日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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52 巻, 1 号
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  • 石井 宏志, 中曽根 由かり, 重原 進, 本間 邦俊, 荒木 康久, 伊豫部 志津子, 橋本 一
    1990 年 52 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    豚の肺病巣から Haemophilus pleuropneumoniae56株を分離し, それらの株について薬剤感受性試験を実施したところ2株の耐性菌を得た. このうち1株(KH-195)は, TC単剤性であったが, プラスミドの分離はできなかった. 他の1株(KH-265)は, SMおよびSAの2剤耐性で, 約8.3Kbのプラスミド(pMS260)を保有していた. このpMS260の性状を精査するにあたり, 広域宿主非伝達性(Inc.Q)SM-SA耐性プラスミドの1つRlb679を比較のために用いた. pMS260はRlb679とは, 制限酵素により異なる切断点を持ち, 不和合性試験では, Inc.Qを含む14群のプラスミドすべてと和合性であり, Rlb679とは性質が異なることが分った. また, E. coli間において11種類の伝達性プラスミドのうちpMS260を可動化させたものは, Inc.PのRP4, Inc.XのR6KおよびInc.MのR446bの3種類であった. このうち伝達頻度の高かったRP4とR446bを用いて, pMS260の宿主域を調べる目的で, 他の呼吸器系疾患の原因菌にpMS260を可動化させたところ, RP4により, P. aeruginosa, P. multocida, B. bronchiseptica, および H. pleuropneumoniaeに伝達可能なことが分った.
  • 阿部 聡, 西藤 岳彦, 古賀 哲文, 小野 悦郎, 梁川 良, 伊藤 壽啓, 喜田 宏, 清水 悠紀臣
    1990 年 52 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Corynebacterium renaleの線毛の構造を調べるためにNo. 109株の有線毛クローンP+の遺伝子断片をプラスミドベクターを用いて大腸菌に導入し, 線毛遺伝子のクローニングを試みた. 3000個の組換え体を調べたところ, この内5個が抗線毛抗体と反応する分子量48,000の蛋白を産生していた. この蛋白は抗線毛単クローン性抗体8/4, 5/2及びB20/3と反応したが13/4とは反応しなかった. 部分欠失プラスミドを用いた試験の結果より, この蛋白はプロモーターを含む1.4キロ塩基対の遺伝子によってコードされていることが明らかとなった. この蛋白で免疫したマウスの抗血清はC. renale線毛の全表面と結合する抗体を含んでいた. 以上の成績は, C. renale線毛の構成蛋白をコードする遺伝子がクローニングされ, これが大腸菌で発現されたことを示している.
  • 谷口 和之, 首藤 康文, 見上 晋一
    1990 年 52 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ゴールデン・ハムスターの甲状腺と上皮小体における各種内分泌細胞の発生を甲状腺, 上皮小体の形態形成との関連において免疫組織化学的に検索した. 甲状腺は胎齢9日に第一, 第二鰓嚢間の前腸腹壁の陥没によって生じ, 濾胞上皮細胞は胎齢10.5日に抗サイログロブリン血清に対する弱い免疫反応を示した. この反応は次第に増強したが胎生期には主に細胞質内に限局し, 初生仔で初めて濾胞腔内に強い免疫陽性反応が出現した. 鰓後体は第五鰓嚢から生じ, 胎齢12日に甲状腺と癒合した. カルシトニン免疫陽性細胞は胎齢14日に鰓後体由来の甲状腺組織内に出現し, その後増加した. ソマトスタチン免疫陽性細胞は胎齢13日にやはり鰓後体由来の甲状腺組織内に出現し, 初生仔で増加したが, その後減少した. 上皮小体は第三鰓嚢から生じ, 胎齢13日には甲状腺の背外側で甲状腺と同一の被膜に包まれた. パラソルモン免疫陽性細胞は胎齢15日に上皮小体内に出現し, 出生後増加した.
