前報によると,R方向のMSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響は,定量的に顕著であったが,定性的には大きな変化を示さなかった。本報告では,ヒノキ材についてL方向のMSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響を明らかにし,R方向と比較した。
得られた結果を以下に要約する。
1. ハーフサイクル負荷のAd(吸湿時負荷)及びDa(脱湿時負荷)過程を繰り返すとき,脱リグニン処理が進むほど,両過程でトータルコンプライアンス(
JT)がほぼ同程度に増加し,またセットが増加した。
2. 含水率サイクル下の連続負荷条件ADでは,強度に脱リグニン処理した試験片の
JT は無処理の約1.7倍となった。また,脱リグニン処理を行っても従来のMSクリープと同様の挙動が観察された。
3. MSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響は,R方向では,強度処理試験片で5サイクル後の
JT が無処理の5.4倍に達したのに対して,L方向では1.7倍と小さい。このような相違は,R方向ではマトリックスのMSクリープが強く作用したのに対し,L方向ではマトリックスとミクロフィブリルの相互作用として,
JT の増加が抑制されたものと考えられる。
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