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渡部 敏
1990 年 52 巻 6 号 p.
1147-1153
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
ラットの視床下部内側視索前野 (POA) ニューロンの細胞内記録を行なう目的で三角波による微小電極振動装置を試作した。この装置は, 一定の三角波の周波数と電圧をガラス管電極に通電して電極の先端を微細に振動させることによってin vivoでラットのPOAニューロン内に電極を刺入するものである. この装置を用いて視床下部弓状核 (ME) の電気刺激に対してantidromic (AD), orthodromic (OD) またはnon-response (NR) を示すPOAニューロンの細胞内記録を試みた. その結果, 細胞内記録の成功率は144中36細胞で25%と低かった. 更に細胞内記録の可能な時間が短く, 長くて15分, 一般的には数分であった. また今回の実験では予めAD, OD反応またはNRを細胞外記録法によって観察, 同定してから微小電極を細胞内に刺入した. その理由は細胞内記録時にMEを電気刺激した場合, 細胞が死滅してしまう例が多かったからである. これ等の点については本装置を更に改良する必要があるが, 静止電位, 閾値電位, spikeおよびover-shoot等の興奮時膜電位, 陰性および陽性後電位, 後脱分極および脱分極などの活動電位の各要素が観察されたことからラットのPOAニューロンの細胞内記録の可能性が示唆された.
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遠藤 康浩, 田島 誉士, 黒沢 隆, 高橋 清志, 其田 三夫
1990 年 52 巻 6 号 p.
1155-1161
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
Wolff-Parkinson-White (WPW) 症候群の特徴を示す10歳齢のホルスタイン雌牛に, 心電図, 心音図, 血圧, 心エコー図検査および薬物投与試験を行い詳しく検討した. 心電図では, P波は正常波形時および異常波形時とも同様であった. PR間隔は正常波形時0.2秒であったのに対し異常波形時には0.1秒に短縮した. 一方QRS群持続時間は正常波形時0.1秒であったのが異常波形時には0.12秒に延長した. 心電図上デルタ波は認められなかったが, 心エコー図検査ではB型WPW症候群の特徴と言われているノッチが認められた. また, 異常波形は塩酸プロカインアミド投与により消失した. 以上のことから, この牛の心電図異常波形時における心室の収縮は副伝導路経由の刺激によってのみ惹起されることが強く示唆された.
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田浦 保穂, Stein Elizabeth, Mullen Yoko
1990 年 52 巻 6 号 p.
1163-1170
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
紫外線 (UV) 照射したミニブタの末梢血リンパ球 (PBL) は, 同種異系間の混合リンパ球培養試験 (MLR) におけるin vitroでの幼若化反応を抑制した. このUVを主要組織適合抗原不適合のドナーPBLに照射し, これを週1回計4回末梢静脈内投与した結果, レシピエントのPBLは投与期間中に実施したドナーPBLに対するMLRを進行性に強く抑制した. また, 抗ドナーPBL抗体の産生は全く認められなかった. さらに, UV照射したPBLを投与されたブタでは, 試験期間の最後に実施したドナーPBLに対する遅延型過敏 (DTH) 反応は極小であった. これに対して, UV非照射した異系ドナーPBLを投与されたブタでは, ドナーPBLに対する高いDTH反応と, ドナーPBLとのMLRにおける, 高い幼若化反応, さらにその全例における, 抗ドナーPBL抗体の産生がみられた.
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Pal Mahendra, 恩田 千景, 長谷川 篤彦
1990 年 52 巻 6 号 p.
1171-1174
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
各種検体346例 (果実133, 鳥の排泄物107, 野菜91, 木の削りかす 15) 中バナナ2例, ジャガイモ1例からCryptococcus neoformans var. neoformansを分離した. クロラムフェニコール添加サブロー・デキストロース培地では急速に発育する雑菌の汚染が著しく分離不可能であったが, ヒマワリ培地では褐色を呈するコロニーを採取することにより分離することができた. バナナからの分離報告は初めてであり, 本病原体についてはC. neoformans var. gattiiもふくめて野外分布を知る上で, より広範囲な疫学的調査が必要と考える.
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Hasbullah , 秋葉 定, 高野 洋志, 扇元 敬司
1990 年 52 巻 6 号 p.
