパ洞, リンパ洞および毛細血管索より構成されていた。毛細血管索の組織間隙には小動脈, 小静脈, 膠原線維, 線維芽細胞, 神経線維および神経終末が観察された。毛細血管の内皮細胞には飲み込み陥凹および小胞, 分泌陥凹および小胞, 辺縁空胞およびゆるい細胞間連結装置が見られ, さらに, これらの構造には多量のHRP穎粒が認められた。これらのことから, 毛細血管の内皮細胞は小動脈および小静脈の内皮細胞に比べ物質の輸送能力が発達していると推定された。
  • 村上 昇
    1984 年 46 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットにデキサメサゾンを2日連続投与し, 血中の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH), 副腎皮質ホルモン(CS), および副腎のCS含量の日内変動を消去した後, ACTHを午前あるいは午後に単一投与すると, 血中CSレベルにおいて, 午後投与の方が著明に高い反応性を認めた。この増強因子が液性のものであるか否かを知るために, 副腎摘出ラットを午前または午後に屠殺し, 得た血清中から ACTHを完全に除去した後副腎細胞の単層培養系に添加した。その結果午後の血清のみ, ACTHのCS分泌能を促進させる効果が認められた。一方, 正常ラットの血中 ACTHレベルを測定すると, 午後の方が有意に高い値を示し, 個体間には大きな変異があり, ACTHの律動分泌の存在が示唆された。以上のことから, 午後に, 副腎の ACTHに対する反応性を高める因子がラット血中に存在することが推察され, また, 血中 ACTHレベルは午後に上昇し, その分泌パターンは律動的である可能性が示唆された。
  • 伊勢川 直久, 土井 邦雄, 水谷 武夫, 尾崎 明, 大和田 勉, 光岡 知足
    1984 年 46 巻 4 号 p. 443-451
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    12週齢の雄ラット (SHR/NCrj) に12週間高脂肪飼料を与え, 動脈硬化症の発現に対するビタミンD2負荷の影響を臨床および病理学的に観察した。ビタミンD2を負荷したラットの血圧は負荷しない例より高値であった。ビタミンD2負荷の有無にかかわらず, 高脂肪飼料給与ラットの血清総コレステロール値およびβ-リポプロテイン値は普通飼料給与対照ラットの約3倍であった。ビタミンD2負荷ラットの大動脈では結合組織と平滑筋の増殖からなる内膜の巣状肥厚, および石灰化を伴った顕著な中膜硬化がみとめられ, 腸間膜動脈では粘液多糖類および脂質の沈着と平滑筋の増殖による内膜・中膜の顕著な不規則肥厚がみとめられ, 一部には結節性汎動脈炎が観察された。
  • 榛沢 義明, 岡 千晶, 石黒 直隆, 佐藤 儀平
    1984 年 46 巻 4 号 p. 453-457
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚舎汚水から分離された薬剤耐性大腸菌179株中88株 (49%) が伝達性Rプラスミドを保有しており, 検出された16のRプラスミドが温度感受性伝達を示した。一方, 牛舎汚水由来の薬剤耐性大腸菌では, 70株中19株 (27%) が, 伝達性Rプラスミドを保有しており, わずか2種のRプラスミドが温度感受性伝達を示したにすぎなかった。豚舎由来大腸菌からの37種の伝達性Rプラスミドと牛舎由来大腸菌の12種の計49種の伝達性Rプラスミドについて, 稔性抑制 (Fi) と不和合性状を検査したところ, 豚舎由来16種および牛舎由来9種のRプラスミドがFi+を示し, 他はFi-であった。また不和合検索では, 豚舎および牛舎汚水から分離された27種のRプラスミドは, 以下に示す計11種の不和合群に型別された。すなわち, Iα(7プラスミド), H1(6), H2(3), FII(2), N(2), FIV(2), FI(1), B(1), K(1), P(1), X(1)であった。豚舎汚水に由来する伝達性プラスミドは, 10種の異なった不和合群に分布し, 牛舎汚水由来の3種の不和合群に比べ多かった。
  • 後藤 直彰, 高岡 雅哉, 平野 紀夫, 高橋 公正, 藤原 公策
