水資源・環境研究
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28 巻 , 1 号
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特集 水資源・環境研究の新展開 — 次世代研究者による水資源・環境研究
特集にあたって
特集論説
  • 大野 智彦
    2015 年 28 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     流域ガバナンスに関する研究が増加しつつあるものの、各研究の位置付けを明確にし、知見を蓄積するためのフレームワークが十分整理されていない。本研究ではまず、循環の観点から流域環境とガバナンスの現代的課題を確認し、流域ガバナンスやガバナンス一般に関するこれまでの研究の展開を整理した。その上で、今後の研究の方向性として(1)ガバナンスの体系的把握、(2)社会-生態システムの包括的把握、(3)クロス・スケール・リンケージの解明の3点を提示し、関連する分析フレームワークとして制度分析・発展フレームワーク、アドボカシー連合フレームワーク、社会-生態システム・フレームワークなどを紹介した。
  • 野田 浩二
    2015 年 28 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     わが国の環境研究を振り返ると、環境政策の政策過程分析は意外なほど少ない。本稿の目的は、1964年に制定された新河川法を素材に、水政策の政策過程分析の意義と可能性を論じることにある。政策過程は、誰がどのような根拠や思想に基づいて、どのように政策をつくるのかに焦点を当てる。そこには、官僚組織内部あるいは国会で法律が調整される様を分析する制定過程も含まれるが、制定過程分析よりも長い期間を想定する。政策過程を分析するさい、制定過程ではなくより歴史的に多角的に政策変化を分析するための「鳥の目」と、ある法律案が法律になるまでの一連の制定過程を分析するための「虫の目」のどちらも重要となる。前者は御厨貴が指摘した点、つまり1950年代は建設省主導による新河川法改正のために外堀が埋められる期間であり、河川法以外の水資源関連法の政策効果が重要であった。さらに、新河川法の制定過程を虫の目から分析すると、この解釈は正しいことが分かる。今後、水政策の政策過程分析をもっと増やすことが求められ、鳥の目と虫の目の両方から分析することが重要である。
  • 佐々木 和之
    2015 年 28 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     1994年の河川敷地占用許可準則の改正により、河川空間を万人が等しく利用できる自由使用に限定するのではなく、河川環境との調和や多くの住民が使用する特定目的使用についても占用を認める旨の変更が行われた。以来数度の改正を経て、住民が提起した新たな利用ができる制度の枠組みは増えつつある。 しかしながら制度を生かそうとしても、実際に住民が新たな利用を始めるには、管理者である行政との連繋・調整をいかに行っていくかという課題がある。行政との連繋・調整を補う「繋ぎ役」がいることが望まれる。そこで本稿では住民が提起した新たな利用について、どのように連繋・調整を始めたのか、先行事例である広島・太田川のポップラ・ペアレンツ・クラブ(以下、PPC)、茨城・古河総合公園のパークマスターを対象として調査を行った。
  • 篭橋 一輝
    2015 年 28 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     本稿は、1994年に発生した異常渇水に対する適応策として、讃岐平野で実施された水融通に注目し、その内容の紹介・整理を行うとともに、P. ダスグプタの持続可能な経済発展論の枠組みに依拠しながら、水融通の制度的特質を提示する。讃岐平野の水融通は水資源の再配分論と関連するものの、各利水主体の福祉に不可逆的な損失が発生するのを回避することを強く志向していたことや、人工資本や人的資本、知識ストックを総合的に活用することによって渇水への適応が図られていた点で違いがある。ダスグプタの枠組みを援用して水融通の制度的特質を検討した結果、用水間/水系間の水融通は自然資本の代替を促進する制度変化として考えることができる一方、水系内の水融通は自然資本と他の資本資産の代替を促進する制度変化として解釈できることが明らかとなった。今後、讃岐平野の水融通が持つ制度的な普遍性と特殊性を丹念に明らかにしていくことが必要である。
  • 只友 景士
    2015 年 28 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     本稿は、沖縄県宮古島市における水道事業形成史とその経営管理組織の変遷、地下水の保護管理を目的とした条例の変遷を手懸かりに地下水管理権限の変遷を紹介している。宮古島の水道事業は、米国民政府の統治下ではじまり、水道事業と地下水の保護管理権限を一体として有する上水道組合によって運営されていた。この独特の宮古島のシステムは、総合性を有した適地技術の地下水保護管理システムであるが、復帰後の沖縄振興開発政策の一環で地下ダムが建設されたことにより、地下水保護管理システムの総合性は「個別化」の危機に瀕することとなる。復帰前に形成されたシステムが、沖縄振興開発政策から負の影響を受けたと考えられる。適地技術の形成と社会資本の総合性を担保する財政制度を構築することが必要である。
  • 原田 禎夫
    2015 年 28 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     近年、海岸へのごみの大量漂着が各地で問題となり、生態系への影響も深刻化するなど、「海ごみ問題」は新たな地球環境問題として社会的にも関心が高まりつつある。こうした海ごみの多くは河川からの流出による陸域由来の生活廃棄物が多くを占めることが明らかになっている。しかし、河川の漂着ごみは移動性がきわめて高い上に、発生源が多岐にわたることから、その実態はほとんど明らかになっておらず、抜本的な対策も進んでいない。本研究では、こうした河川の漂着ごみをめぐる最近の研究や日本と韓国の取り組み事例をレビューし、その発生抑制に向けた社会的な仕組みづくりの課題について考察する。
