日本暖地畜産学会報
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61 巻, 2 号
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原著論文(一般論文)
  • 安里 直和, 幸喜 香織, 蝦名 真澄, 川本 康博, 荷川取 秀樹
    2018 年 61 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    近赤外分析法を用いて,ローズグラス(5品種)の飼料成分について検量線を作成した.各品種より40点,計200点のサンプルを用い,そのうち150点のサンプルを検量線作成用試料,残りの50点を検定用試料とした.作成した検量線の精度は,相関係数(r),推定誤差の標準偏差(SDP)およびEI値を用いて評価を行った.重回帰分析(MLR)および部分最小二乗法による回帰分析(PLSR)にて検量線を作成したところ,水分,粗タンパク質(CP),中性デタージェント繊維(NDFom),酸性デタージェント繊維(ADFom),酸性デタージェントリグニン(ADL)および乾物消化率(IVDMD)のr は0.86-0.98 と高く,SDPについては,0.43-3.60 と低かった.また,EI値については,MLRにおけるADLでC 評価,その他の成分についてはB 評価と良好な結果が得られた.PLSRにおいては,全ての成分でEI値がB 評価の精度が得られ,MLRより精度の高い検量線を作成することが出来た.以上のことより,ローズグラスの飼料成分およびIVDMDについて,近赤外分析法にて迅速かつ精度高く推定できた.

  • 吉村 和敏, 小山 秀美, 春日 久志, 德丸 元幸, 上西 愼茂, 今村 清人, 坂元 信一, 溝下 和則, 下桐 猛
    2018 年 61 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    鹿児島県内の食肉処理場に出荷された黒毛和種5,440頭の枝肉切開面における筋間脂肪中の脂肪酸組成を近赤外分光法で測定した.オレイン酸及び一価不飽和脂肪酸(MUFA)割合に関して,単形質アニマルモデルREML法により遺伝的パラメータを推定し,BLUP法によって育種価の推定を行った.また,2形質アニマルモデルREML法の結果から脂肪酸割合と各枝肉形質との遺伝相関及び表型相関を算出した. オレイン酸割合, MUFA割合の遺伝率はそれぞれ0.47±0.08,0.48±0.08 であった.また,種雄牛育種価はオレイン酸割合については-4.89~4.30%,MUFA割合については-5.09~4.33%であり,種雄牛の遺伝的な能力に大きな差が認められた.オレイン酸割合またはMUFA割合と各枝肉形質との間では表型相関は総じて低かった.一方,両者とBMS No., 肉の光沢,シマリ及びキメとの間では弱い負の遺伝相関があり,BFS No. との間では,弱い正の相関があった.これらのことから,脂肪酸組成の改良は遺伝的に十分可能であると考えられる.

  • 波平 知之, 石垣 圭一, 井村 信弥, 堤 ひとみ, 岡 朋子, 屋良 朝宣, 玉城 政信
    2018 年 61 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    ジャイアントスターグラス(GS)草地に,低温期にイタリアンライグラス(IR)を4 水準(0.7,1.0,1.5,2.5 g/㎡)で追播し,播種量が混播草地の乾物収量ならびにGS とIR の競争関係に及ぼす影響を,南西諸島で検討した.IR 追播に伴う増収は刈取り回次で異なり,全ての処理区で増収効果があったのは平均気温が最も低かった2 回目刈取り時のみであった.低温期間内の3 回の刈取り合計乾物収量は,処理区間での有意差はなかったが,播種量の増加に伴い収量構成割合はIR で増加し,GS で減少した.IR 追播区の相対収量(RY)も,GS とIR の両種ともに0.5 以上とはならず,どちらか一草種の優位性によってRY が0.5 以上となるのみであり,他草種の生長を抑制する競争関係にあると推察された.低温期間中,全ての刈取り時に合計相対収量(RYT)が1 以上となったのは,IR 追播量が0.7 g/㎡の処理区のみであった.

  • 山中 麻帆, 平山 琢二, 盧 尚建, 林 英明, 加藤 和雄, 鈴木 啓一, 及川 卓郎
    2018 年 61 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    近年の増殖傾向から農林業への被害が危惧されているニホンジカの食肉利用に関して,狩猟捕獲されたシカ肉への甘味料や海藻の添加処理が一般パネルの食味に与える影響について検討した.狩猟捕獲されたニホンジカのモモ肉を用い,甘味料添加としてトレハロースおよび砂糖,海藻添加としてワカメおよびコンブ粉末で添加処理したものを供試肉とした.パネルには食味などに関する訓練を受けた経験のない98名を無作為に抽出した.パネルに各処理肉および無処理肉を,それぞれ1カットずつ食味させ,食感および食味に関するアンケート(6項目)について5段階で評価させた.ワカメ粉末で処理したシカ肉の評価がいずれの項目においても無処理のシカ肉に比べ有意に高く評価された.また,味の評価項目に対しパネルの性とシカ肉嗜好性間の交互作用で有意性が認められた.