  • 佐藤 繁, 扇元 敬司, 中井 裕
    1990 年 52 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ルーメン・セルロース分解菌の B. succinogenesから作製した菌体外膜抗原を用いて, ELISAによりウシ血清中の抗外膜抗体を検索した. 菌体外膜抗原はB. succinogenesの抗菌体ウサギ血清と特異的に反応し, B. ruminicola や Selenomonas ruminartiumの抗菌体ウサギ血清との間に交又反応は認められなかった. 初乳摂取前の子牛血清において, 抗外膜抗体は全く検出されず, 初乳摂取後には高値を示した. 10日齢の子牛血清(n==24)の平均抗体価は, 40日齢時に比べ有意(plt;0.01)な高値を示した. また成牛血清中の抗外膜抗体は, 子牛のそれに比べ有意(p<0.01)な高値を示した. 乳牛血清(n=25)の平均抗体価は, 肥育牛(n=25)に比べ高値を示す傾向が認められた. 抗B. succinogenes外膜抗体は, 初乳を介して子牛に移行すること, およびその保有状況は, 牛の飼養条件が影響していると考察された.
  • 前出 吉光, 山中 義弘, 佐々木 輝, 鈴木 正嗣, 大泰司 紀之
    1990 年 52 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    野生のエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)78頭, および牧場で飼育されているエゾシカ21頭について血液学的検索を行った. このうち興奮状態下で82頭, および休息状態下で17頭をケタミン(10mg/kg) -キシラジン(1mg/kg)混合液により鎮静させ, 採血を行った. 興奮状態下で鎮静させたシカは, 休息状態下でのそれらと比べて, 赤血球数, ヘモグロビン量, ヘマトクリット値, および平均赤血球容積が有意に高値を示し, 一方, 平均赤血球血色素濃度は有意に低値を示した. 白血球数は両状態間での有意差は認められなかったが, 興奮状態下で鎮静させた野性のメスでは好中球増多により著明に上昇していた. 興奮状態下で鎮静させたオスは同条件下のメスよりも, 赤血球およびヘマトクリット値は有意に高値を示したが, 平均赤血球血色素量は有意に低値を示した. 野性のメスでは同オスよりも有意に白血球数が多かったが, 牧場で飼育されているシカには, 同様の差異を認めなかった. 10か月齢の子ジカの血液学的数値には性差が認められなかった.
  • 神尾 次彦, 伊戸 泰博, 藤崎 幸蔵, 南 哲郎
    1990 年 52 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    栃木県下の1牧野において Haemaphysalis longicornisの発生消長を周年調査し, 未吸血若ダニ唾液腺内の Theileria sergentiの感染状況を調べた. マダニの採集はフランネルを用いたハタズリ法及び土壌サンプル採集法を併用して行い, T. sergentiの感染状況は, 若ダニを家兎に吸血させて半飽血状態とした後, 唾液腺を摘出し, メチルグリーン・ピロニン染色することによって行った. その結果, 本牧野に生息する若ダニは, 冬期を含んだ1年を通じてT. sergentiを保有していることが明らかとなった. 放牧期間の5月から10月にかけて採集された若ダニでは, 家兎吸血24時間目に唾液腺内の原虫が検出されたのに対し, 他の時期に採集された若ダニでは検出されなかった. この結果から, 放牧期間中の環境要因が若ダニ唾液腺内の原虫成熟に何らかの影響を及ほしていることが示唆された.
  • 本多 英一, 木俣 新, 服部 達, 熊谷 哲夫, 津田 知幸, 徳井 忠史
    1990 年 52 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    我が国で分離され日本における血清型が決められている豚エンテロウイルス4株(J6, J8, J9, J10)と国際基準株(W1-W11)との交差中和試験を行なった結果, これら4株はそれぞれ国際基準株11血清型とは異なる血清型であることがわかった. このことは国際基準血清型11型に新たに4型を追加する必要があることを示している. またJ9はCPEI型を, J6とJ 8はCPEII型を, J10はCPEIII型を示した.
  • 花見 正幸, 臼居 敏仁, 奈良間 功, 高橋 令治
    1990 年 52 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    種々な毒性試験に使用されたビーグル犬925例中17例に組織学的な偶発性限局性汎動脈炎が認められた. 動脈炎は心筋外および心筋内冠状動脈, ならびに骨髄, 脊髄髄膜, 延髄髄膜および精巣上体白膜内動脈の小型および中型動脈に弧在性に分布していた. 病変は動脈全層に亘る種々な過程の炎症性変化から構成されており, 急性期の症例では内膜の類線維素性壊死, 慢性期の症例では内膜の線維性肥厚を特徴とし, いずれの症例にも動脈全層に亘って種々な割合で構成される炎症細胞の浸潤を伴っていた. 炎症細胞は形質細胞, リンパ球, 大喰細胞および好中球から構成されており罹患動脈周囲に分布する炎症細胞内にはIgGあるいはIgMが認められた. 自然発生および薬物誘発性動脈病変は形態学的に類似しており, 種々な薬物の血管毒性の評価に混乱を招来する可能性がある. ビーグル犬に自然発生した動脈病変の形態ならびに, その分布の特徴は薬物の安全性評価, 特に血管毒性評価をする上で極めて重要と思われる.
