水資源・環境研究
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2002 巻, 15 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 合成の誤謬
    末石 冨太郎
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 1-8
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    この論説は、2002年6月1日に水資源・環境学会第18回大会で、筆者が発表した「生活史的にみた下水道技術の誤謬」を改題したものである。現在、あらゆる領野で構造改革の必要性が論じられている。このためには関連する歴史を再検討することが欠かせない。生活とは、「物質・エネルギー・情報を介した人間行動と環境との交流」と定義でき、これら3要素のいずれの特性も備えている水は、人間の生活様式に影響する最重要因子と位置づけられる。ここではまず、筆者が直接・間接に経験した水関連技術の変遷から、批判的立場での年表を作成し、これを解説するという方法で論述を進めた。主な内容は、技術組織の問題点の抽出、遠距離輸送にもとつく大量水使用の誤りの指摘を含め、水文明の大転換の必要性である。
  • 野村 克巳
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 9-20
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    ストックホルム国連人間環境会議を初めとする環境に関する国際会議では、宣言型の文書がそれぞれ採択されている。この中で、地球憲章は持続可能な開発と地球環境の保護を目指し1992年のブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットで初めて採択が試みられたが、NGOのみの採択にとどまった。各国政府は代わりにリオデジャネイロ宣言をまとめた。その後リオ+10にあたる2002年のヨハネスブルグ・サミットに向けて新たな地球憲章運動が取り組まれた。本論文では国連レベルでの承認を目指している地球憲章が、承認に向けてこれまでどのように取り組まれてきたかを最初に述べる。次にこうした地球憲章に盛り込まれた理念が、今日までの、環境に関する諸国際会議の宣言文に段階的に採用されてきた理念的発展を明らかにした。次にヨハネスブルグ・サミットの「政治宣言」をめぐり「地球憲章」が承認寸前だったことなどさまざまに取り組まれたことを明らかにした。そして、さらなる憲章の理念を具体化させるため、国連での採択や「持続可能な開発のための教育の10年」計画の実現にむけた取組み、市民への啓発と各地でパートナーシップ・イニシアティブの取り組みの推進が望まれることを述べた。
  • 自由貿易と環境保護とのバランス
    松岡 勝実
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 21-30
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    今世紀、国際社会は「水の危機」に直面している。近年この問題に対処するために各方面から努力がなされているが、1つのオプションとして、水資源を国際的に自由に取引できる体制が、その効率的利用と配分に役立つとする見解がある。しかし水を越境して大量に輸出または輸入することになると、その実現可能性はもとより様々な問題が生じよう。水の取引が国際的に可能だとすると、いかなる種類の水が国際経済法の適用を受けるのか、国際市場において水資源の保護と環境に配慮した取引は可能なのか、果たして国家は水の取引によって経済的に改善されうるのか、また各国はどの程度まで水資源の取引に関し主権を及ぼすことができるのか。本稿ではとりわけ、国際取引における「水」の法的位置づけについて、カナダの事例を取り上げつつ、国際取引を究極的に規制するGATT/WTO法のコンテクストで論じてゆく。
  • スペイン・カタロニアにおける市民陪審制度の試み
    相良 敬
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 31-39
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    地域における持続的開発を可能とするような環境政策の決定過程において、市民参加は不可欠である。そして、環境政策過程における市民参加の手段は、そのコミュニティ全体の人口統計的な姿を表すような市民の集団が、情報を十分に与えられ、互いに十分に議論をした上で、政策に対してある程度の拘束力のある勧告を行うことができるようなものであるべきである。
    しかしながら、現在一般的に行われている世論調査や市民会議等の市民参加の手段は、そのような条件を溝たしていない。したがって、現在新たな市民参加のための手段が必要とされているのだが、その有力な候補に市民陪審がある。本稿では、この市民陪審が、環境政策決定過程における市民参加の手段として、望ましいものであるかについての検証を、カタロニアでの市民陪審のケースを用いて行う。そして、その検証の結果により、いくつかの課題や改善すべき点はあるが、市民陪審は、既存の市民参加の手段に比べて、望ましい市民参加の手段としての条件を満たしており、よりよい市民参加の手段であることが明らかとなる。
  • 西田 一雄
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 40-48
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    我が国に、ISO14000という環境管理の国際規格が導入され、JIS規格とされて約5年になり、認証取得事業所が約1万を超えるまでに普及した。
    このシステムの導入は、組織自身が環境にやさしくなると同時に、組織運営の近代化を推進する道具となると期待されたが、運用が困難で環境制御や企業活動に効果や有効性がないという意見がある。こうした見解が出るのは、ISO14000の規格の理解と運用に問題があるからであり、規格に基づく正しい運用をすれば、確実に効果があがり組織のマネジメントの改善に結びつくことを、規格の解釈を中心に運用のポイントについて論じた。
  • 渡辺 泰, 小栗 秀夫
    2002 年 2002 巻 15 号 p. 49-58
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2009/04/22
    ジャーナル フリー
    堀川は名古屋城築造にあたって開削された人工河川である。急速な産業と人口の集中により汚染が進んだ。近年、市民の堀川浄化への気運が高まり、行政も様々な施策に取り組んでいる。私たち「収水研」は現地調査等により、堀川の水環境悪化の実態と原因を次の3点に整理した。つまり、(1)伊勢湾の潮流影響を受ける感潮河川のため、水が滞留する状態となっていること、(2)主要水源である都市下水による影響が、下水道が整備された今日においても大きいこと、(3)補給水源であった木曽川・庄内川からの取水が困難になり、順流区間が「水無し川」となって汚染が深刻になったこと。
    堀川の水環境改善のためには、補給水源の手当と下水道(合流式、水処理)の改善が必要である。都市内の既存の水資源を活用して、河川水流を復活させ水環境を再生することを提案したい。
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