    1984 年 46 巻 4 号 p. 459-465
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス肝炎ウイルス JHM 株持続感染 DBT 細胞より得た変異株 (JHMcc株) の中枢神経系における病原性について検討した。JHMcc株 105PFU を4週齢ICRマウスに脳内接種すると 80%が生残した。脳のウイルス価は接種後 4~5日に最高値に達し, 以後低下したが10日後にも 103PFU/0.2g であった。免疫蛍光法では, 接種4後週にも大脳皮質および延髄の神経細胞に特異蛍光を認めた。病理組織学的には感染初期に大脳皮質に軽度の炎症性変化が形成されたが重篤化せずに衰退し, 以後, 脱髄とこれにともなう変化が明らかになった。接種後3週およびその後まで生残したマウスでは脱髄とともに髄鞘再生が観察された。これらの所見から生体内においてもJHMcc株の持続感染が成立すること, およびJHM株の起炎症性と脱髄とが, それぞれこのウイルスに含まれる異ったクローンによることが示唆された。
  • 高瀬 公三, 西川 比呂志, 香月 伸彦, 山田 進二
    1984 年 46 巻 4 号 p. 467-473
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    脚弱鶏の足関節由来トリレオウイルス6株 (56-168, 57-F, 56-93L, 57-161, 56-256T3 および57-162株) を, 1日齢のSPFひなに趾蹠内あるいは経口投与後, 35日齢まで隔離飼育し, 症状, 羽の異常, 趾蹠の腫脹, 腱鞘の組織病変, 腱・腱鞘からのウイルス回収およびゲル内沈降抗体の産生を検査した。いずれの株においてもひなの死亡率は低く, また脚弱は認められなかったが, 発育不良および羽の異常は趾蹠内接種群で多く観察され, 経口接種群では少数であった。趾蹠の腫脹, 腱鞘病変およびウイルス回収は各株間でそれぞれ異なっていた。56-168, 57-F および 56-93L の各株は, いずれの投与ルートでも明らかな腱鞘炎を発現し, 腱部からウイルスが回収された。一方, 57-162株は経口投与のみならず趾蹠内投与においても腱鞘炎を起こし得ず, 腱部からウイルスは回収されなかった。
  • 澤田 章, 久米 勝巳, 中井 豊次
    1984 年 46 巻 4 号 p. 475-486
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Haemophilus paragallinarum の変異菌を用い, 本菌莢膜抗原の性状, 抗莢膜抗体産生能, ならびに莢膜抗原の感染防御能を調べた。莢膜抗原は莢膜保有 hi型菌から種々な方法で抽出されたが, ホルマリン和食塩で抽出後, フェノール処理した hi-FSEx-P抗原はゲル内拡散法で莢膜抗原のみを含むことが確認された。本抗原は耐熱性, ヒアルロニダーゼ抵抗性の多糖体であった。抗莢膜抗体は間接赤血球凝集 (IHA) 試験で検出でき, 本抗体のIHA活性は莢膜抗原で特異的に阻止されたため, 莢膜抗原の量はIHA抑制価で測定しえた。莢膜抗原免疫鶏は感染防御能を欠き, かつ, 感染防御は抗莢膜抗体の有無とは無関係に, 特定の菌体抗原に対する抗体保有鶏で認められ, 感染防御能は莢膜に存在しないことが確認された。なお, ニワトリにおける抗莢膜抗体産生能は莢膜抗原の注射経路および注射時のひなの日齢によって異なった。
  • 堀口 安彦, 小崎 俊司, 阪口 玄二
    1984 年 46 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラテックス凝集反応 (RPLA) によるA, B, E型ボツリヌス菌毒素の検出を試みたところ, 4-8ng/mlの精製毒素を検出でき, A, B, E型毒素間に交差反応はみとめられなかった。菌培養上清中の毒素のRPLAによる検出感度は精製毒素の検出感度と同程度であった。牛肉中で産生された毒素もRPLAによって検出が可能で, 牛肉抽出液による特異性および感度への影響はなかった。 以上の成績から, RPLAはボツリヌス菌毒素の検出に使用できると考えられた。
  • 山我 義則, 戸尾 棋明彦