  • 佐藤 繁, 扇元 敬司, 中井 裕
    1990 年 52 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ウシの前胃においてルーメン細菌に対する免疫応答が存在するか否かを検討する目的で, 健康な黒毛和種の子牛, 成牛およびその胎児の胃と腸粘膜および付属リンパ節における免疫グロブリン(Ig)保有細胞を免疫組織化学的に検索し, その分布を比較した. その結果, 1~90日齢の子牛10例中4例(32, 37および90日齢)および5~7歳の成牛5例全ての前胃粘膜固有層において, IgG保有細胞が検出されたが, IgAおよびIgM保有細胞は全く認められなかった. 前胃付属リンパ節においては, いずれのIg保有細胞も検出されなった. 一方, 子牛5例および成牛全例の第四胃, 小腸および盲腸粘膜固有層, また, 子牛6例および成牛全例の腸間膜リンパ節において, IgG, IgAあるいはIgM保有細胞が検出されたが, いずれもIgG保有細胞が多数認められた. 6~8力月齢の胎児5例では, いずれの組織においてもIg保有細胞が全く検出されなかった. これらのことから, 子牛および成牛の前胃において粘膜免疫機構が存在すると考えられたが, その機構は腸管に比べ極めて貧弱であることが示唆された.
  • 小田 憲司, 西田 由美
    1990 年 52 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    我が国における牛コクシジウム感染の実態を明らかにするため, 1985年9~11月に9道県下110農場の飼育牛から採取した合計1,019例の糞便材料のうち599例(59.0%)からコクシジウムが検出された. 乳用牛および肉用牛間, 品種間で検出率に差はみられなかった. 検出率は宿主の月齢に強く依存し, 0~11か月齢では常に80%以上の高い値を示した. 逆に, 12か月齢以上では検出率は除々に低下し, 24か月齢以上の個体での検出率は平均25%以下であった. 陽性例のほとんどがOPG1,000以下であった. 今回検出された種はEimeria属11種, Isospora属1種で, それぞれの検出率は以下のようであった. E. bovis(34.8%), E. ellipsoidalis(34.3%), E. aubrunensis(25.6%), E. brasiliensis(18.8%), E. cylindrica(18.5%), E. canadensis(15.8%), E. alabamensis(12.0%), E. zuernii(9.9%), E. wyomingensis(5.4%), E. bukidononsis(4.5%), E. subspherica(4.5%) Isospora sp.(0.7%). 今回の調査成績から, コクシジウムは我が国においても若齢牛を中心に高率かつ広域に分布していることが明らかとなった.
  • 中村 志, 若尾 義人, 武藤 眞, 高橋 貢
    1990 年 52 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    新しく開発された微小電極, PO2センサー(M-HOS, PO-2080: 三菱レイヨン社)による動脈血中の酸素分圧測定値について, 従来からの血液ガスアナライザーによる動脈血液中の酸素分圧測定値と比較検討した. その結果, 回帰直線はY=1.4×-4.9 (r=0.993)であり, 両者間では極めて相関性が高く, PO2センサーによる酸素分圧の測定値は, 血液ガスアナライザーの測定値に匹敵することが確認された. PO2センサーを使用して心筋組織内の酸素分圧を測定した. 測定部位は左冠状動脈前下行枝の支配領域で3力所を選び, PO2センサーの先端を左心室心内膜下, 左心室心外膜下ならびに心室壁中間点に位置するように刺入して当該部位における心筋組織内の酸素分圧を測定した. その結果, 左室腔内動脈血中の酸素分圧を100% (平均411.5±68.3mmHg)とした場合, 心内膜下の心筋組織では約70%, 心室壁中間点の心筋組織では15%, 心外膜下の心筋組織では約9%であり, 心内膜側から心外膜側に向って酸素分圧の勾配がみられることが確認された. 冠状動脈前下行枝の血行を遮断または解除して心筋組織に供給される酸素供給経路を確認した結果, 心室壁中間点ならびに心外膜下の心筋組織では, 前下行枝の血行遮断によって顕著な低酸素状態を呈し, 血行遮断を解除することによって速やかに回復を示すことから, この部位における酸素供給は, 明らかに冠状動脈の血液から供給されることが確認されると同時に, 冠状動脈の血行動態に大きく影響されることがわかった. 一方, 心内膜下の, 心筋組織では, 冠状動脈の血行にほとんど影響されなかった. したがって, この部位における酸素供給は冠状動脈よりもむしろ心腔内動脈血中から心内膜を介して供給されるものと考えられた.
