レーリー散乱法を用いた中真空領域実用真空計の検討結果をまとめれば, 次のようになる.
(1) 半導体レーザー励起YLFレーザーを光源とし, 光電子増倍管を検出器として, 小型の感圧部を用いた実験装置で, 迷光レベル2.7Paを達成した.これにより, 1.3Paまでの圧力が検出可能となり, 2.7~1.2×10
3Paの範囲で隔膜真空計による圧力に対してレーリー散乱信号が7%程度以内の誤差で比例する結果を得た.これらの結果から, 小型の測定システムで中真空領域での圧力測定が可能であることを示した.
(2) パルス変調をかけた半導体レーザーを光源, アバランシェフォトダイオードを検出器とし, 小型の感圧部を用いた実験装置で, 迷光レベルを窒素ガス圧換算で1.3×102Paまで低減させた.1.3×10
2~6.7×10
3Paの範囲でレーリー散乱信号と隔膜真空計による圧力とは9%程度以内の誤差で比例する結果を得た.
以上の結果により, レーザー光のレーリー散乱法を, 中真空領域の実用真空計へ応用する道が開けたと考える.
今後, 上記 (2) の実験システムで, APDの冷却, 検出回路の周波数帯域幅を狭くすること, および受光光子数を増やすこと (例えば, より高出力の半導体レーザーの使用, 受光立体角を増大化など) により, 検出下限を2桁下げ, 最終的に実用真空計を実現することが期待される.
最後に, 本研究と以前報告したルビーレーザーを光源とする実験について, 装置諸元と実験結果を簡単に比較してTable1に示す.なお, 同表の測定範囲は実験を実際に行った圧力範囲を示している.特に, 本法の上限については大気圧以上にわたって原理的制約はない.
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