水資源・環境研究
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18 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 新潟県佐渡市旧上横山村を事例に
    杉浦 未希子
    2005 年 18 巻 p. 1-14
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    新潟県佐渡市旧下横山村では1931(昭和6)年から1935(昭和10)年の耕地整理まで、同市旧上横山村では1969(昭和44)年から1971(昭和46)年の圃場整備まで番水株売買の慣行が存続した。ここでの番水株とは、渇水時の輪番灌漑における取水順位が権利化したもので、土地所有権から分離し属人的に取引されていた点に特徴がある(番水株の属人性)。本稿は、この「水」の権利の分離と取引が、どのような要因のもとに可能であったのかを、下横山における先行研究を踏まえた上で、上横山を事例に、新たに見つかった史料や古老の聞き取りなどから考察する。
    本論では結論として七つの要因を挙げたが、その中でも特に地理的条件による要水量の格差、番水株の内容としての自由支配性、散居村制からくる緩やかな水利共同制と属人的支配の傾向、ほどほどの水の稀少性大地主の不存在や独立平等の気風などが指摘される。
  • 阿部 直也
    2005 年 18 巻 p. 15-28
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    本稿は、米国ニューヨーク州北部に位置するシラキュース市が実施している、水道水源の保護を目的としたスキニーアテェレス湖流域農業プログラム(SLWAP)に着目した。具体的には、多様な関係者が存在する中、SLWAPの運営のために時系列に策定されたポリシー(規定)を通じて、複数の関係主体が関わる流域単位の水源保護プログラムの進捗過程を分析した。ポリシーの策定背景、内容、およびタイミングを分析した結果、プログラムを円滑に実施するためには、複数の主体が関与する意思決定プロセスの透明性やその正当性が明確に位置づけられる重要性、そしてプログラムの柔軟な運用を可能にする関係者間の信頼関係の重要性が確認された。SLWAPの今後の主要な目的は、水質汚染防止のために策定された包括的農場計画の内容を各農家が遵守しているか否かを実質的に取り締まることである。SLWAPは1994年10月に第一期が開始され、2005年1月より第二期に入っている。今後の課題は、どのような既存の機能を残し、どのような新たな機能を付加していくか見極めることであるが、その際の大きなポイントはこれまで構築してきた農民との信頼関係をどのように維持していくか、ということである。
  • カナダ、バンクーバー都市圏におけるNPO、BESTの事例から
    古川 智美
    2005 年 18 巻 p. 29-42
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、持続可能な交通計画を推進するにあたってのNPOの果たしうる役割について考察することである。カナダ、バンクーバー都市圏における持続可能な交通アドヴォカシー団体であるBEST(Better Environmentally Sound Transportation)を事例に、BESTが持続可能な交通計画推進の活動を進めるにあたり直面した機会(Opportunities)及び問題(Constraints)を明らかにし、持続可能な交通計画推進にNPOがどのような役割を果たしうるのかについて考察した。
    調査の結果、BESTは、既存の行政主導のプロセスに「参加」するのみに留まらず、持続可能な交通システムの実現に向けて多様な活動を展開しており、NPOが行政や企業の対等なパートナーとして持続可能な交通計画を担っていく主体となりうることが明らかになった。
  • ひた水環境ネットワークの活動を中心に
    田渕 直樹
    2005 年 18 巻 p. 43-48
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    筑後川上流にある大分県日田市は、水郷日田と呼ばれ水の豊かな小京都である。その一方で水力発電所に囲まれているために川の表流水が少なく、景観や生態系を破壊されていた。そこで1998年から2000年にかけて水量増加運動が行われた。その特徴は、(1)全国最高水準の比流量0.877t/sの河川維持用水を獲得したこと、(2)民間が主導した地域ぐるみの運動であったこと、(3)足下の暮らしを見直し、生活排水の改善に取り組んだこと、(4)水量増加だけでなく、流域圏全体の環境回復を目指していること、(5)市民が河川環境協議会に参加して政策決定に関わり、市民参加の実績を残したこと、(6)「台霧の瀬づくりプロジェクト」など、民主導の官民協働が実践されていること。この水量増加運動は、華々しく全国メディアで報道されることはなかったが、その内容からして21世紀の先端を行く市民運動である。
  • 九頭竜川流域を事例として
    沖田 ちづる
    2005 年 18 巻 p. 49-54
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    本研究では、福井県嶺北地方の九頭竜川流域を研究対象として、官民協働による流域環境保全活動のあり方について考えていくことを目的とする。九頭竜川流域全体を視野に入れた、住民主導の保全活動であるNPO法人ドラゴンリバー交流会では、これまで自然環境保全を中心としてきたが、2004年7月、実際に福井豪雨の影響を受けたことによって、官民で水害対策を見直す動きが強まるようになってきた。なお、九頭竜川流域では足羽川ダム建設問題について賛否両論が繰り返されてきたが、福井豪雨後は足羽川ダム建設を推進する方向に向かっている。今後の課題としては、当交流会などの官民協働の場を活かし、流域内での多様化した問題について、行政と地域住民との徹底した話し合いにより、地域に対応した検討が必要である。
  • 飯岡 宏之
    2005 年 18 巻 p. 55-62
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    近年、都市用水をめぐる状況はいちじるしく変化している。1990年代後半にはいると水需要は低迷して、料金収入にもとつく独立採算制をとる水道事業体の経営は困難となっている。しかも、人口減少という社会構造の変化をまえにして、都市用水、とくに上水道はかつてない水需要の減少局面を迎えている。本稿では「首都圏の水」を都市用水からみることで、今日の局面がかつて経験したことのないものであること、また、地球環境の危機が叫ばれるなかで、新しいナショナルミニマムへの国民的な合意が緊要であることなど、水資源や水管理の課題を考察する。
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