    1984 年 46 巻 4 号 p. 493-503
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    正常な牛, 馬, 山羊および犬における超音波心臓断層法 (リニア走査法) ならびにM-モード心エコー法が, その臨床応用に必要な基礎的資料を得る目的で検討された。超音波ビームが透過可能な, いわゆる cardiac window は, 牛, 山羊, 犬では左・右第3・4に肪間隙の肘頭付近に, 馬では第4・5肋間隙の肘頭背側に限定された。両法により, 心臓の各弁膜, 腔, 壁の同定およびその形態ならびに動態観察が可能であった。特に牛, 馬では, 肋骨のため心臓の横断像が観察不可能ながらも, 実時間超音波心臓断層法により, 心内構築の形態および動態の映像化が比較的容易であり, また M-モード心エコー法用プローブの走査部位ならびに方向の選択が容易であった。しかし, 各弁膜の典型的なM-モード心エコー図は, 心室の心エコー図ほど容易には得られず, とくに牛では心骨が僧帽弁おび大動脈弁の描出に影響を与えていると思われた。各構築が得られる走査部位から心臓の長軸断層像を観察し, その断層像にもとついてプローブを操作すると, 容易に目的とする心内構築のM-モード心エコー図が得られた。
  • 松井 寛二, 菅野 茂, 増山 いずみ, 天田 明男, 加納 康彦
    1984 年 46 巻 4 号 p. 505-510
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サラブレット種, ポニーならびにホルスタイン種乳牛の胎仔期, 新生仔期および成長期における心拍数の変化を追跡した。また, ポニーについては, 心拍数の変化が著しい新生仔期にアトロピンとプロプラノロールの単独ならびに同時投与を行い, 安静時心拍数に現われる反応を調べ, 母馬での成績と比較した。いずれの動物でも心拍数は胎齢の進行にともなって減少し, 出生を境にして一旦急増したのち, その後は4~5力月齢までに著減してほぼ成体にちかい値で安定した。心拍数のレベルは乳牛>ポニー>サラブレットの順に高かった。ポニー新生仔へのプロプラノロール投与で, 心拍数は投与前値に比較して有意に減少し, アトロピン投与では逆に有意に増加した。また, 日齢の進行にともなって, アトロピンに対する反応は大きく,プロプラノロールのそれは小さくなる傾向がみられた。母馬ヘプロプラノロール投与では心拍数の変化はあらわれず, アトロピン投与では有意に増加した。一方, アトロピンとプロプラノロールの同時投与により得られた固有心拍数は新生仔に比べて母馬が有意に少なかった。
  • 与那嶺 久雄, 一木 彦三, 浜川 昌敬, 島袋 哲, 杉山 公宏, 磯田 政恵
    1984 年 46 巻 4 号 p. 511-518
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らは沖縄本島における大バベシア症の実態を知る目的でこの研究を行なった。沖縄県動物管理所から譲渡された雑種犬53頭について, 脾摘除術および dexamethazone の投与によりバベシア属原虫の誘出をはかったところ, 10頭から11株のべベシア属原虫を検出した。そのうち大型の7株は Babesia canisに, 他の小型の4株は B. gibsoni に近似していた。大型原虫が検出された血液を健康雑種犬3頭に接種し, 最も強い原虫血症を示した1頭から血液250 mlを採取して液体窒素に保存後, 健康なビーグル1頭に接種し, その感染血液を順次継代して原虫血症お上び臨床症状を観察した。また原虫の自然消失後に B.gibsoni を追接種して死亡まで観察した。いっぽう, 感染血液の接種前および原虫血症確認後の血清について間接蛍光抗体法による抗体検出を行なった。以上の実験成績および Rhipicephalus sanguineus が常在する環境から, 著者らが沖縄本島の犬から検出した大型原虫は β. canis であることが明らかになった。
  • 後藤 仁, 平野 稔泰, 内田 英二, 渡辺 清香, 品川 森一, 一条 茂, 清水 亀平次
    1984 年 46 巻 4 号 p. 519-526
