窒素雰囲気下で熱処理されたスギ辺材杭について, JIS K 1571: 2010にほぼ準拠した野外防腐性能試験を, 奈良県森林技術センター明日香実験林において実施した。
設置後8年の間に, 無処理杭, 180°Cおよび200°C処理杭については, 腐朽とヤマトシロアリの食害により地際部の平均被害度が2.5を越え, 耐用年数を迎えた。一方, 220°Cおよび240°C処理杭では生物による被害は軽微であり, 8年経過時の地際部の平均被害度は1以下であった。また, 杭試験体の地際部を光学顕微鏡で観察したところ, 200°C処理杭では内部まで担子菌とバクテリアによる分解が進行していたが, 220°Cおよび240°C処理杭では, 表面付近でバクテリアによる分解が確認されただけであった。
一方, 杭試験体の頂部については, 熱処理の有無にかかわらず虫害と思われる小さな孔が多数確認された。また, 一部の180°C処理杭の地上部は, ヤマトシロアリの生成物で厚く覆われたが, 200°C, 220°Cおよび240°C処理杭にはそれは見られなかった。
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