南九州に生育するモウソウチクの有効活用を図ることを目的とし,モウソウチク竹粉によるシイタケ培地としての可能性を,培養期間におけるモウソウチク竹粉の化学的な組成成分の変動とモウソウチク小試片内のシイタケ菌糸の生長を組織学(構成要素)的観点から、タブノキのそれらと比較しながら検討した。得られた結果は以下の通りである。
1.培養期間におけるモウソウチク竹粉培地およびタブノキ木粉培地の重量減少率はほぼ類似した傾向を示す。培養に伴うpHは培養初期に低下するが,3ヵ月目のpHは3.5~3.8となった。
2.培養期間中のモウソウチク竹粉とタブノキ木粉両培地の化学的組成成分の変動に大きな差はない。
3.両培地ともに化学的組成成分は培養開始後2~3ヵ月の間に急激な低下を示すが,この期間はシイタケ菌糸の原基および子実体を形成する時期と一致する。
4.モウソウチク竹粉およびタブノキ木粉培地への米ぬかの添加はシイタケ菌糸の成長を促進させる。
5.モウソウチク培地におけるシイタケ菌の菌糸生長量がタブノキのそれに比較して遅いのは,(1)タブノキに存在する道管の壁孔,柔細胞のような放射方向の組織がモウソウチクの基本組織に存在しないこと,(2)モウソウチクの後生木部の網紋道管の壁孔が小さいこと,(3)厚壁繊維で壁孔が小さいため維管束しょう外への菌糸の拡張ができにくいなど,組織構造的な要因に原因していると考えられる。
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