女性とジェンダーの歴史
Online ISSN : 2436-049X
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特集 JWHNシンポジウム:『論点・ジェンダー史学』を活用する
論文
  • ―1872年乳幼児生命保護法とその社会的文脈から―
    中村 勝美
    原稿種別: 論文
    2026 年13 巻 p. 26-40
    発行日: 2026/02/27
    公開日: 2026/03/04
    ジャーナル 認証あり

     イギリスでは20世紀末に至るまで公的保育の供給が著しく限定的であった。本稿は、その「保育の隘路」が生じた形成期に遡り、保育の発展を阻んだ社会的・文化的背景を明らかにする。従来の研究は、自由主義国家特有の家庭への介入忌避や幼児教育と保育の制度的分離にその要因を求めてきたが、これらはイギリス固有の現象とはいえない。

     本稿では、主要史料として、工業化の進展に伴い必要とされた「乳幼児の預け先」をめぐり、乳母の登録・査察を進めようとした1872年乳幼児生命保護法(The Infant Life Protection Act)の審議過程を分析する。北部産業都市における労働者階級の自助意識と相互扶助的な託児慣行がミドルクラスの自由主義的価値観と結びつき、国家介入への抵抗を生じさせた。20世紀初頭、帝国の危機を背景に、「国民の子ども」としてその身体や健康がますます注視されたが、子どもを産み育てる母性の保護が強調される中で、保育への公的支援はいっそう周縁化されたのであった。

書評論文
  • ―『なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学』を中心に―
    奥田 伸子
    原稿種別: 書評論文
    2026 年13 巻 p. 41-55
    発行日: 2026/02/27
    公開日: 2026/03/04
    ジャーナル 認証あり

     2023年のノーベル経済学賞受賞者であるクラウディア・ゴールディンの『なぜ男女の賃金に格差があるのか 女性の生き方の経済学』を中心にイギリス労働史、ジェンダー史の立場から彼女の業績を紹介、コメントする。1990年に出版された19世紀初めから1980年前後までの約150年間の女性労働に関する研究Understanding the Gender Gapを紹介した後、『なぜ男女の賃金に格差があるのか』の内容を「コーホートへの着目」、「静かな革命」、「どん欲な仕事(Greedy work)」の3点を中心に概観する。イギリス史の立場からコーホートに着目する研究の可能性に言及するとともに、20世紀後半における有配偶女性の労働力化や女性の職業意識の変化に疑問を呈する研究を紹介する。女性労働力率のU字型曲線については、下降局面の研究が十分でないことを指摘し、近世における研究との一層の連携の必要性を指摘した。

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