木材学会誌
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52 巻, 5 号
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総説
  • 野田 真人
    2006 年 52 巻 5 号 p. 271-276
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    日本の年輪年代学および年輪気候学,環境学などの年輪解析研究に関する現状と展望について紹介した。年輪解析の研究に共通して用いられる年輪年代学の手法の適用は,日本の気候が温暖な上に降水量も多いので困難だと考えられた時期があった。しかし近年になり,考古学の年代推定で新しい年代観を提案するなど,同法に対する期待が高まっている。日本の年輪解析研究の確立には,時系列年輪幅から加齢にともなう傾向変動の除去および環境因子にともなう微弱変動の算出に適した標準化関数の究明が不可欠である。併せて,展望として次のような事例を提案した。1)提案されている関数型の比較研究,2)同法で得られた年代推定試料のクロスチェック体制の構築,3)肥大成長に与える環境因子の寄与率の検証,4)年輪円盤試料および計測値,生立木の場所などを蓄積するためのデータベースの構築。
一般論文
  • 津島 俊治, 藤岡 良江, 小田 一幸, 松村 順司, 白石 進
    2006 年 52 巻 5 号 p. 277-284
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    ヒノキの実生林とさし木林における木材性質のバラツキを把握するために,実生ヒノキ3林分60個体およびナンゴウヒ2林分40個体を用いて実験し,肥大成長,容積密度,生材含水率,心材色,仮道管長,丸太の動的ヤング率および力学的性質の林分内変動と林分間差を検討し,以下の結果を得た。
    1)肥大成長の林分内変動は,さし木林が実生林よりも小さかった。
    2)さし木林の胸高部位の容積密度,辺材の生材含水率,仮道管長および力学的性質の林分内変動は実生林よりも明らかに小さく,心材含水率,心材色,丸太動的ヤング率はやや小さい程度であった。
    3)胸高の心材色および仮道管長,樹幹高さ方向の丸太動的ヤング率の変動パターンが,実生林とさし木林で顕著に異なった。
    以上のことから,ヒノキさし木林の木材性質の林分内変動は,実生林に比べ小さいことが判明した。
  • 中谷 丈史, 石丸 優, 飯田 生穂, 古田 裕三
    2006 年 52 巻 5 号 p. 285-292
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    木材の主要3構成成分に対する各種有機液体の親和性について新たな知見を得ることを目的として,木材パルプ,ホロセルロースおよび木粉の乾燥および膨潤試料について,6種類の有機液体すなわちメタノール,エタノール,酢酸メチル,酢酸エチル,アセトンおよびジメチルスルホキシドの希薄ベンゼン溶液からの吸着性を比較して検討した。その結果,供試液体の中で,エタノール,ジメチルスルホキシドは乾燥リグニンに対して強い親和性を示した。また,乾燥試料と膨潤試料の吸着性の比較から,乾燥リグニンには乾燥セルロースやヘミセルロースと比較して,吸着サイトの新生にあまり大きなエネルギーを必要とせずに液体分子が近接できる吸着サイトがより多く存在していること,分子容の小さなメタノールの吸着には,乾燥リグニンだけでなく,セルロース,ヘミセルロースにおいても,吸着サイトの新生にあまりエネルギーを必要とせずに近接可能なサイトが存在していることが示唆された。
  • 井道 裕史, 長尾 博文, 加藤 英雄
    2006 年 52 巻 5 号 p. 293-302
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    JIS治具,実大治具によるいす型せん断試験および3点曲げ,5点曲げ方式による水平せん断試験を行い,各方式によるせん断強度の関係を把握して,試験の容易ないす型方式により曲げ方式のせん断強度を誘導した。結果は以下の通りである。3点曲げ方式ではすべての樹種においてせん断破壊を生じる確率は非常に小さかった。5点曲げ方式では,せん断破壊の確率は若干上昇したものの半数程度であった。曲げ方式では,ベイマツ,ベイツガともに5点曲げ方式のほうが3点曲げ方式よりも下限値で4~5割程度せん断強度が大きかった。いす型方式,曲げ方式のせん断強度から両者の関係式を誘導したところ,実測値と比較的よく一致しており,いす型方式で曲げ方式のせん断強度を予測できた。また,せん断強度を非破壊的に推定するための一例として,3点曲げ方式での破壊荷重および破壊形態を非破壊的パラメータを用いて推定したところ,実測値と比較的よく一致した。
  • ラス下地材を用いたモルタル壁のせん断変形挙動の解析
    宮村 雅史, 太田 正光, 佐藤 雅俊
    2006 年 52 巻 5 号 p. 303-311
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    木造住宅に用いられるラス下地モルタル外壁は,大きなせん断変形により破損・脱落することが知られているが,これらに対応した研究は少ない。そこで,本研究では,在来軸組構法住宅のラス下地板を下地としたモルタル外壁を対象として,壁を構成する要素ごとの変形挙動を明らかにすることにより,その強度性能を説明することを試みた。まず,モルタル外壁において,ラス下地板とモルタル間にあるタッカー釘の各接合点の相対変位,応力,モーメント抵抗について理論的に解析した。さらに解析結果を検証する為,モルタル外壁の水平せん断試験を実施し,変形追従性,強度性能,破壊性状について,結果を比較検討した。その結果,本報告で提案する解析方法により,接合部の実験結果からモルタル外壁の変形挙動や発生する応力等を推定することが可能となった。また,モルタル外壁は,モルタルに損傷が発生するまでは,壁の水平耐力の向上に大きく寄与することが明らかとなった。
ノート
  • 平嶋 義彦, 田原 賢
    2006 年 52 巻 5 号 p. 312-319
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    9 mm厚合板を張った軸組と断面45 mm×90 mmの筋かいを挿入した軸組の水平せん断試験を行いそれぞれの持つ構造特性を実験的に明らかにした。破壊状況は合板張り軸組では合板を止めている釘の抜けだしだけが観察されたが,筋かい入り軸組では筋かいの座屈破壊をはじめとして多様なものが出現し複雑な状況を呈した。荷重-せん断変形角曲線の包絡線で剛性,最大荷重,最大荷重時変形角,最大荷重の80%相当点の荷重および変形角について比較するといずれも筋かい入り軸組が合板張り軸組よりも低い値を示すことが明らかになった。得られた倍率は合板張り軸組:2.84,筋かい入り軸組:1.91で,旧来の方法で算定したものに比べていずれも低い値であった。倍率算定に用いる基準せん断耐力は,合板張り軸組では降伏点荷重,筋かい入り軸組では構造特性係数に関連する因子により決定された。等価粘性減衰定数は合板張り軸組:0.139,筋かい入り軸組:0.104であった。引張筋かいが負担する力と圧縮筋かいが負担する力の比は0.719であった。
  • 金城 一彦, 宮城 健
    2006 年 52 巻 5 号 p. 320-326
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/28
    ジャーナル フリー
    沖縄県で採集したニオウシメジ(Tricholoma giganteum Massee)菌株を用いて,菌糸の栄養要求性,培地材料,子実体収量などについて検討した。その結果,合成培地ではHennerberg培地,天然培地ではGCMY培地での菌糸体生長が優れていた。ニオウシメジ菌糸体の生育最適温度は30℃,pH 5 であった。炭素源,窒素源として可溶性デンプン,マンノース,硝酸カリウムで生長が優れていた。木粉培地(フスマ添加)ではハンノキの生長が最も優れ,逆にモクタチバナでは劣った。最も子実体収量の多かったのが菌株TG-12であった。
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