1175-1179
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
1986年4月から1987年1月にかけて本学付属川渡農場において牛の糞便検査を実施した結果, コクシジウム陽性率は19.3%であった. コクシジウム13種が同定され, Eimeria bovis (25.7%) が優勢種であった. 舎飼から放牧に移る5月に, コクシジウム陽性率, OPG値ともにピークが見られた.
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玄 学南, 堀本 泰介, 小野 満, Limcumpao Joselito A., 遠矢 幸伸, 畔高 政行, 高橋 英司, 見上 彪
1990 年 52 巻 6 号 p.
1181-1188
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
日本で分離されたイヌヘルペスウイルス (CHV) 18株と参照株2株について, 感染細胞から全DNAを抽出し, 制限酵素による切断パターンを調べた. 10種の制限酵素を用いてその有用性を検討した結果, HindIII, XbaIおよびPvuIIがCHV分離株間の識別に有用であることが示された. この3種の制限酵素によって, 流行学的に関連のない個体から分離された分離株の間にはそれぞれ切断点の欠如あるいは獲得が頻繁に見られた. 一方, 同腹イヌから分離された株あるいは同じ個体から分離された株の間には特定な断片に微細なサイズの差のみが見られた. この結果は, 制限酵素切断法がCHVの分子疫学的検査に有用であることを示唆する.
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片本 宏, 栗原 伸二, 島田 保昭
1990 年 52 巻 6 号 p.
1189-1197
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
食餌性脂肪壊死症に対するイソプロチオランおよびファイトステロールの効果を調べるため, 3群のラットを硬化牛脂を含む (HT) 飼料で飼育し, その内2群のラットにイソプロチオラン (50mg/kg) またはファイトステロール (20mg/kg) を毎日経口的に10週間連続して投与した. また標準 (CE-2) 飼料で飼育したラットを対照とした. HT飼料で飼育した3群すべてのラットの精巣上体および腎周囲脂肪組織において, 脂肪壊死の病変が観察された. 脂肪壊死を発症したラットの特徴として内臓脂肪増加型肥満および脂肪組織のトリグリセライドの脂肪酸組成の飽和化が認められた. グルコースの脂質への取り込みは, ファイトステロールを投与したラットの脂肪細胞で最も高かった. HT飼料のみを与えたラットの脂肪細胞において, エピネフリン刺激 (1-100μM) に対する脂肪分解の反応性は見られなかったが, 両薬剤を投与したラットの脂肪細胞では標準飼料で飼育したラットの脂肪細胞と同様な反応性が見られた. 両薬剤を投与したラットの脂肪組織リン脂質の総飽和脂肪酸比率はHT飼料のみを与えたラットのものに比較して低かった. これらの結果から両薬剤は脂肪細胞の膜リン脂質の脂肪酸組成に変化を与え, 脂肪細胞における脂肪分解を促進することが示唆された.
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梶原 典子, 桐沢 力雄, 小沼 操, 川上 善三
1990 年 52 巻 6 号 p.
1199-1204
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
小型ピロプラズマ病の新しい検出法としてTheileria sergentiメロゾイトの組み換えDNAプローブを作出し, ハイブリダイゼーションによる赤内型メロゾイトの検出を試みた. T. sergentiの遺伝子ライブラリーはpUC-18ベクターを用いて作出し, コロニーハイブリダイゼーションとサザンハイブリダイゼーションでスクリーニングしT. sergentiに特異的なクローン8個を得た. そのうち2個のクローンのインサートを精製し
32P-dCTPあるいはビオチン-11-dUTPで標識しプローブとして用いた. ドット・ブロットハイブリダイゼーションで, 精製したT. sergentiのDNAを用いた場合,
32P標識プローブは15pg (約1,200個のメロゾイトに相当), ビオチン標識プローブでは125pg (約10,000個のメロゾイトに相当) を検出できた. T. sergenti感染赤血球を用いた場合のメロゾイトの検出限界は,
32P標識プローブで8,000個, ビオチン標識プローブで16,000個であった.
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保富 康宏, 小沼 操, Davis William C., 川上 善三
1990 年 52 巻 6 号 p.
1205-1210
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
牛白血病腫瘤内にNocardia rubra cell wall skeletonを接種したところマクロファージ, PanTおよびBoCD4
+細胞の増加が認められた. BoCD8
+細胞は接種後4日目まで徐々に増加したが, 8日目では減少した. 接種後8日目の浸潤細胞は牛白血病細胞株に対し細胞障害活性を持っていたが, 培養に伴いその活性は減少し培養14日目で消失した. この細胞障害活性を持たない細胞を他の腫瘤内に1週間隔で2回接種 (養子免疫) したところ初回接種後5週でその腫瘤は消失した.