  • 本多 英一, 服部 達, 大原 美裕, 谷口 隆秀, 有山 賢一, 木俣 新, 長峯 範行, 熊谷 哲夫
    1990 年 52 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    我が国の健康豚および下痢豚の糞から分離した豚エンテロウイルス(PEV)の血清型を20単位ホモ血清を用いた中和試験で調べた. 健康豚由来のPEVはJ1, J2, J3, J5, J10にそれぞれ属することがわかった. そのうちJ1, J2, J3, に属するPEVはJ系が対応する国際基準株(W系)のW1, W2, W5, W6にも交差した. 下痢豚由来のPEVはJ4, J6, J8, J9にそれぞれ属した. 健康豚から分離した29株のうち22株(75.9%)がCPEI型を示し, CPEII型を示したものはわずか1株(3.4%)であった. CPEIII型を示すものは6株(20.7%)であり健康豚由来の多くのPEVはCPEI型を示した. 一方下痢を呈する豚から分離した39株のうち27株(69.2%)はCPEII型を示した. このことはCPEII型を呈するPEVと下痢との関連を示唆している.
  • 田原 秀樹, 池田 賢, 角田 映二, 村上 佳文, 山田 裕, 佐々木 伸雄, 竹内 啓
    1990 年 52 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    成牛に対する経口輸液療法の可能性を探索するため, 正常牛の分離第一胃・二胃からの水分, 電解質およびVFAの吸収に及ほす第一胃内浸透圧の影響について検討した. 分離第一・二胃内に種々の濃度の電解質やVFAを含み浸透圧が100~500mosmol/lの4種の試験液を30ないし40l注入し, 3時間後に回収して各成分の吸収率を求めた. その結果, 水分は低張である程よく吸収され, 100mosmol/lの場合では3時間あたり46.7%, 200mosmol/lで27.0%, 300mosmol/lで8.2%がそれぞれ吸収されたが, 血液より高張の500mosmol/lの試験液では, 22.9%が第一胃内に逆吸収された. Na, K. C1に関しては, 試験液の浸透圧や各電解質濃度が上昇するに伴って, それらの吸収率も増大する傾向にあった. また, VFAは従来の報告のように相当量(23.9~74.5%/3時間)が吸収されたが, その吸収率は試験液が高張なほど有意に低下した. 以上の結果から, 正常牛の第一胃・二胃は水分や電解質ならびにVFAに対してかなりの吸収能を有するが, それらは第一胃内浸透圧により多大の影響を受けることが判明した. そして, この第一胃壁の吸収特性に関して十分な考慮を払うならば, その能力は成牛の経口輸液経路としての役割を十分に果たし得ることが強く示唆された.
  • 近藤 高志, 服部 雅一, 児玉 洋, 小沼 操, 見上 彪
    1990 年 52 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ニワトリリンパ球表面抗原と特異的に反応する単クローン性抗体を作製し, ニワトリリンパ球および腫瘍細胞株に対する反応性をフローサイトメトリーを用いて解析した. 3種の抗体(7-3G-2, 7-2E-8, およびJB-2)は胸腺細胞とのみ反応し, マレック病由来Tリンパ芽球様細胞株とは反応しなかった. 他の4種の抗体(6-27A-1, 4-5C-5, Lc-4およびLc-6)は胸腺細胞のみでなく, 脾臓および末梢リンパ球とも反応した. 7種の抗体はすべて孵卵12日目以降のニワトリ胚胸腺細胞と反応した. いずれの抗体もファブリキウス嚢細胞とは反応しなかった.