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌ・パルボウイルス (CPV) とネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)の理化学的ならびに生物学的性状を比較検討した。両ウイルスのおもな諸性状, 形態および大きさでは差が認められなかったが, 熱抵抗性ではCPVは 80℃ 1時間, FPLVは 80℃ 2時間の加熱で不活化された。また, 両ウイルスの培養細胞での増殖性と赤血球凝集性に差のあることを確認した。両ウイルスの増殖型ウイルスDNA の Bgl II と Hind IIIによる制限酵素切断地図で, DNA中央部は両ウイルスに共通であったが, 両端部に違いがみられた。ふつうイヌのCPVあるいはFPLV感染試験とふつうネコのCPV感染試験では幅吐, 下痢, 白血球減少などの臨床症状がみられたが, SPFネコのCPV感染では全く症状が認められなかった。しかし, ウイルス接種動物では, 臨床症状の有無に関係なく, 接種3~11日目で明らかな血中抗体の上昇が観察された。
  • 原田 孝則, 真板 敬三, 小田中 芳次, 白須 泰彦
    1984 年 46 巻 4 号 p. 527-532
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    タバコ煙吸入ハムスターに quercetin および butylated hydroxytoluene (BHT) を13週間混餌 (飼料中濃度1%) 投与し, 同抗酸化剤のタバコ煙毒性に対する影響を調査した。quercetin 投与群では, 対照喫煙群に比べ体重増加抑制および食餌効率の低下が軽減され,喉頭粘膜の肥厚が有意に抑制された。一方, BHT投与群では, 逆に体重増加抑制の程度は対照喫煙群よりも著しく, 肝組織中のビタミンA含有量が有意に減少した。以上から, quercetin が喫煙の影響を一部抑制する可能性が示唆された。しかし, BHT投与によるタバコ煙毒性に対する抑制効果は得られなかった。
  • 井土 俊郎, 宮本 猛
    1984 年 46 巻 4 号 p. 533-539
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニワトリ伝染性喉頭気管炎 (ILT) 生ウイルスワクチン (生ワクチン) とニューカッスル病 (ND) または伝染性気管支炎 (IB) 両生ワクチンを混合, 点眼接種した場合の各ワクチンの効果を SPF および市販ひなを用いて試験した。その結果, NDおよび IB両生ワクチンの効果は, ILT生ワクチンと混合接種された場合でも単味接種群における効果と変らなかった。一方, ILT生ワクチンの効果は ND生ワクチンと混合接種された場合に著しく抑制された。この著明な免疫抑制現象は, 5週齢以前の若齢ひなにおいて, ND生ワクチン接種3日前から5日後までの期間にILT 生ワクチンを接種した場合に認められた。7週齢以上のひなおよび NDウイルスの増殖を抑制するのに十分量のNDウイルス抗体を保有するひな (市販ひな) においては, たとえ両生ワクチンを混合接種してもILTに対する免疫抑制は認められなかった。これらの成績はILTおよびND両生ワクチンを若齢ひなに接種する場合には, それらの接種間隔に十分注意する必要があることを示している。
  • 吉川 尭, 山村 高章, 吉川 博康, 小山田 敏文
    1984 年 46 巻 4 号 p. 541-547
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛白血病18例 (成牛型12例, 胸腺型3例, 子牛型3例) の腫瘍化浅頚リンパ節および健康牛5例の浅頚リンパ節細胞について ATPase および AcPaseの酵素化学的活性を検討した。健康牛のリンパ節において, ATPase はBリンパ球依存域のリンパ球の細胞膜に一致して褐色の陽性反応を示していた。一方, Tリンパ球依存域である副皮質のリンパ球細胞質内には AcPase 活性を示す黒褐色の顆粒が集合して認められた。成牛型白血病12例中10例の腫瘍細胞は明らかに AcPase活性を示していたが, 胸腺および子牛型6例の腫蕩細胞は殆んど陰性を示していた。しかし, これら6例の腫蕩細胞はいずれも AcPase陽性の集合性穎粒を含んでいた。なお AcPase陽性の集合性顆粒は電顕的に clustered dense body として観察された。牛白血病の腫瘍細胞は正常リンパ節リンパ球の酵素活性を比較的忠実に反映しているとみなされた。酵素組織化学的検索は牛白血病の各型の病態解析に有力な一方法であると考える。
