地球温暖化に伴い渇水も問題になりつつある。来るオリンピックに備え利根川の渇水が危惧されている。その中で利根川の渇水対応を考えた。
新沢嘉芽統・岡本雅美両博士は、著書「利根川の水利(1985)」の中で「見沼・埼玉の2大農業用水が多量の取水を行っている。浄化用水を含めた50年以降の大堰取水の最大117m
3/sに対して、見沼・埼玉2用水の最大実績値は、それぞれ44.6m
3/s、34.9m
3/sで合計すれば大堰の70%に近い(p226)。」と指摘し、「中下流部の既存農業用水の慣行的な取水状態を改善し(p135)、」と述べられ、改善の必要性を述べられている。しかし、その後のその改善について報告されたものは少ない。
筆者は、45年以前に見沼代用水及び葛西用水を散策した経験を踏まえ、2018年見沼代用水を利根大堰・元圦から瓦葺分水工を経て、西縁用水及び東縁用水を踏査した。特に驚愕したことは、この地域の農地(水田)の潰廃、宅地化等により、水田面積の半減(17,096ha→8,900ha)であった。そこで、筆者は、見沼代用水土地改良区が、1994年(平成6)から2016年にかけて度々生じた利根川の渇水に対して農業用水が非常に大きな貢献=節水対応(番水)の経験を積んできたことを知った。実に見沼代用水と埼玉用水で渇水時約20m
3/sの無償の節水協力が行われてきたのである。
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