  • 横田 博, 湯浅 晃
    1990 年 52 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物精油成分オイゲノール(4-allyl-2-methoxyphenol)をラットに経口投与すると, 肝ミクロゾーム薬物抱合酵素UDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(GT)活性が増加する. オイゲノールによるこのGT活性誘導機序について検討した. (1)オイゲノールを投与したラット肝ミクロゾームでは, GTのVmaxはおよそ2.6倍に増加したが, 基質(UDP-グルクロン酸)に対するKmは変らなかった. (2)イムノブロッテイング法により測定した結果, オイゲノール投与ラット肝ミクロゾームではGT酵素蛋白量が増加していることがわかった. (3)肝からRNAを調製し, In Vitro Translationを行った結果, オイゲノール投与ラット肝ではGTをコードするメッセンジャーRNAが量的に増加していることがわかった. 以上の結果より, オイゲノール投与による肝ミクロゾームGT活性の増強はGTをコードするメッセンジャーRNAの増加によるGT分子の生合成量の増加(誘導形成)に基づくと結論した.
  • 土屋 亮, 佐藤 守俊
    1990 年 52 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    牛尿石症による尿閉後の病態を把握するため, 実験的に尿道を閉塞させた4頭の雄山羊について, 臨床的, 臨床病理学的および病理学的観察を行った. 血中尿素窒素と血清クレアチニンは尿閉直後から一定の比率で増加し(前者は平均29.1mg/dl/day, 後者は1.6mg/dl/day), これは尿毒症の進行を示す良い指針であった. 血清中のナトリウムとクロールは尿毒症の進行とともに漸減し, ブドウ糖とカリウムは実験の後半になって著明に上昇した. また, 膀胱破裂によって脱水が起こった. 8日から13日までの間に死期を迎え, 瀕死期には, 呼吸や心拍動の異常および激しい神経症状がみられた. 剖検の結果, 泌尿器系の内圧昂進による病変と, 皮下, 筋肉など全身組織の出血, 水腫がみられた. さらに, 3頭の雄山羊を用い, 尿道切開手術の効果についても検討した. これらの山羊については実験的尿閉から3ないし4日後に尿閉を解除した. その結果, それらの尿毒症性変化は排尿を再開してから4日以内に消失し, 山羊は正常に復した.
  • 酒井 健夫, 高橋 薫, 久末 修司, 堀本 政夫, 滝沢 隆安
    1990 年 52 巻 1 号 p. 121-127
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1982~1987年に, 埼玉県東部地域の延べ4,371頭の乳牛について, 日本脳炎ウイルスに対するHI抗体陽性率とベクターの活動性に影響を与える気象要因との相関と回帰を調べた. 各年次の7月~10月の抗体陽性率(Yi)は58.8~88.0%で, 各年次によって差がみられた. 6月~9月の旬平均気温総和(Ti, j-1), 旬平均降雨量総和(Ri, j-1)および気温25℃以上の日数値(ti, j-1)から求めた気象比較値(Xi)とYiを単回帰分析すると, 相関係数は0.8147(p<0.05), HI抗体陽性率推定式はY^^^=-0.04X+79.9(p<0.05)であった. 一方, 3種類の気象ベキ乗値を説明変数に, Yiを目的変数とする重回帰分析すると, 重相関係数は0.987(p<0.05), 重回帰式はY^^^i=-3991T1/13-0.0035R-12+1978t1/9+4187(p<0.05)であった. これらの推定式から求めた推定陽性率は, 実測陽性率にほほ一致し, 陽性率に正に相関する気温および負に相関する降雨量が反映した予測式を作ることが可能であった.
  • 大島 寛一, 佐竹 茂, 小野 雅章, 味戸 忠春, 岡田 幸助, 沼宮内 茂
    1990 年 52 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    生後21日齢から17歳までの馬の剖検例20頭について骨関節症病変の病理学的研究を行った. 検索例は, 3例を除き骨関節症の臨床症状を示さず, 骨折その他により剖検された. 骨関節症の組織病変は全例で認められ, その進行の程度および発生部位数は加齢に伴って増加する傾向が認められた. 肉眼病変では, 肘関節, 中手指節関節および足根関節など蝶番状関節に集中していた. 裸窩部病変と潰瘍病変は, 互いに対応する関節面で, いわゆるミラーイメージを形成していた. 線状糜爛は, 2次病変としてしばしば観察された. 組織学的には, 1)軟骨の水腫性疎性化, 2)裂隙形成, 壊死, 表層の剥離, 糜爛, 3)軟骨潰瘍, 4)若齢馬では軟骨の再生像もみられ, 軟骨下骨表面の線維および脂肪組織の増生はより年齢の高い馬にみられた. トルイジン・ブルー染色により, 病変部の軟骨基質の酸性粘液多糖類の減少が示唆された. 本症は軟骨下骨組織の低形成を伴う関節軟骨の疾患と考えられた.
