富山県魚津港沿岸地帯は,海水準の上昇により一旦海水下となった地層に砂礫,泥炭等が堆積して,再度陸地となっている。ここで掘り出された海水浸漬履歴のあるスギ(
Cryptomeria japonica)埋木(魚津埋木,
14C年代:1361±33~1481±31 yBP)について化学的な分析を行った。木質化学成分は,現生木とほぼ同等であった。精油に関しては,続成作用により部分的に変化はしているが,現生木中の精油成分を全て含有していた。よって,魚津埋木は熟成の度合いが低く,また有機成分は海水の影響をほとんど受けていないと考えられる。灰分の電界放出形電子顕微鏡/エネルギー分散型X 線分光法(FE-SEM/EDX)による元素分析では,ナトリウムが検出され,魚津埋木の海水浸漬履歴を示唆するものと考えられる。同位体年代と埋木特有のテルペン類から計算した熟成度との関係を内陸性スギ埋木と比較した結果,魚津埋木は山口県産阿武埋木(
14C年代:2950±70 yBP)および福井県産若狭埋木(
14C年代:6180±60 yBP)との間によい相関関係を示した。
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