  • 手塚 恵子
    2015 年 28 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     日本の河川の多くは里川であり、灌漑用水、漁業、水運などに用いられてきた。人々が共に川を使うことから、その円滑な使用や川の保全のために、民俗的慣行が形成されてきたが、近代化に伴って自発的な川の利用が激減すると、民俗的慣行もまた廃れていった。本稿では京都府の桂川の水運(筏・高瀬船・観光船)の歴史を概述するとともに、筏や船が安全に川を下るために形成されてきた民俗的慣行(水路、川作)を詳述することによって、桂川流域の人々がもっていたであろう川に対する意識を探る。
  • 濱崎 宏則
    2015 年 28 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     IPCCが2014年11月に第5次評価報告書(AR5)を公表した。本論文はこれをふまえ、気候変動に関する最新の知見をもとに、対応が遅れている発展途上国のうち、とくにメコンデルタ地域における適応策について、そのあり方を考察するものである。IPCCはAR5のなかで、適応策としてガバナンスの強化やよりいっそうの財政的支援の拡充を強調している。しかし一方で、メコン河下流域諸国は貧困からの脱却を目指した経済成長を最重要視した発展戦略を推し進めており、気候変動に対する適応策は先進国や国際機関からの援助に依存しがちである。メコンデルタ地域では、2100年には海面が1メートル以上上昇するという予測も出ていることから、上流に位置するラオス、タイ、カンボジアとの情報交換と緊密な連携が求められる。
  • Hebin Lin, Kentaro Miyanaga, Jeffrey A Thornton
    2015 年 28 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
    The people of the world continue to demand sustainable sources of freshwater for meeting their daily needs, for continuing economic development, and for maintaining a stable and healthful environment. In meeting these needs based on sustaining ecosystem services, the historic sectoral approach to water resources management has led to degraded waterbodies and an inability of governments to meet the demand for safe and secure sources of freshwater. In recent years, water resources management experience has highlighted the need for an integrated management approach that involves all stakeholders, including citizens, scientists and policy-makers, as well as effective organizations that are adequately funded and fully staffed. In this paper, we review some of the key considerations that are fundamental to effective water resources management and demonstrate the necessary and fundamental link between policies, plans and management actions.
論説
  • 曹 穎
    2015 年 28 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     1990年代以降、「生態系サービスへの支払い」(Payment for Environmental Services: PES)の考え方に基づいて各種の生態系サービスを維持・保全するための制度ないし仕組みが、世界各地で導入されるようになってきた。本論文では、日本のPES類似制度として、「あいち森と緑づくり税」と「豊川水源基金」、「矢作川水源基金」を取り上げ、その概要とPESに含まれる三要素((1)費用負担、(2)補償、(3)事業)を用いて、費用負担と補償の適合性および事業の効果を分析した。その結果、「あいち森と緑づくり税」は、生態系サービスに対して新たな財源を徴収した取り組み自体がPES類似の制度と見なすことができた。また、二つの基金は生態系サービス全体を対象としていないが、限定した生態系サービス(水源涵養機能)に対する支払いであり、PES類似の制度と言えた。
研究ノート
  • 藥師寺 恒紀
    2015 年 28 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/11
    ジャーナル フリー
     伊豆諸島にある利島(東京都)には、樹幹流をせき止めて雨水を集める伝統的な集水法があり、「シデ」と呼ばれている。本論では、これと類似した集水法を「シデ様雨水集水法」と定義し、国内外における分布や小規模雨水集水法としての位置づけを明らかにすることを試みた。利島および与論島(鹿児島県)でのフィールド調査、アンケートや文献を用いた国内分布調査、そして文献やインターネットを用いた国外分布調査を実施した。その結果、シデ様雨水集水法は国内外含め、広く西太平洋地域に分布しており、いずれも類似した構造をもっていることが分かった。また、ある程度の降水量があること、それに地下水に乏しいといった条件が、シデ様雨水集水法の存在と大きく関わっていることが明らかになった。
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