  • 立山 晉, 竹下 明美, 野坂 大, 山口 良二, 三好 宣彰, 近藤 房生
    1990 年 52 巻 1 号 p. 137-143
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    乳腺上皮細胞の増殖状態とその細胞形態を研究するための一助として, 正常ネコ乳腺組織およびその乳汁由来細胞の培養を試みた. 乳腺組織からの上皮細胞の分離は平塚らの方法に準じて行い良好な結果を得た. 増殖した細胞のうち多型細胞と大型紡錘型細胞は免疫組織化学的にケラチンおよびアクチンに陽性を示し, 上皮細胞の特徴である敷石状の配列を示しながら増殖した. 退行期の組織からはおもに小型紡錘型細胞が増殖し, これは抗ケラチン抗体に陰性であり, 線維芽細胞と考えられた. ネコの乳腺腫瘍に特徴的に出現するケラチン抗体陰性, アクチン抗体陽性を示すと考えられる筋線維芽細胞は今回の正常乳腺の検索では観察できなかった. 乳汁由来の細胞は培養皿に接着して小さいコロニーを形成したが, 数日で剥離した. これは培養時の細胞数が少なかったためと考えられる.
  • 小嶋 明廣, 藤波 不二雄, 武下 政一, 湊 良雄, 山村 高章, 今泉 和則, 岡庭 梓
    1990 年 52 巻 1 号 p. 145-154
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    帝王切開, 人工哺育で作出されたSPFビーグルの繁殖コロニーで, 4腹の新生仔19匹中9匹が生後10~17日で死亡あるいは瀕死期殺された. 剖検所見では腎臓の包膜下に小出血斑が密在し, 割面で楔型の出血斑が認められた. また, 肺のうっ血水腫, 肝臓のうっ血および脾腫がみられた. 肺, 肝臓および腎臓から分離された細胞病原性因子はイヌヘルペスウイルスと同定された. 飼育室内のビーグルは, 感染を境にして分離ウイルスに対する中和抗体が陽転した. 病理組織所見は全身諸臓器の多発性巣状壊死および出血として特徴づけられた本症の所見に一致した. これらの所見に加えて腎臓の楔型の壊死巣内を走行する動脈壁に類線維素壊死がみられ, この血管壁の変性と特徴的な楔型の壊死巣形成との関連性が注目された. コロニー内ではその後同様な疾病の発生はなく, 本症の発生は一過性であった.
  • 佐藤 基佳, 五十嵐 郁男, 斎藤 篤志, 広瀬 恒夫, 鈴木 直義
    1990 年 52 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    Babesia bibsoni感染に対する B. gibsoni溶解抗原(BLA)と Toxoplasma gondii溶解抗原(TLA)の感染死防御効果について4頭の同腹ビーグル犬を用いて検討した. 無処置, 健康ビーグル(No. 4)はB. gibsoni感染後23日目に重篤症状を示したので殺処分した. その他の3頭は感染3週前よりそれぞれBLA, TLAおよびTLA+レバミゾールを2週間隔で2回投与した. これらのビーグル犬はB. gibsoni感染に対して感染死防御効果を示し, 生残した. とくに, TLAとレバミゾールの併用投与では低い原虫寄生率と高い抗体価の値を示し, 種々のタイプの免疫功奏細胞の増強効果が示唆された.
  • 石原 勝也, 佐々木 栄英, 北川 均, 北尾 哲, 竹橋 史雄
    1990 年 52 巻 1 号 p. 159-161
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫摘出に使う超小型犬用のフレキシブル・アリゲーター鉗子を開発した. この鉗子の挿入軸は, 外径が2.5ミリで有効軸長は320ミリである. 把握爪の長さは9ミリ, 爪の先端から屈曲中心までの距離はわずか22ミリで, 最少屈曲半径も6ミリである. 鉗子は体重1.5kg~5.7kgの超小型犬の外頸静脈から右心を経て左右肺動脈に容易に挿入され, 犬糸状虫症13例に適用し, 肺動脈あるいは右房などから1例あたり3~42匹の成虫が摘出された.
