鹿児島県内の食肉処理場に出荷された黒毛和種5,440頭の枝肉切開面における筋間脂肪中の脂肪酸組成を近赤外分光法で測定した.オレイン酸及び一価不飽和脂肪酸(MUFA)割合に関して,単形質アニマルモデルREML法により遺伝的パラメータを推定し,BLUP法によって育種価の推定を行った.また,2形質アニマルモデルREML法の結果から脂肪酸割合と各枝肉形質との遺伝相関及び表型相関を算出した. オレイン酸割合, MUFA割合の遺伝率はそれぞれ0.47±0.08,0.48±0.08 であった.また,種雄牛育種価はオレイン酸割合については-4.89~4.30%,MUFA割合については-5.09~4.33%であり,種雄牛の遺伝的な能力に大きな差が認められた.オレイン酸割合またはMUFA割合と各枝肉形質との間では表型相関は総じて低かった.一方,両者とBMS No., 肉の光沢,シマリ及びキメとの間では弱い負の遺伝相関があり,BFS No. との間では,弱い正の相関があった.これらのことから,脂肪酸組成の改良は遺伝的に十分可能であると考えられる.
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