柿渋を表面処理用薬剤として使用した際の防腐効力を評価した。
従来から使用されてきた標準型の柿渋(A剤), A剤から低分子成分を除去した柿渋(B剤)および除去した低分子物質が溶解した水溶液(C剤)で木材試験体に表面処理を行い, 耐候操作を実施せずに, JIS K 1571に準じた12週間の抗菌操作を実施した。その結果, B剤はC剤よりも防腐効力が若干高かったため, 高分子物質すなわち柿渋タンニンが防腐効力の発現に寄与していると推定された。しかし, A~C剤のいずれで処理をしても, 腐朽による質量減少率はオオウズラタケで14%以上, カワラタケで8%以上であり, 柿渋の持つ木材防腐効力は高いとは言えなかった。
また, 腐朽後の木材試験体を顕微鏡で観察したところ, オオウズラタケの菌糸は柿渋タンニンの被膜の切れ目からのみ木材内部に侵入していたため, 被膜とその直下の柿渋浸透部は, オオウズラタケに対して抵抗力を持っていると考えられた。一方, カワラタケの菌糸は, 柿渋タンニンの被膜を貫通して木材内部に侵入しており, カワラタケは柿渋タンニンを分解できると判断された。
以上の考察をふまえて, 柿渋タンニンの重合を促進させ耐水性を短期間で付与する目的でグルタルアルデヒドを, またカワラタケに防腐効力を持つ金属として銅を硫酸銅の形で柿渋(B剤)に添加し, 浸せき処理を2回実施したところ, 耐候操作後の抗菌操作で両菌による質量減少率は4%以下となり防腐効力の向上が確認された。
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