  • 佐藤 繁, 扇元 敬司, 中井 裕
    1990 年 52 巻 1 号 p. 163-164
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ルーメン・セルロース分解菌のB. succinogenesから作製した菌体外膜は, 抗外膜ウサギ血清を用いた免疫拡散法および蛍光抗体法によって, 種特異的抗原性を示すこと, また免疫電顕法によって, 抗原は菌体外膜に存在することが証明された.
  • 竹村 直行, 小山 秀一, 左向 敏紀, 安藤 研司, 鈴木 勝士, 本好 茂一, 丸茂 文昭
    1990 年 52 巻 1 号 p. 165-166
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    合成α-hANPをウシ及びイヌにそれぞれ0.046μg/kg静脈内投与し, Pharmacokineticsを1区画モデルで解析した. α-hANPの半減期はそれぞれ98.9±7.76及び101.0±4.15秒であった. 今後, 合成ANPの臨床応用のためにANPの投与経路および投与量と, 発現する生理作用との関連性について検討する必要があると考えられた.
  • 浜岡 隆文, 森 康行, 寺門 誠致
    1990 年 52 巻 1 号 p. 167-170
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    気腫疽ワクチン免疫マウスの血中抗体の検出法として酵素抗体法(ELISA)を検討した. 抗原は気腫疽菌培養上清の30%飽和硫安塩析画分が優れていた. 感染防御試験におけるマウスの感染防御能の獲得とELISA抗体価の上昇とは良く相関していた.
  • 村上 洋介, 西岡 信義, 江口 正志, 国安 主税
    1990 年 52 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1集団保育場で10頭の子牛から生後19週まで定期的に血清を採取し, 牛ロタウイルス1型及び2型に対する中和抗体の推移を調べた. その結果, 両血清型ウイルスの浸潤度は高くそれぞれ独立した感染を起こすこと, 同一個体においても異型, 同型ウイルスによる連続あるいは再感染が起こることなどが示唆された.
  • 池田 敏男, 吉川 泰弘, 山内 一也
    1990 年 52 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    in situハイブリダイゼーションによりAEV感染細胞及び株化細胞でerbB遺伝子のmRNAの検出を試みた. 細胞の前処理とハイブリダイゼーション溶液中のデキストランサルフェイトが感度の上昇に有効であった. 銀粒子は細胞質に検出され, DNaseI処理しても検出された. RNaseA処理およびコンペティションアッセイでは検出されないことにより銀粒子はmRNAとプローブのハイブリッドに特異的であると考えられた.
  • 河上 栄一, 筒井 敏彦, 小笠 晃
    1990 年 52 巻 1 号 p. 179-181
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    片側性潜在精巣犬11頭および正常犬3頭について, 末梢血中LH, testosterone (T), および estradiol-17β(E2)値をRIA法で測定した. その結果, 潜在精巣犬における血中LHおよびTは, 正常犬に比較して有意に低値であったが(p<0.01), 陰嚢内固定手術後24週では, 血中LHおよびT値の有意な増加が認められた(p<0.01). しかし, 血中E2値には, 大きな変化はみられなかった.
  • 村田 英雄, 広瀬 昶
    1990 年 52 巻 1 号 p. 183-185
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    4時間のトラック輸送がホルスタイン種去勢子牛の末梢血リンパ球幼若化能に及ほす影響を全血培養法によって観察した. 幼若化能は輸送中から輸送終了直後に著しく低下した. また, この幼若化能の低下に一致して, 血漿コルチゾール濃度の上昇がみられた.
  • 内田 明彦, 内田 紀久枝, 亀井 昭夫, 村田 義彦, 奥 祐三郎
    1990 年 52 巻 1 号 p. 187-189
    発行日: 1990/02/15
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1985年, 長野県蓼科高原で採取したアカネズミ Apodemun speciosusおよびハタネズミ Microtus montebelliの皮下・腹腔・肺および肝臓に嚢虫を見いだし, その嚢虫は形態的特徴から Taenia crassicepsの幼虫 Cysticercus longicollisと同定された. 本種は日本で最初の報告となる.
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