  • 本多 昭幸, 嶋澤 光一, 尾野 喜孝
    2018 年 61 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    地域未利用資源を活用した低CP リキッド飼料の給与が肥育豚の窒素排泄量およびアンモニア揮散量に及ぼす影響を調査した.去勢雄8 頭(WLD,70.1 kg)を用い,標準的な飼料(CP13.7%)を給与する対照区とシロップ廃液およびバレイショサイレージを主体とした低CP リキッド飼料(CP10.0%)を給与する低CP リキッド飼料区を設け,4 頭ずつ配置する窒素出納試験を実施した.低CP リキッド飼料区の窒素摂取量は対照区より少なかった(P <0.01)が,両区の窒素蓄積量および発育には差を認めなかった.尿への窒素排泄量および糞尿への総窒素排泄量は低CP リキッド飼料区が対照区より少なかった(P <0.01).その結果,糞尿混合物からの in vitro アンモニア揮散量は低CP リキッド飼料区が対照区より少なくなった(P <0.01).以上の結果から,シロップ廃液およびバレイショサイレージを配合した低CP リキッド飼料の給与は尿への窒素排泄量および糞尿混合物からのアンモニア揮散量の低減に貢献する可能性が示唆された.

  • 本多 昭幸, 嶋澤 光一, 尾野 喜孝
    2018 年 61 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    地域未利用資源を活用した低CP リキッド飼料の給与が肥育豚の血液性状,産肉性および肉質に及ぼす影響を調査した.肥育豚16頭(WLD,52.5 kg)を用い,標準的な飼料(CP15.6%)を給与する対照区とシロップ廃液およびバレイショサイレージを配合した低CP リキッド飼料(CP11.5%)を給与するLPL 区に4 頭ずつ配置する試験を2 反復した.LPL 区は対照区より血漿中のAlb およびBUN 濃度で低値を示したが,正常値の範囲であった.肥育成績,と体成績およびロース肉の性状に両区間で差は認められなかった.LPL 区の皮下脂肪の脂肪酸組成は対照区よりオレイン酸の割合が高く,リノール酸およびリノレン酸の割合が低かった.食味官能評価において,LPL 区の豚肉は対照区より風味に優れ,総合的に美味しいと評価された.以上の結果から,地域未利用資源を活用した低CP リキッド飼料の給与は肥育豚の生産性に影響することなく,脂肪酸組成が改善されることで,通常より風味が良く,食味に優れた豚肉を生産できる可能性が示唆された.

  • 江頭 潤将, 建本 秀樹, 和田 康彦, 山中 賢一
    2018 年 61 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,黒毛和種において暑熱期(2016年8月から9月)と冷涼期(2017年2月から3月)に経膣採卵(OPU)を実施し,卵丘細胞-卵母細胞複合体(COCs)の品質に季節間で違いがみられるかについて検討を行った.暑熱期では供試牛5 頭から延べ15 回,冷涼期では供試牛3 頭から延べ18 回のOPU を実施し,得られたCOCs を形態学的に分類した後,卵丘細胞のアポトーシスおよび卵母細胞のミトコンドリア分布を評価した.その結果,OPU 時の直腸温および呼吸数は暑熱期において上昇したが,卵胞数やCOCs の形態学的グレードについては両区間で違いはみられなかった.一方で,暑熱期において卵丘細胞のアポトーシス細胞数が増加し,卵母細胞におけるミトコンドリア分布においても異常な分布を示すものが増加した.以上の結果から,夏季に暑熱ストレスを受けた黒毛和種の個体ではCOCs の品質が低下している可能性が示唆された.

  • 屋良 朝宣, 石田 千華, 波平 知之, 村田 正将, 上原 一郎, 玉城 政信
    2018 年 61 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    沖縄県内における肉用牛の主な自給粗飼料である暖地型イネ科牧草のディジットグラストランスバーラの大家畜への利用性を確認するために,トランスバーラ乾草と輸入エンバク乾草を黒毛和種繁殖成雌牛にそれぞれ乾物給与量の50%を給与し,乾物摂取量,粗タンパク質摂取量,体重等を比較検討した.乾物摂取量ではトランスバーラ乾草が3.63±0.17 kg DM/日,エンバク乾草が3.66±0.09 kg DM/日とほぼ同じ値で,有意差は認められないが,粗タンパク質摂取量はトランスバーラ乾草が0.23±0.01 kg DM/日とエンバク乾草の0.17±0.00 kg DM/日より有意に多かった(p < 0.01).体重,体高および胸囲の増減について有意差が認められないことから,トランスバーラは沖縄県内における黒毛和種繁殖成雌牛の粗飼料として有用であることが示された.