  • 三森 国敏, 真板 敬三, 白須 泰彦
    1984 年 46 巻 4 号 p. 549-557
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    各群56匹の Sprague-Dawley系 SPFラット雌雄に塩化メチル水銀(MMC) 0, 0.4, 2 および 10 ppm含有飼料を130週間投与し, その慢性毒性について病理学的に検査した。脊髄背根, 脊髄背索および遠位末梢神経における神経線維変性および脊髄神経節における神経細胞の消失による中毒性末梢知覚神経障害が, 10 ppm群の雄16例, 雌12例に認められた。投与群の大脳および小脳には著変は見られなかった。腎近位尿細管上皮の中毒性変化が2 ppm群および 10 ppm群の雌雄に観察された。この病変は, 10 ppm群においてより顕著であり, 64週以降病変はさらに重篤となり, 間質に線維化が加わり, 重篤な腎障害を示した個体においては上皮小体機能亢進症が認められた。10 ppm群の雄では肝内管の増生, 脾のヘモジデリン沈着および髄外造血充進が, 雌では結節性動脈炎が, 有意に高い発生頻度を示した。投与群に有意に高い発生頻度を示した腫瘍性病変は認められなかった。
  • 土井 邦雄, 伊勢川 直久, 八十島 昭, 光岡 知足
    1984 年 46 巻 4 号 p. 559-564
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    高コレステロール食およびビタミンD2を負荷した SHR (剖検時24週齢) の大動脈弓を電顕的に検索した。対照SHRでは内・中膜の肥厚が観察され, 持続性高血圧に対応した変化と考えられた。肥厚した内膜の浅部は主として密な基底膜様物質からなり, 深部はいわゆる活性型平滑筋細胞を囲む豊富な弾性線維からなっていた。また, 中膜の肥厚は, 活性型平滑筋細胞周囲の間質結合織線維の増生によるものであった。一方, 高コレステロール食およびビタミンD2負荷SHRでは, 肥厚内膜はほぼ全域にわたって多量の弾性線維と静止型平滑筋細胞によって占められ, 対照SHRのそれと比べて, より成熟した "fibromuscular thickening" の像を呈した。中膜では石灰沈着を伴う平滑筋細胞の壊死・崩壊が目立ち, こうした病巣の周囲の膠原線維束および弾性線維束は膨潤し, 脂質, 石灰および細胞崩壊産物の沈着を伴っていた。
  • 元井 葭子, 木村 容子, 若松 脩継, 新林 恒一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    蹄葉炎発症牛における血中および尿中のムコ多糖とムコ多糖代謝に関与する2, 3の酵素について観察した。血中の酸性ムコ多糖 (AMPS) は病牛群で対照群より高い値を示した。尿中のムコ多糖排油量は病牛でより多く, N-acetyl-β-D-glucosaminidaseも病牛群において高い活性を示した。以上の変化は蹄部病変部のムコ多糖代謝の異常を反映するものと思われた。
  • 田浦 保穂, 佐々木 伸雄, 西村 亮平, 大橋 文人, 竹内 啓, 臼井 和哉
    1984 年 46 巻 4 号 p. 571-576
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    黒毛和種肥育牛41頭 (体重500~800 kg, 年齢3~6歳) の手根骨および足根骨以遠の関節を肉眼的に観察した結果, 手根中手関節, 足根中足関節, 遠位指 (趾) 節間関節面では90~95%に軟骨病変が認められた。病変は軽度のびらんから軟骨面の大きな潰瘍による軟骨下骨の露出を伴うものまで種々であった。また病変は両側で対称性に出現し, 手根中手関節では内側に, 足根中足関節では中央から外側に多発することが認められた。