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北川 均, 佐々木 栄英, 石原 勝也, 平野 勇二
1990 年 52 巻 6 号 p.
1211-1217
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
肺動脈に寄生する犬糸状虫が肺高血圧に直接関与するかどうかを検討する目的で, 肺動脈から犬糸状虫を摘出する前後と肺動脈へ犬糸状虫を挿入する前後に肺動脈圧等を測定した. 8から46匹の犬糸状虫が摘出された10例の犬糸状虫寄生犬では, 平均肺動脈圧は, 犬糸状虫摘出前の24.5±7.9mmHgから摘出直後には16.3±4.9mmHgに下降した. 右心拍出量は7例で減少し, 総肺血管抵抗及び右心仕事量も有意に減少した. 犬糸状虫摘出24時間後, 生きた状態で保存した犬糸状虫をもとの実験犬の肺動脈に挿入した. 犬糸状虫挿入直後, 平均肺動脈圧は有意に上昇した. 右心拍量は7例でさらに減少したが, 総肺血管抵抗及び右室仕事量は増加した. 一方, 12から42匹の犬糸状虫を肺動脈に挿入した5例の非寄生犬では, 挿入直後に肺動脈圧は有意の変化を示さなかったが, 1回拍出量は減少し, 総肺血管抵抗は増加した. これらの結果は, 犬糸状虫の存在と肺の病変が複雑に関与するが, 肺動脈に寄生する犬糸状虫が肺高血圧に直接関与することを示唆する.
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松永 敏幸, 吉田 辰巳, 鎌田 信一, 内田 和夫
1990 年 52 巻 6 号 p.
1219-1227
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
1988年11月~1989年5月に本邦の66牧場で発生したウシ乳房炎より分離したブドウ球菌を同定した結果S. xylosusが最優勢菌種であった. その他の主要菌種はS. aureus, S. sciuri及びS. hyicusであった. β-lactamaseの陽性率はS. xylosusで71.7%, S. aureus45.7%, S. epidermidis71.4%であった. β-lactamase陽性のS. aureusのほとんどが高度産生株であったのに対して, S. xylosusはすべて低産生株であった. S. aureus全株のmethicillin, cloxacillinに対する最小発育阻止濃度は, それぞれ6.25μg/ml, 1.56μg/ml以下に分布しており, methicillin-resistant S. aureusは検出されなかった. その他の菌種も6薬剤に対して医学領域でみられるような耐性を示さなかった. しかし, penicillin G, ampicillinの抗菌力はmethicillin, cloxacillin, cefazolin及びcefoperazoneに比べてβ-lactamaseの影響を強く受けた.
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久保田 道雄, 出水田 昭弘, 詫間 博, 児玉 和夫, 佐々木 文存
1990 年 52 巻 6 号 p.
1229-1235
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
豚パルボウイルス (PPV) の弱毒HT
-/SK株及び強毒90HS株を2日齢の初乳未摂取初生豚に経口又は皮下投与した. 投与2, 4, 6日目に放血殺し, 両株の豚体内でのウイルス増殖性を比較した. その結果, HT
-/SK株接種豚ではウイルス血症及びHI抗体産生は認められなかったが, 皮下投与においてのみ, 脾, 肝, 又は腸間膜リンパ節の限局された部位より極めて少量のウイルスが回収された. これらの回収ウイルスのin vitroでの至適増殖温度域 (rct) マーカーを調べたところ, HT
-/SK株と同じ性状を示し, 明らかに強毒90HS株と区別された. 一方, 強毒90HS株接種豚では全頭, 接種後1日目より顕著なウイルス血症が出現し, 試験期間中連続的に認められた. さらに, 全頭の脳, 肺, 脾, 肝, 膵, 小腸及びリンパ組織などの検索したすべての部位より高濃度のウイルスが検出された. HI抗体は接種後6日目に初めて検出された.
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丸山 総一, 田中 司, 勝部 泰次, 仲西 寿男, 貫名 正文
1990 年 52 巻 6 号 p.