原著論文(短報論文)
  • 本田 直樹, 二宮 京平, 福山 喜一
    2018 年 61 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    夏作トウモロコシの栽培時に,自然下種由来のギニアグラス品種ナツカゼ(以下ナツカゼ)の出芽・生育を抑制するため,数種の除草剤の施用効果を,ポット試験と圃場試験により評価した.ポット試験により,ナツカゼの出芽・生育にはナツカゼ種子の埋土が1 cm 深で均一であれば発芽阻害機作の除草剤が効果を示した.しかし圃場試験では,前年作で自然下種したナツカゼの種子は,冬作および夏作トウモロコシのための耕起作業により異なる埋土深に位置することから,発芽は長期間に渡り続くと推察され,発芽阻害剤の施用効果は低くなり,茎葉処理剤の施用効果が最も高かった.そのため,自然下種したギニアグラス種子の埋土圃場でのトウモロコシ栽培にあたっては,播種後ナツカゼの出芽前に処理する発芽阻害機作の除草剤の施用効果は低く,トウモロコシの生育中途に出芽するナツカゼに対し,茎葉処理できる除草剤(ニコスルフロン乳剤)が有効であることが示された.

  • 髙山 耕二, 西土 徹平, 主税 裕樹, 大島 一郎, 中西 良孝
    2018 年 61 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,急傾斜水田畦畔におけるヤギの除草利用について検討を行った.傾斜35~50°の水田畦畔(1.6 a)において,去勢ヤギ1 頭を2012年6月2日から8 日間放牧した.試験地内の各傾斜角度(35~40°,40~45°および45~50°:G,M およびS 区)におけるヤギの採食回数(観察度数)と各区の面積割合から算出した期待度数は,3 回の行動観察において一致せず(P<0.01),傾斜角度が最も小さいG 区の利用は少なく,むしろ傾斜角度の大きいM 区の利用が多くみられた.また,最も傾斜が急なS 区でも,放牧したヤギが傾斜45~50°の水田畦畔を移動し,採食や休息する状況が観察され,試験地の植物現存量は入牧時に比べ,退牧時に減少し,ヤギによる除草効果が認められた(P<0.01).以上より,35~50°の急傾斜水田畦畔におけるヤギの除草利用は有効である可能性が示された.

原著論文(技術報告)
  • 西村 和志, 喜田 環樹, 川出 哲生, 阿部 佳之
    2018 年 61 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    大量の圃場が広域に分散する大規模飼料生産組織の生産管理支援を目指し,GIS ベースの飼料生産管理システムを開発した.本システムは,無償で利用可能なQGIS をベースに,作物・品種の圃場配置,作業計画の策定,作業指示書の作成,作業日報の登録,作業進捗状況の把握等,各種管理業務に対応した専用操作ツール群で構成され,大量の圃場を簡易な操作でデータ入力と表示が行える.作業受託を主たる事業とするコントラクター,経営耕地を所有し作物作付計画の権限・責務を負う農場制型TMR センター等,代表的な飼料生産組織の類型に対応しており,生産現場においても有効性が示された.

  • 髙山 耕二, 東原 大, 大島 一郎, 中西 良孝
    2018 年 61 巻 2 号 p. 143-145
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    放牧前の肥育豚を用いて,20 および40 cm の高さに架線した2 段張り電気柵に対する馴致を行い,その行動反応を調査した.放牧地内に24 m2 の試験地を設け,2 段張り電気柵を設置し,3,000 V 以上の通電を行った.バークシャー種去勢雄8頭(17週齢,平均体重25 kg)を5日間放牧し,10:00~18:00にかけて行動を観察した.1 日目には,ブタ8 頭による電線への接触が延べ36 回認められ,鼻先で探索し,その際に感電・後方に逃避する状況が多く観察された.1回のみブタが感電に驚き,前進して脱柵した.2日目以降は,ルーティングを行っているブタが偶発的に電線に触れ,感電する状況が多くみられたものの,多くのブタが電気柵を忌避し,脱柵した個体も皆無であった.以上より,20 および40 cm の高さに架線した2 段張り電気柵を用いることで,放牧前のブタの馴致やその後の放牧時における脱柵防止が可能であることが示唆された.

  • 金子 真, 中村 好德, 小林 良次, 山田 明央
    2018 年 61 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    温帯に位置する西南暖地において熱帯牧草パリセードグラスを1 年生牧草として栽培する際の適切な播種密度を明らかにするため,条播条件では2.4 kg/10 a(条間54 cm)および4.8 kg/10 a(条間27 cm),散播条件では2 kg/10 a および4 kg/10 a の播種密度で乾物収量を調査した.その結果,条播,散播ともに1番草では播種密度が高い方がパリセードグラス収量は多い傾向を示し,特に散播では有意差も見られ,播種密度4 kg/10 a から2 kg/10 a に播種密度を減らすと1 番草の収量が減少することが示された.一方,雑草現存量には播種密度の違いによる有意な差はなく,播種密度4 kg/10 a 以下では播種密度を高めることによる初期生育時の雑草抑制効果への影響は小さいと考えられた.播種密度を低くすることにより種子代を削減できるが,収量の低下程度によってはそれ以上の損失が発生する可能性があった.播種量の低減には発芽率の高い種子の利用や出芽率を高める播種技術の開発が,雑草の抑制には除草剤や中耕を利用した雑草防除技術の開発がそれぞれ必要である.

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