木材学会誌
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51 巻, 3 号
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一般論文
  • 根材を使った幹の成熟材部ミクロフィブリル傾角の予測可能性
    福永 大介, 松村 順司, 小田 一幸
    2005 年 51 巻 3 号 p. 141-145
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    ヒノキ根材と幹材において, 晩材仮道管二次壁中層のミクロフィブリル傾角 (MFA) の放射方向変動と樹高方向および根端方向の変動を調べた。胸高部位では20年輪目前後でMFAは安定した。地上高が高くなるとMFAの安定時期は早まり, 8m部位では10年輪目前後で安定した。しかし, MFAの安定値には地上高による差異がなかった。根材では10年輪目前後でMFAは安定し, 基部からの距離や径の大きさに関わらず, 安定値や安定時期に大差は見られなかった。採取が容易な基部から根端側へ20cm部位の根材を使って, 幹の成熟材部の予測可能性を検討した結果, 根材の安定値と幹材の安定値との間に1%レベルで有意な相関関係が認められた。順位相関もまた1%レベルで有意であった。根材の18~20年輪目のMFAと幹の安定値との間には0.1%レベルで有意な相関関係が認められたが, 若い年輪では有意な相関関係は認められず, 早期予測は困難であった。一方, 直径が40mm以上の根材の最外部から幹の成熟材部MFAが予測可能であることが示唆された。
  • ケヤキおよびアカマツの静的曲げ強度特性および衝撃曲げ強さ
    平嶋 義彦, 杉原 未奈, 佐々木 康寿, 安藤 幸世, 山崎 真理子
    2005 年 51 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    建築解体材より採取した古材の無欠点小試片を用いた試験から静的曲げ強さ (MOR), 曲げヤング係数 (MOE), 衝撃曲げ強さを求めこれを新材の値と比較した。供試古材は建築後255年経過したケヤキ, 115年 (静的曲げ試験のみ), 270年および290年経過したアカマツである。新材と比較対照古材の密度の分布を合致させたうえでそれぞれの強度特性を比較するためモンテカルロシミュレーションを行った。シミュレーションで得られた新材の値と古材の値との比較から次のことが明らかになった。MOR, MOEはケヤキ古材では新材よりそれぞれ16.3%および14.8%減少し, アカマツ115年経過材では有意差はなく, 270年および290年経過したアカマツではいずれも増加した。増加率はそれぞれMOR : 17.3, 10.8%, MOE : 42.1, 26.8%であった。衝撃曲げ強さはケヤキ, アカマツとも古材は新材より減少した。その減少率はケヤキ : 15.2%, アカマツ270年および290年経過材 : 27.1%, 22.1%であった。静的曲げ試験における比例限度応力の最大応力に対する比を古材と新材で比較すると, ケヤキでは有意差はなく, アカマツでは古材の値は増加しその増加率は14.1~31.9%であった。本研究の一連の実験結果を眺めるとアカマツ古材は新材に比べて強度増加を示すもの (圧縮, 静的曲げ, せん断) もあるが, 同時に脆性的性質を帯びているように見受けられ, この性質は, 破断面の長手方向に及ぶ長さの減少 (引張), 比例限度比の増加 (圧縮, 静的曲げ) および強度減少 (引張, 衝撃曲げ) などとして現れていると考えられる。
  • 宇高 英二, 古野 毅
    2005 年 51 巻 3 号 p. 153-158
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    密閉加熱処理において, 処理温度, 木材の含水率および処理時間は, 圧縮変形の回復抑制効果に重要な因子であると考えられる。そこで, これらの3条件と冶具内部の最大圧力や圧力積分値との関係を調べ, さらに最大圧力および圧力積分値と圧縮変形の回復抑制の関係も検討した。
    その結果, 次の知見が得られた。1) 各処理温度とも, 木材の含水率が同じであれば, 処理時間が増加しても冶具内部の最大圧力はほぼ同じ値を示した。2) すべての処理温度において, 処理時間が長いほど圧力積分値は増加した。3) 処理温度120℃では, 木材の含水率が増加しても冶具内部の最大圧力がほぼ同じ値になり, 木材の含水率が高いほど回復度が低下した。一方, 処理温度160℃および200℃では, 冶具内部の最大圧力が高いほど回復度が低下した。4) 処理温度120℃では, 圧力積分値が増加しても回復度はほぼ同じ値を示した。処理温度160℃と200℃では, 圧力積分値の増加とともに, 回復度が低下した。
  • 足立 幸司, 井上 雅文, 川井 秀一
    2005 年 51 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    直径500mmの薬液注入専用ロールプレス機を用い, 生材への薬液注入処理を試みた。試験片として, スギ (Cryptomeria japonica D. Don) 辺材, スプルース (Picea spp.) 心材およびベイマツ (Pseudotsuga menziesii Franco) 心材を用いた。
    スギ生材の場合, ロールプレス液中圧縮法を用いて薬液注入を行うことで, 気乾材に比較して注入量は増大した。また, 圧縮率45%における厚さ10mmと20mmの試験片の注入量および繊維方向の注入量分布はほぼ等しかった。しかし, 木口断面での薬液の分布は厚さ10mm材ではほぼ均一だったのに対し, 厚さ20mm材では中央部が無処理のままであった。繰り返し処理によって, 注入量は増大し, 試験片中央部への薬液浸透量は増加した。