1237-1244
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
1986年5月から1987年4月までの1年間にわたり, 神奈川県の海岸および墓地に棲息するカラスの新鮮糞便500検体より, 高温カンピロバクターの分離を試みると共に, 分離したC. jejuniについてSkirrowの生物型別ならびにPennerの血清型別を行った. 年間を通じて, 海岸のカラスの糞便270検体中169検体 (62.6%), 墓地のカラスの糞便230検体中106検体 (46.1%) から高温カンピロバクターが検出された. 本菌の月別検出率は, 海岸のカラスでは32.0%から85.0%, 墓地のカラスでは20.0%から75.0%であった. 検出された菌種は, 海岸のカラスでは, C. jejuniが150検体から, C. coliが21検体から, C. laridisが14検体から, 墓地のカラスでは, C. jejuniが80検体から, C. coliが12検体から, C. laridisが16検体からそれぞれ検出された. 両地点のカラス由来C. jejuni192株の多く (91.1%) は生物型Iであった. 192株中169株が20の血清型に分類され, 両地点とも血清型2が最も優勢であった.
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牧村 進, 薄井 萬平
1990 年 52 巻 6 号 p.
1245-1250
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
ウシ血清中のハプトグロビン (Hp) の臨床診断学的意義をより明らかにするため, 各種疾病牛の血清中のHpとムコ蛋白, シアル酸の関連性を検討した. まず, 健康ウシ46頭および疾病牛36頭のムコ蛋白, シアル酸およびHpの血中濃度を, それぞれ過塩素酸可溶性蛋白測定法, 酵素法および分光学的方法により測定した. 病牛におけるそれぞれの異常値検出率は, 94.3, 45.7, 82.9%を示し, 炎症性疾患におけるこれらの急性相反応物質の診断学的価値が確認された. さらに, ムコ蛋白とシアル酸, Hp, α-グロブリンおよび好中球数 (%) との間に, それぞれ, 有意な相関が認められた. また, Hpとムコ蛋白およびシアル酸との間に有意だが低い相関を認めたが, これはピロプラズマ感染などの溶血性疾患の合併症のためと推定された. 血清Hpを他の急性相反応物質と一緒に測定することは, 炎症性疾患に合併した潜在性の溶血性疾患の診断に有用であることが示唆された.
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川本 哲, 高橋 清志, 黒沢 隆, 其田 三夫, 小沼 操
1990 年 52 巻 6 号 p.
1251-1259
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
T. sergentiの赤内型原虫の分裂様式について光顕的および電顕的観察を行った. 赤内型原虫は単一の核を有し, 細胞質にはリボゾーム, クリステのないミトコンドリア, 細胞口および食胞が認められ, 形態的に栄養型trophozoite stageと見なされた. 末梢血中に観察される赤内型原虫は, ほとんどのものが, この形態を有し, まれにrhoptry, small electron dense bodyおよびelectron dense cisternaeを有する原虫が観察され, これは形態的に感染型のmerozoite stageと考えられた. T. sergentiの赤内型原虫は主経路である四つの娘細胞をつくるschizogonyにより, あるいは副経路である二分裂によって増殖し, いずれの分裂経路においても娘細胞はmerozoiteであった. このことからT. sergenyiは末梢血内でschizogonyあるいは二分裂によって増殖し, 娘細胞はmerozoiteに分化し, 赤血球への感染性を有するようになることが示唆された.
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川本 哲, 高橋 清志, 小沼 操, 黒沢 隆, 其田 三夫
1990 年 52 巻 6 号 p.
1261-1263
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
T. sergenti感染赤血球からピロプラズムを単離し, in vitroにおいて赤血球内への侵入実験を行った結果, 少数の原虫が10分以内に赤血球内へ侵入を完了したが, 多数の原虫は赤血球の表面に付着したままで侵入しなかった. その赤血球侵入率は0.2~0.8% (n=7) であった.
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東原 朋子, 田村 弘, 見上 彪
1990 年 52 巻 6 号 p.
1265-1268
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
マレック病 (MD) 腫瘍由来MDCC-MSB1 clo. 18細胞を接種したニワトリにMD腫瘍付随表面抗原 (MATSA), または栓球抗原に対するモノクローナル抗体を投与した. MATSAに対する抗体を投与したニワトリでは腫瘍は対照に比べてわずかに小さかった. 一方, 栓球抗原に対する抗体 (2C12) を投与したニワトリでは, 腫瘍の増殖は著しく抑制された. 白血病由来のLSCC-CU10細胞を接種したニワトリでは, 2C12投与による腫瘍増殖の抑制は認められなかった.
