木材保存
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34 巻, 6 号
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解説
研究論文
  • 酒井 温子
    2008 年 34 巻 6 号 p. 261-268
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/12/17
    ジャーナル フリー
    柿渋を表面処理用薬剤として使用した際の防腐効力を評価した。
    従来から使用されてきた標準型の柿渋(A剤), A剤から低分子成分を除去した柿渋(B剤)および除去した低分子物質が溶解した水溶液(C剤)で木材試験体に表面処理を行い, 耐候操作を実施せずに, JIS K 1571に準じた12週間の抗菌操作を実施した。その結果, B剤はC剤よりも防腐効力が若干高かったため, 高分子物質すなわち柿渋タンニンが防腐効力の発現に寄与していると推定された。しかし, A~C剤のいずれで処理をしても, 腐朽による質量減少率はオオウズラタケで14%以上, カワラタケで8%以上であり, 柿渋の持つ木材防腐効力は高いとは言えなかった。
    また, 腐朽後の木材試験体を顕微鏡で観察したところ, オオウズラタケの菌糸は柿渋タンニンの被膜の切れ目からのみ木材内部に侵入していたため, 被膜とその直下の柿渋浸透部は, オオウズラタケに対して抵抗力を持っていると考えられた。一方, カワラタケの菌糸は, 柿渋タンニンの被膜を貫通して木材内部に侵入しており, カワラタケは柿渋タンニンを分解できると判断された。
    以上の考察をふまえて, 柿渋タンニンの重合を促進させ耐水性を短期間で付与する目的でグルタルアルデヒドを, またカワラタケに防腐効力を持つ金属として銅を硫酸銅の形で柿渋(B剤)に添加し, 浸せき処理を2回実施したところ, 耐候操作後の抗菌操作で両菌による質量減少率は4%以下となり防腐効力の向上が確認された。
  • 吉田 誠, 中田 裕治, 金子 哲, 福田 清春
    2008 年 34 巻 6 号 p. 269-280
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/12/17
    ジャーナル フリー
    腐生担子菌 Coprinu cinereus のセルロース分解時に特異的に発現する遺伝子を同定するため, Annealing Control Primer (ACP) システムに基づくディファレンシャルディスプレイ解析を試みた。C. cinereus をグルコースおよびセルロースをそれぞれ単一の炭素源とする培地で培養し, 得られた菌体から全RNA を抽出した。その後, それぞれの全RNA に対して, ACPを用いたRT-PCR を行い, 電気泳動上のバンド出現パターンを比較した。20種のプライマー対を用いて解析を行った結果, 10種のバンドがセルロース培養に特異的に出現した。各培養系における目的遺伝子の発現量を調べるために, 各バンドの塩基配列に特異的なプライマーを設計し, RT-PCR 分析を行った。その結果, 見いだされた全ての遺伝子がセルロース培養でより高い発現量を呈した。見いだされた遺伝子配列をデータベース解析に供したところ, セルロース培養において発現が促進される遺伝子には, 糖代謝関連タンパク質や多糖分解酵素のみならず, シトクロムP450やレトロトランスポゾン関連タンパク質, G タンパク質共役受容体など, 様々な機能を有するタンパク質が存在していた。
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