  • 平井 克哉, 野中 博子, 福士 秀人, 島倉 省吾, 柵木 利昭, 溝口 徹
    1984 年 46 巻 4 号 p. 577-582
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1981年3月~5月の間に浜松市の某セキセイインコ繁殖場で, 呼化後3~4週齢の幼若鳥に,飛朔翼羽お上び覆羽が欠損し, 致死的ではないが外観を損う, 疾病が発生した。20羽の翼羽, 脾臓および肝臓の乳剤をBEF細胞に接種して, 全例からパポバウイルス様ウイルスを分離した。病鳥の全例で羽根部および尿細管上皮細胞にウイルス抗原が認められ, 分離ウイルスが本病の病因と考えられた。
  • 大島 寛一, 森本 直子, 香川 裕一, 沼宮内 茂, 平野 輝雄, 萱野 裕是
    1984 年 46 巻 4 号 p. 583-586
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ白血病ウイルス感染母ウシから生まれた子ウシ70頭について, 移行抗体の消長を検索した。A群22頭中21頭は初乳摂取以前に BLV抗体は検出できず, 初乳摂取後24時間ですべてに BLV抗体を認めた。初乳摂取前に抗体を検査しなかったB群では, 摂取後BLV抗体は何れも陽性であった。両群とも抗体の多くは 2-6か月の間に消失し, 75頭中5頭 (7.1%) が自家抗体を産生しているに過ぎないことが明らかになった。
  • 望月 雅美, 日田 祥子, 宣 世緯, 佐藤 平二
    1984 年 46 巻 4 号 p. 587-592
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌパルボウイルス (CPV) による下痢症の簡便, 迅速かつ正確な診断法開発のため, 合計70例の糞便に種々の検査法を応用した結果, 免疫電子顕微鏡観察法 (IEM) は優れたウイルス性下痢症診断法であることがわかった。さらに, 糞便材料を用いて実施した血球凝集反応陽性例について特異免疫血清による血球凝集阻止試験で特異性を検討する方法が, CPVによる下痢症の診断にはIEMと同程度に有用であることが確認された。
  • 土本 信幸, 菅野 美樹夫, 阿閉 泰郎, 鈴木 義孝, 杉村 誠
    1984 年 46 巻 4 号 p. 593-596
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    反芻類ウシ科に属するニホンカモシカによく発達した頬骨腺が見出された。ニホンカモシカの頬骨腺は頬骨弓の内側に位置し, 眼窩骨膜の外腹側部に接していた。頬骨腺管は肉眼的に2-3本で, 上顎の最後臼歯歯根部に面する頬粘膜に開口していた。組織学的には, 従来報告されていた食肉目家畜のそれとは異なり, 漿液細胞が大部分を占める混合腺であることが明らかとなった。
  • 佐藤 繁, 石川 勇志, 大島 寛一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 597-600
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    明らかな中枢神経症状を呈するウシの末分化星状膝細胞腫の1例に遭遇した。症例は黒毛和種, 雌, 7歳で, 右側大脳半球頭頂部に限局する鶏卵大, 灰黄白色の新生物が認められた。腫瘍細胞は多形性で, 多数の細胞質突起およびダリア線維を有し, 囲管性あるいはこれに沿って増殖する傾向が見られた。
  • 土井 邦雄, 伊勢川 直久, 八十島 昭, 光岡 知足
    1984 年 46 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    高コレステロール食およびビタミンD2を負荷した高血圧自然発症ラットの腸間膜動脈を電顕的に検索した。観察された汎動脈炎は, 高カルシウム血症による血管壁障害に反応して活性型平滑筋細胞が増殖し, 内・中膜の著しい肥厚をきたした腸間膜動脈の一部に線維素および白血球の浸潤が加わって成立したことが明らかになった。
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