水資源・環境研究
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32 巻 , 2 号
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特集 水道法改正と水道事業の今後
特集にあたって
特集論説
  • 改正水道法に基づく事業構造の改編を中心として
    太田 正
    2019 年 32 巻 2 号 p. 35-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    水道事業の広域化と民営化(民間化)は、これまで別々の政策として扱われ、また水道法改正ではもっぱら民営化が問題視され焦点化した。しかし、両者は水道基盤強化策として制度的にパッケージ化され、別々に捉えることは適切ではなくなった。併せて、その推進に向け国と都道府県が主導する仕組みがつくられるなど、市町村公営原則の空洞化が進行している。そこで本稿では、水道事業の根幹に関わる構造的改編が進みつつあるとの認識から、水道事業を支えてきた理念や原則を再確認するとともに、事業特性と事業構造の観点から両者のパッケージ化を分析する。その際、公営企業会計制度の抜本的見直し等に触れ水道基盤強化策との関係に言及するとともに、事業構造の大規模な改編を実行した電気事業と比較し、水道事業との異同を明らかにする。これらを通じ、水道基盤強化策には3つの狙いがあることを示したうえで、「誰一人も取り残さない」(SDGs)持続可能な水道のあり方を展望する。
  • 仲上 健一
    2019 年 32 巻 2 号 p. 44-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    改正水道法(平成30年法律第92号、平成30年12月12日公布)における国会議論と残された課題を検討する、地方自治体の反応の特徴を整理した。改正水道法の最大の論点は、水道事業へのコンセッション方式の導入であり、コミュニケーション方式のメリット・デメリットについて類型化した。水道事業のコンセッション方式の導入において、浜松市における、 「浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書」(平成30年2月)を対象に、コンセッション導入検討プロセスについて検討するとともに、本報告書における結論は、水道事業を経済性のみでの判断を基本にコンセッション方式の優位性が導き出された結論であり、水道利用者の住民や事業者のコンセッション方式の意向が把握されていないことを指摘した。水道法改正にあたっては、問題解決の方法として、水道事業の経営の視点で議論されており、水道事業の全体環境である行政・労働者・地域住民・社会の視点で問題点を検証し、課題解決の道を探る必要がある。
  • 水道実務者の立場から
    堀 真佐司
    2019 年 32 巻 2 号 p. 52-56
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    2018年12月の水道法改正の中身は、民営化でも何でもないのだが、水道民営化反対派と推進派という構図を作って、その構図の元で、国会質問やマスコミでの記事合戦が繰り広げられた。しかし、双方の主張ともに実際の水道事業経営の行き詰まりに解決策を見出すという結果には至っていないというのが実情である。ここでは、水道事業の課題を再確認しつつ、将来を見据えた課題の解決策を提案する。
  • これまでの広域化/ これからの広域化
    梶原 健嗣
    2019 年 32 巻 2 号 p. 57-64
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    2018年の改正水道法では、集権的広域化の推進が目指されている。しかし、そこには3つの疑問がある。「収入減少下における大量更新」という時代を迎えるなかで、広域化は有効な解決策になりうると言われる。しかし、少なからぬ水道事業者が広域化に消極的であり、中央と現場に乖離があることは重要な問題である。  そもそも、改正水道法は給水収益の減少を水道事業の重要課題に位置付けていた。しかし、その理由を人口減少のみに求めている点は誤りである。議論の出発点に疑問がある。  最後に責任水量制の問題がある。責任水量制の下で進められる統廃合は、ダム水源への依存度を過度に高める形になりやすい。しかし、それは安定給水の確保に必ずしも繋がらない。工業用水で検討されているように、水道用水供給事業でも責任水量制の見直しが必要である。そうしてこそ、財政およびリスク管理という点から、合理的な統廃合が可能になってくるはずである。
論説
  • 畑 直樹, 刘 鑫, 田口 夏帆, 金本 良成, 吉田 弦, 瀬山 智博, 戸田 龍樹, 伴 修平
    2019 年 32 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    琵琶湖南湖で過剰繁茂している水草を、メタン発酵により処理することで、バイオマス資源として有効活用することが期待される。メタン発酵処理時に多量に発生する発酵残渣(消化液)には肥料分が多く残存しており、本研究では、水草メタン発酵消化液の培養液利用を目的として、リーフレタス、コマツナの水耕栽培時における消化液の肥料特性について検討した。消化液中に高濃度で含まれるNH4-Nは、硝化リアクター内で硝酸化処理することで、硝酸化前の約0.3%にまで減少し、NO3-Nに変換できた。硝酸化処理後、Feの欠乏対策としてFe-EDTAを追加した消化液希釈液を用いて栽培すると、硝酸化処理やFe-EDTAの追加を行っていない場合と比較して、リーフレタス、コマツナともに、有意に生育が促進された。一方、消化液中のMn濃度が極めて高く、コマツナでは栽培中に顕著なMn過剰障害が発生した。水草メタン発酵消化液は、硝酸化処理後、適濃度に希釈してFe-EDTAを追加することで、水耕栽培の培養液として活用できるものの、オオカナダモの存在によると思われるMn過剰について留意する必要があると考えられた。
研究ノート
  • 田島 正廣
    2019 年 32 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/24
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に伴い渇水も問題になりつつある。来るオリンピックに備え利根川の渇水が危惧されている。その中で利根川の渇水対応を考えた。  新沢嘉芽統・岡本雅美両博士は、著書「利根川の水利(1985)」の中で「見沼・埼玉の2大農業用水が多量の取水を行っている。浄化用水を含めた50年以降の大堰取水の最大117m3/sに対して、見沼・埼玉2用水の最大実績値は、それぞれ44.6m3/s、34.9m3/sで合計すれば大堰の70%に近い(p226)。」と指摘し、「中下流部の既存農業用水の慣行的な取水状態を改善し(p135)、」と述べられ、改善の必要性を述べられている。しかし、その後のその改善について報告されたものは少ない。  筆者は、45年以前に見沼代用水及び葛西用水を散策した経験を踏まえ、2018年見沼代用水を利根大堰・元圦から瓦葺分水工を経て、西縁用水及び東縁用水を踏査した。特に驚愕したことは、この地域の農地(水田)の潰廃、宅地化等により、水田面積の半減(17,096ha→8,900ha)であった。そこで、筆者は、見沼代用水土地改良区が、1994年(平成6)から2016年にかけて度々生じた利根川の渇水に対して農業用水が非常に大きな貢献=節水対応(番水)の経験を積んできたことを知った。実に見沼代用水と埼玉用水で渇水時約20m3/sの無償の節水協力が行われてきたのである。
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