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佐々木 栄英, 北川 均, 村瀬 茂, 石原 勝也
1990 年 52 巻 6 号 p.
1269-1271
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
コリーに対するmilbemycin oximeの安全性 (感受性) を臨床的に検討する目的で, ラフコリー6頭と対照の柴犬6頭に, 体重1kgあたり0.25mg (犬糸状虫寄生予防用量), 0.5mg (消化管内線虫駆除量), 1.0mgおよび2.5mgの本剤を10日間連続経口投与した. またコリー, 柴犬それぞれ3頭に12.5mg/kgおよび25mg/kgを1回経口投与した. 投与後, コリー, 柴犬共に, 臨床的に問題となる症状は出現せず, 検査所見にも異常とみなされる変化は認められなかった. Milbemycin oximeは, コリーに対しても犬糸状虫寄生予防および消化管内線虫駆除の目的で安全に投与することができることが示された.
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清水 敏光, 筒井 敏彦, 村尾 育子, 織間 博光
1990 年 52 巻 6 号 p.
1273-1275
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
犬の妊娠子宮192個を観察した結果, 92頭 (47.9%) に1頭あたり1-3個の胚の子宮内移行が認められた. 排卵数の多い側から少ない側への移行が88頭 (95.7%) で, その逆はみられなかった. 移行の結果, 左右排卵数の差より左右子宮角内の胎子数の差が小さくなった例が65頭 (70.7%), 逆に大きくなった例が5頭 (5.4%), 変らなかった例が22頭 (23.9%) であった.
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川本 英一, 沢田 拓士, 鈴木 潔, 丸山 務
1990 年 52 巻 6 号 p.
1277-1279
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
5都道府県のウサギおよび飼育環境から分離されたPasteurella multocida60株について血清型別を行った. 莢膜型別では全株がA型であった. O型別では12型が39株 (65.0%) と最も多く, 次いで12・4型が8株 (13.3%) で, 型別不能の2株を除く全株が12型の抗原を有していた. 以上の成績から, 我が国のウサギおよび飼育環境由来P. multocidaの主要な血清型はA:2型であることが明らかとなった.
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鈴木 淳一, 加藤 憲夫
1990 年 52 巻 6 号 p.
1281-1283
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
分光光度計を使用するだけで, 牛血清中のビタミンAを測定する簡易かつ安価な方法を開発した. 本法で得られた測定値は高速液体クロマトグラフィーで得られた値と良く相関した.
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松田 治男, 井上 誠, 根来 宗孝, 村田 昌芳
1990 年 52 巻 6 号 p.
1285-1288
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
鶏卓球性白血病細胞株 (IN24) に対するマウス単クローン抗体 (HUM1) を作出し, その特異性をフローサイトメーター (FCM) を用いて調べた. HUM1抗体の性状並びに腫瘍細胞に対する反応性を調べたところ, この抗体は胸腺細胞の2.3%, 末梢血細胞 (PBL) の27.8%及びIN24細胞株の65.7%と反応した. PBLは, FCM解析から大きく (a) リンパ球・栓球, (b) 単球及び (c) 顆粒球に分けられ, HUM1抗体は, これらのうち主として (b) 及び (c) と反応した.
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新川 俊一, 小沼 操, 松葉 隆司, 桐沢 力雄, 高橋 清志, 川上 善三
1990 年 52 巻 6 号 p.
1289-1291
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
Theileria sergenti感染牛マクロファージの機能測定をケミルミネッセンス (CL) 法により行った. 測定の際, 赤内型メロゾイトをオプソニン化しstimulantとしてCL反応を調べた. T. sergenti陽性牛血清ないしはそのIgGでオプソニン化すると活性の増強がみられた. しかし, IgGをFab, あるいはFcフラグメントにするとオプソニン効果は消失した. またウシ補体でも弱いオプソニン効果を認めた.
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伊藤 博, 田村 啓二, 元井 葭子, 高瀬 勝晤, 中村 武彦
1990 年 52 巻 6 号 p.
1293-1296
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
各種炎症性疾患牛及び開腹手術を施行した牛の血清α
1酸性糖蛋白 (α
1AG) 濃度の変動を観察した. 1~3日の治療で治癒した群では治療後, 殆どの例が正常値内を推移した. 又, 一部異常値を示した例では, 症状の回復に従って減少した. 継続治療または廃用群では, 観察期間中高値を示した. 開腹手術例では, 術後α
1AG値が一過性に上昇し, 約2~6週間で術前の値に帰した. しかし, 術後に腹膜炎を併発した例では, 剖検時まで高値を持続した.
