木造建築物の構造部材の劣化状況と部材周囲の温湿度環境とのかかわりを検討するため, 寺院本堂の小屋, 床上, 床下の温湿度測定および部材の含水率測定および劣化診断を行った。温湿度測定より, 小屋は日射の影響を受け, 春期から夏期にかけて高温になりやすく, 床上は軒下とほぼ同様であった。床下においては, 西北, 中央および東北部は, 温度に対して相対湿度が高い傾向がみられ, その状態が続きやすいことがわかった。床下の南西, 西北付近で柱材脚部の含水率が高かった。また, 東部, 南部でも横方向からの吹き込みなどにより, 含水率が高い部材があった。床下柱材脚部で腐朽やシロアリなどの生物被害, 目やせなどが観察された。傷みが観察された材は含水率が高い傾向がみられた。木造建築物を長期間にわたって使用していくためには, 部材周囲の環境を整え, 部材の耐久性を維持していくことが求められる。
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