水資源・環境研究
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23 巻
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巻頭言
論説
  • 熊本県相良村旧川村地区を例に
    新井 祥穂
    2010 年 23 巻 p. 1-14
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    熊本県川辺川は、ダム建設の是非をめぐり長期間議論が重ねられたことで知られている。本研究は、ダム建設推進の目的の一つであった利水事業に注目し、受益地の農家が灌水を肥培管理技術上どのように位置づけているかを明らかにするため、同地域の適応的技術変化を分析した。結論としては、第一に、調査地域において利水事業がもたらす灌水は、既存の用水路や保水力ある土壌の選択・投入など、他の様々な低コストの農業技術により代替されえた。第二に、近代的な灌水と農業経営の競争力向上の関係は、営農意欲の高い農家群においても自明ではなかった。以上のような実態は、国営事業に対する農家の意見集約の難しさを説明すると同時に、同地域の農業政策における灌漑事業の重要度に関しても見直しを迫っている。
  • 滋賀県日野川流域、近江八幡市小田町を事例として
    錦澤 滋雄, 西出 尚史, 秋山 道雄
    2010 年 23 巻 p. 15-22
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    近年、身近な水路の親水性向上や水環境整備に対する住民ニーズはますます高くなり、環境用水の導入を目指す動きが各地で起こりつつある。しかし、許可水利権の取得に際しては、水源を含む地域の地理的自然的特性、水路等の物的条件、地域住民の意向、歴史的経緯など諸種の条件整備と、そのための問題解決が必要となる。本研究では、2009年6月に地域用水の許可水利権を取得した、滋賀県近江八幡市小田町の事例に着目し、同市内において地域用水の水利権を放棄した江頭町との比較を交えつつ、地域用水導入のための諸条件と課題について実証的な分析を行った。その結果、地域用水導入のためには、地元住民の権利取得に対する意向、過去の取水実態届出書の記載事項、現在の利用実態、集落からの水源の距離、河川流況などが、水利権取得に向けた諸条件として、重要な要素になることを明らかにした。
  • 濱崎 宏則
    2010 年 23 巻 p. 23-36
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2011/11/01
    ジャーナル フリー
    世界的な景気悪化の中でアジアが新たな市場として注目を集めており、メコン河流域諸国も順調な経済成長を遂げている一方で、水質や大気の汚染など、環境の悪化が人々の生活に影響を及ぼし始めている。しかし、制度や政策などの社会的な対応がそれに追いついていない。本稿は、ベトナム・カンボジア両国をまたがって流れるメコン河の支流において、上流のダム(ベトナム側)が下流の先住民族(カンボジア側)の生活に影響を与えている事例を取り上げ、ローカル・ガバナンスの視点からメコン河流域における持続可能な発展のための方策を展望するものである。つまり、水資源開発における合意形成の段階において、社会的弱者の意思が反映されにくい状況にあり、水資源開発の計画プロセスに社会的弱者の意思が反映されるようにするためにも、メコン河流域諸国においては、よりいっそう地方行政の成熟化を推進してローカル・ガバナンスを強化することが求められている。
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