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河津 信一郎, 中村 義男, 神尾 次彦, 藤崎 幸蔵, 南 哲郎
1990 年 52 巻 6 号 p.
1297-1300
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
酵素抗体法を用いて牛のEperythrozoon wenyoniに対する抗体の検出を試みた. E. wenyoni高度感染牛の赤血球から高圧窒素ガス法により分離, 精製したエペリスロゾアから3種類の抗原を作製し, これらとE. wenyoniおよび他の住血微生物感染牛血清との反応性を比較したところ, Triton X-100抽出抗原はAnaplasma centrale, A. marginale感染牛血清との間に若干の交差反応を示したものの, ELISA抗原として使用可能であった.
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岩永 りか, 小野 満, 福地 邦彦, 平井 莞二, 見上 彪
1990 年 52 巻 6 号 p.
1301-1304
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
マレック病ウイルスのDNAをパルスフィールド電気泳動法のひとつであるフィールドインバーション電気泳動法を用いて分離した. この方法は簡便で効率が高く, 分離されたDNAは精製度が高いことが確認された.
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八村 晃一, 根城 博一, 宮崎 秀人, 種池 哲朗, 黒沢 隆, 高橋 清志, 其田 三夫
1990 年 52 巻 6 号 p.
1305-1308
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
硫酸キニジンをホルスタイン種成牛の第4胃内に直接注射した後, その血中動態を解析した. その結果, 第4胃内投与による吸収率は経口法に比べて著明に高いこと, 2回反復投与により有効血中濃度を8時間以上維持でき, かつ副作用も発現しないことを明かにした.
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森永 康裕, 納 敏, 更科 孝夫, 一条 茂
1990 年 52 巻 6 号 p.
1309-1311
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
北海道のホルスタイン種子牛に地方病性甲状腺腫の発生が認められ, 本病が子牛の生後直死や虚弱等の重要な原因となっていることが明らかになった. 発病牛の甲状腺機能検査では, 血中サイロキシン (T
4) の低値と血中トリヨードサイロニン (T
3) の著明な上昇によるT
4/T
3の低下を示し, 病理学的所見では, 甲状腺濾胞上皮細胞の過形成による瀰慢性実質性甲状腺腫像が共通して認められた.
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渋谷 一元, 田島 正典, 山手 丈至
1990 年 52 巻 6 号 p.
1313-1317
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
Fischer344/DuCrjラット62匹に自然発生した中皮腫 (雄57匹, 雌5匹) を, 組織学的に上皮型 (雄48匹, 雌3匹), 線維型 (雄2匹, 雌2匹) 及び混合型 (雄7匹) に分類した. 上皮型は良性の性格を示し, 雄においてその殆どが生殖器中皮を中心に分布していたのに対し, 線維型は悪性の性格を示し, 胸膜を中心に分布していた. 混合型は上皮性成分及び線維性成分から成り, 体腔に広く分布していた.
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高瀬 公三, 内村 哲也, 香月 伸彦, 山元 通孝
1990 年 52 巻 6 号 p.
1319-1321
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
アヒル由来非定型ロタウイルス (F-29株) を用いて, 鶏ひなへの感染性, 及び全国各地から1988-89年に収集された鶏血清1,040例中の抗体保有状況を, 間接蛍光抗体法で調べた. F-29株を経口投与された鶏ひな及び同居ひなには抗体が認められ, 感染が成立した. 野外鶏血清の抗体陽性率は59.3%を示した. 抗体陽性率は20-40日齢でほぼピークに達し, 地域間, 鶏種間で明らかな差を認めなかった. 種鶏群由来血清の陽性率は58.5%であった.
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中内 潔, 中島 弘美, 榊原 一兵
1990 年 52 巻 6 号 p.
1323-1324
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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国立予防衛生研究所筑波医学実験用霊長類センターのカニクイザル155頭について糞便中に排出される大腸バランチジウムを調査したところ, 14頭 (9.0%) からシストが検出された. 検出されたシストは大きさが平均54.1×68.8μmであった.
