木材学会誌
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52 巻, 4 号
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総説
一般論文
  • 津島 俊治, 古賀 信也, 小田 一幸, 白石 進
    2006 年 52 巻 4 号 p. 196-205
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    スギさし木品種の成長と木材性質に及ぼす植栽密度の影響を明らかにするため,1500本/ha,3000本/ha,5000本/haの3段階の密度で植栽された6品種54個体(MuPS分析により品種同定したイワオ,ヒノデ,ヤマグチ,ヤイチ,シャカイン,ヤブクグリ)を対象に実験を行い,以下の結果を得た。
    測定した成長と木材性質において,植栽密度の影響は品種の影響に比べて小さかった。肥大成長と材積成長は,植栽密度の高い試験区ほど小さかった。植栽密度の高い試験区ほど成熟材の容積密度,心材のL値,丸太の動的ヤング率,縦圧縮強さおよび曲げヤング率がわずかに高く,逆に心材および辺材の生材含水率と心材のa値が低い傾向を示した。ヤブクグリと他の5品種では力学的性質に及ぼす植栽密度の影響が異なった。以上のことから,スギの種々の木材性質は,品種すなわち遺伝的要因に強く影響されるが,植栽密度の影響もわずかながら存在することが明らかとなった。
  • 繊維方向のMSクリープ
    張 文博, 徳本 守彦, 武田 孝志, 安江 恒
    2006 年 52 巻 4 号 p. 206-214
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    前報によると,R方向のMSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響は,定量的に顕著であったが,定性的には大きな変化を示さなかった。本報告では,ヒノキ材についてL方向のMSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響を明らかにし,R方向と比較した。
    得られた結果を以下に要約する。
    1. ハーフサイクル負荷のAd(吸湿時負荷)及びDa(脱湿時負荷)過程を繰り返すとき,脱リグニン処理が進むほど,両過程でトータルコンプライアンス(JT)がほぼ同程度に増加し,またセットが増加した。
    2. 含水率サイクル下の連続負荷条件ADでは,強度に脱リグニン処理した試験片のJT は無処理の約1.7倍となった。また,脱リグニン処理を行っても従来のMSクリープと同様の挙動が観察された。
    3. MSクリープに及ぼす脱リグニン処理の影響は,R方向では,強度処理試験片で5サイクル後のJT が無処理の5.4倍に達したのに対して,L方向では1.7倍と小さい。このような相違は,R方向ではマトリックスのMSクリープが強く作用したのに対し,L方向ではマトリックスとミクロフィブリルの相互作用として,JT の増加が抑制されたものと考えられる。
  • 樋田 淳平, 田中 裕也, 山田 雅章, 滝 欽二, 吉田 弥明
    2006 年 52 巻 4 号 p. 215-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    2001~2002年に新築された木質系住宅において,カルボニル化合物気中濃度の実態調査を行った。3種類の住宅工法と気中濃度の関連性は明確には認められなかった。ホルムアルデヒド気中濃度はなりゆきで平均0.118 ppmであったが,28℃,50%RHに温湿度補正後は0.084 ppmで厚生労働省指針値とほぼ変わらない値であった。指針値を超過する気中濃度を示した住宅は全体の約1/2 であり,木質材料使用量による影響は明確にはみられなかった。アセトアルデヒド気中濃度はなりゆきで平均0.171 ppmで,指針値を6倍弱上回っており,木質材料使用量が増加するに従い,アセトアルデヒド濃度が低下する傾向が顕著であった。
  • 測定方法の確立と細孔制御の可能性
    秋友 水季, 鈴木 里佳, 石丸 優, 飯田 生穂, 古田 裕三
    2006 年 52 巻 4 号 p. 228-234
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    木炭・竹炭の細孔径分布について信頼性の高い測定方法を確立するため,氷水温度(273 K)での二酸化炭素の吸着実験を行った。得られた吸着等温線をHK法(Horvath-Kawazoe法)により解析し,細孔径分布を得た。本法は従来の方法よりも高温測定であるため,吸着平衡に要する時間が短縮され,再現性の高い細孔径分布が得られた。木炭・竹炭のミクロ細孔径分布のピークは0.5 nm付近に存在し,これらはグラファイト構造に類似の層状構造の乱れに起因する細孔と考えられた。この結果と,木炭・竹炭にはメソ孔は存在しないとの既往の研究結果から,これらのミクロ孔が,相対湿度域40~60%における炭の吸湿性の著しい増大に関与していることが明らかとなった。
    さらに,木炭・竹炭のミクロ細孔構造制御の可能性について検討するため,ポリエチレングリコール(PEG)処理後に炭化した試料の細孔径分布を同様の方法で求めたところ,わずかながら細孔の拡大が認められた。
  • 澤田 幸伸, 安藤 恵介, 服部 順昭, 田村 靖夫
    2006 年 52 巻 4 号 p. 235-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    木質材料に使われる主な接着剤5種類〔ユリア樹脂接着剤(UF),メラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤(MUF),フェノール樹脂接着剤(PF),レゾルシノール樹脂接着剤(PRF),水性高分子イソシアネート系接着剤(API)〕のインベントリ分析を行った。接着剤 1 kgの製造に必要な資源の調達から原料の製造と輸送,接着剤製造までのエネルギー消費量,CO2 排出量,NOx排出量,SOx排出量を算出した。その結果,MUFとPRFは共にエネルギー消費量とSOx排出量が最も多く,UFのそれらは両者の57~67%と最も少なくなることが分かった。APIとPFは両者の中間的な値となった。APIのCO2 とNOxの排出量は,最も少ないUFの6倍以上と,顕著に多かった。
    今回得られた重量単位による接着剤の環境負荷量は,これによって接着剤の環境負荷に対する優劣を判断するのではなく,木質材料の機能単位を揃えた上での判断に供するためのものである。
  • 川添 正伸, 土屋 幸敏, 森 拓郎, 小松 幸平
    2006 年 52 巻 4 号 p. 221-227
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    ドリフトピン接合部の繊維方向加力に対して脆性的な破壊を示すLVLに靭性を付与することを目的として,繊維直交単板(クロス単板)をLVLに積層した場合の靭性付与効果を検討した。試験は,通常のLVLとLVLにクロス単板を積層した2種類のLVLの計3種類で行い,ドリフトピン接合部のせん断試験を3種類の負荷速度で行った。そして,試験結果の完全弾塑性近似を行い,LVLの面圧性能を評価した。その結果,LVLの靭性はクロス単板を積層することで飛躍的に向上し,塑性率(終局変位/降伏変位)は16~23と非常に高くなり,エネルギー吸収量も通常のLVLの24~35倍となった。これは,LVLに積層したクロス単板の木材繊維がドリフトピンのめり込みに抵抗した結果であった。また,クロス単板の積層比率を増加させることでLVLの初期剛性は低下し,降伏変位量は増加した。終局耐力については負荷速度の速い条件で増加する傾向を示した。
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