クロム・銅・ひ素化合物系木材保存剤(CCA)のように接地用途での使用に強い,加圧注入用の薬剤を開発するために,効力的には野外で長年の実績のある無機銅化合物を主要成分として選定することが有効である。しかし,銅を水溶液として使用する際には,鉄製の設備と接触した場合の鉄腐食性の改良及び安定性の向上という課題を解決しなければならない。基礎的な製剤化の試験の結果から無機銅化合物としては炭酸銅のように,鉄腐食性のある陰イオンを含有しない化合物が適している。炭酸銅は水に不溶性であるが,良好な溶解剤として,エタノールアミンとアルキルジアミンの混合溶剤(5:1,以下EA+AA)が最適であることが判明した。銅-アミン製剤で処理されたスギ辺材に対する銅の定着性についてはEA+AAを溶解剤にした製剤がCCA1号とほぼ同等の80%以上の残存率を示したのに対して,アルキルジアミンを溶解剤にした製剤は硫酸銅とほぼ同等の20~30%であった。
銅―EA+AA製剤をJISA9201-1991及びJWPAS12号―1992により防腐・防蟻効力を試験した結果,イエシロアリ及びカワラタケに対しては,銅の濃度が0.3%で性能基準を満したが,オオウズラタケに対しては,銅の濃度が0.7%でも基準を満さなかった。処理材中の銅の残存率は80%以上と考えられるので,硫酸銅水溶液のように銅の流脱による効力低下よりも,オオウズラタケの銅耐性が原因であることを示唆していた。
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