    スプルースおよびベイマツ生材の場合, 繰り返し処理によって気乾材と比較して注入量が大幅に増加した。気乾材と比較して閉塞壁孔が少ないこと, 細胞内腔が湿潤して液体浸透性が向上していること, 湿潤した細胞壁によって圧縮変形の回復が迅速であることが理由として考えられた。
    また, スギ生材レース単板への薬液注入処理を試みた。結果として, ソード単板より短時間の浸せきによって同等以上の注入量が得られ, 圧縮処理単板を用いて作製した単板積層材 (LVL) においても強度低下は生じなかった。
  • キャピラリ流動試験による流動特性の把握
    今西 祐志, 相馬 奈歩, 竹内 和敏, 杉野 秀明, 金山 公三
    2005 年 51 巻 3 号 p. 166-171
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    木粉比率の高い木粉-プラスチック混合物の流動特性を把握するため, 様々な寸法のキャピラリを用いた流動試験を行った。混合物は初め, 静的な状態で外力に抵抗し, 流動が始まって連続的な流動状態になると, 巨視的には動的平衡状態と考えられる挙動を示した。静的な状態から動的な状態に移行する際には, 木粉比率が高いことに起因すると思われる降伏荷重の発現が認められた。降伏荷重と動的平衡荷重とは高い相関関係にあった。キャピラリから押し出されて得られた成形体のかさ密度および表面性状は, キャピラリ寸法によって大きく異なった。表面性状については, プラスチック成形におけるメルトフラクチャと類似の成形不良の発現が確認された。
  • キャピラリ流動試験による流動特性の解析と評価
    今西 祐志, 相馬 奈歩, 竹内 和敏, 杉野 秀明, 金山 公三
    2005 年 51 巻 3 号 p. 172-179
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    木粉-プラスチック混合物についてキャピラリ流動試験を行い, おおむね定常状態と考えられる流動挙動について流動特性の解析及び評価を試みた。見かけの粘性係数および管壁におけるすべりを解析により求め, 流速分布および流動状態の詳細について考察を行った。
    その結果, 木粉-プラスチック混合物の流動は, 顕著な非ニュートン流動と管壁におけるすべりが複合したものであることが推察された。流れ全体のうち, 管壁におけるすべりに由来するものの割合が大きく, その割合は, キャピラリ径が小さくなるほど, せん断力が大きくなるほど大きくなる傾向が示唆された。
  • 蒸留木酢液における構成成分の規則性と再現性の研究
    東野 孝明, 柴田 晃, 谷田貝 光克
    2005 年 51 巻 3 号 p. 180-188
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    一般市場に流通している各種木酢液はその製造方法・原材料の種類により品質には大きなばらつきがある。一方, 市場においては安全性および有効性が保証された木酢液が求められており, それらを保証する公的製品規格が必要とされている。この品質規格における構成成分の定量規格がない現状をふまえて, 本研究では, 蒸留によって製造管理された木酢液の構成成分の規則性と再現性を調べた。そして蒸留による製造方法が木酢液構成成分の安定規格化の可能性を持ち, それにしたがって公的品質規格策定の可能性について検討した。研究対象は551検体の蒸留木酢液とした。蒸留木酢液を構成している成分の中から15成分を選び出し, 含有率を定量分析し規則性と再現性を調べた。その結果, 次のことが明らかとなった。1) 15成分中, 13成分の含有率の偏差は正規分布をしていた。2) 酢酸濃度の変化と成分含有率の変化には規則性がみられる。3) 酢酸濃度が高くなれば構成成分の含有率の偏差が小さくなる。4) 各成分の含有率の偏差が, 一般的に管理値の目安とされる±3σの範囲に, 15成分全てが収まっている検体が93.6%であった。又, 原料木酢液中の15成分についても分析をおこない, 蒸留木酢液と偏差を比較した。その結果, 蒸留木酢液の偏差は, 原料木酢液の約1/4になっていた。よって, 蒸留によって製造管理された蒸留木酢液は, 各構成成分の定量により公的品質規格が策定されうることが示唆された。
ノート
  • 大谷 忠, 久保島 吉貴, 松下 清
    2005 年 51 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    圧縮率を変化させた圧縮木材における引張強度特性を調べ, 引張強度に及ぼす圧縮量の影響と破断形態との関係について検討した。木材の圧縮に伴う空隙量の変化に注目して, 圧縮木材の密度, 弾性係数および引張強度の予測を複合則を用いて試みた結果, 密度および弾性係数においてはある程度予測が可能であり, 引張強度においては高い圧縮率の条件では適用できなかった。圧縮木材の引張特性における弾性係数は, 圧縮量の増加に伴い指数関数的に増加したのに対して, 引張強度は圧縮率が50%以上において同程度となり, 弾性係数の変化と対応しなかった。破断形態の観察結果から, 圧縮量が50%を境にして生じるセル壁部分の引張強度の低下は, 圧縮木材を形成する早材および晩材におけるセルの圧縮変形の増大に伴い, 脆性化の重畳作用が進行したためであることを考察した。
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