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白幡 敏一, 塚田 康祐, 太田 千佳子, 後藤 仁
1990 年 52 巻 6 号 p.
1325-1328
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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トキソプラズマ感染マウスの静脈内にネズミチフス菌の内毒素 (LPS) を注射すると, IFN-α/βに引き続き, 高力価のIFN-γが血中に誘発・産生された. IFN-γの産生はサイクロスポリンAやカラギーナン等の免疫抑制剤あるいはT細胞やNK細胞に対する抗血清類の投与により顕著に抑制されるため, その誘発・産生には, 産生細胞としてのT細胞やNK細胞とともに, マクロファージの関与が必須であることが示された.
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今川 智敬, 橋本 善春, 首藤 文栄, 昆 泰寛, 杉村 誠
1990 年 52 巻 6 号 p.
1329-1332
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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コイ血清から硫安塩析, ゲルろ過, イオン交換クロマトグラフィーにより免疫グロブリンを精製した. それに対するウサギ抗血清を得, コイ肝細胞で吸収することにより特異的な抗血清を作製した. 得られた血清により頭腎内形質細胞が強く染色され, 本血清はコイの抗体産生細胞の光顕および電顕免疫組織化学的検索に応用可能であると考えられた.
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吉原 一浩, 中村 義男, 藤崎 幸蔵, 小野寺 節
1990 年 52 巻 6 号 p.
1333-1335
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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T. sergenti (池田株) 実験感染牛の腋窩リンパ節よりリンパ球を分離しマウスミエローマ細胞 (P3U1) と細胞融合を行い, T. sergentiに対する牛型モノクロナール抗体を産生するヘテロハイブリドーマを一株作製した. 抗体のサブクラスは, IgMで, 分子量39,000, 26,000, 20,000の原虫蛋白を認識していた. また, 間接蛍光抗体法により, 赤血球内の原虫に特異的な蛍光が観察された.
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清水 眞也, 八木 行雄, 中村 義男, 志村 亀夫, 藤崎 幸蔵, 小野寺 節, 南 哲郎, 伊藤 進午
1990 年 52 巻 6 号 p.
1337-1339
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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摘脾牛にダニを用い小型ピロプラズマを感染させると, 赤内型原虫出現の時期に一致し白血球数の一時的減少と体温の一時的上昇が観察された. また, 原虫寄生赤血球数のピークの前後に赤血球数, 赤血球容積, ヘモグロビン濃度が減少し, また, 白血球数と体温の上昇が認められた. 一方, 感染経過に伴い末梢血リンパ球数の増加傾向が観察された. 以上より, 感染が宿主の免疫系や骨髄系に何らかの影響を与えているものと推察された.
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中村 和世, 林 正信, 磯貝 浩, 波岡 茂郎
1990 年 52 巻 6 号 p.
1341-1345
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
フリー
マレック病由来リンパ腫株化細胞MDCC-RP1 (RP-1) には, 複数のMDVゲノムが存在するが, ウイルス粒子は産生されない. RP-1細胞のMDV DNAのサザーンブロット解析によって検出可能な大きさのMDV DNA断片の欠失は認められなかったが, BamHI-H断片1.5キロ塩基対 (kbp) Smal-Pstlサブフラグメントにハイブリダイズする新たな1.4kbpの断片が検出された. この領域の5'側には, MDV DNAの複製開始点と予想されている配列が存在する.
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飯島 知一, 末吉 益雄, 山本 敏弘, 吉岡 圭輔, 中澤 宗生
1990 年 52 巻 6 号 p.
1347-1350
発行日: 1990/12/15
公開日: 2008/02/14
ジャーナル
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下痢を呈し, 急死した9日齢の子牛の大腸から多数のO血清群26の大腸菌が分離された. この大腸菌はエンテロトキシン非産生で, ベロトキシンを産生した. 組織学的には, 大腸の粘膜表面は凹凸が著明で表層粘膜上皮細胞は変性し, 一部剥離・脱落していた. 免疫組織化学的に観察したところ, 抗O群26血清に陽性の大腸菌が粘膜表面に多数付着していた. また, 電子顕微鏡で観察したところ, 菌の付着した表層上皮細胞表面は微絨毛が消失し, 小窩または台座形成が認められた. 分離した大腸菌は"Attaching and Effacing E. coli (AEEC)"であると思われた. この報告はO血清群26のAEECに自然感染し,下痢を呈した子牛の日本における最初の報告である.
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