木材学会誌
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53 巻, 4 号
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総説
  • 奥村 正悟, 藤原 裕子
    2007 年 53 巻 4 号 p. 173-179
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    木材を切削加工したときの表面の粗さは,加工の良否や製品の品質を評価する重要な指標の一つであるため古くから研究されてきているが,木材の加工面には加工に基づく粗さに加えて木材の細胞構造に由来する粗さが存在するため,粗さの測定や評価はそれほど簡単ではない。ここでは,最近大幅に改訂された粗さに関する規格の概要を紹介するとともに,木材加工面の粗さ評価に関する最近10年ほどの研究を,信号処理を含めた粗さの計測法,加工粗さの評価,触覚に対応する粗さ評価などの観点から整理して紹介する。
一般論文
  • 土屋 竜太, 古川 郁夫
    2007 年 53 巻 4 号 p. 180-186
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    樹高13 m,樹齢35年のコシアブラの単一樹幹を用いて,断面高別に平均道管要素長(VEL),孔圏部の平均道管径(VDe),年輪中央部の平均道管径(VD),横断面 1 mm2 における道管の数(VNb),平均放射組織面積(RA),平均放射組織高さ(RH),平均放射組織幅(RW),接線断面 1 mm2 における放射組織の数(RNb)の髄からの年輪番号の増大に伴う変動パターンを断面高別に7枚の円板で調べ,ゴンペルツ関数をあてはめて求めた樹高成長関数をもとに各年輪形成時の樹幹先端からの距離を推定することで,髄からの年輪数と樹幹先端からの距離の増大に伴う各要素の変動パターンを解析した。その結果,VEL,VDでは樹幹先端からの距離が近似する場合に断面高ごとの値がほぼ同じであったのに対して,RA,RH,RW,RNbでは,ある年輪以降で年輪番号が同じである場合に断面高ごとの値がほぼ同じであった。これらのことから,VEL. VDは樹幹先端からの影響を,RA,RH,RWは形成層齢の影響をそれぞれ強く受けていることが示唆された。
  • イソシアネート系接着剤(EMDI)がボード材質およびパンクに及ぼす影響
    吹野 信, 堀江 秀夫, 下久根 宣樹, 小川 尚久
    2007 年 53 巻 4 号 p. 187-193
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    接着剤にイソシアネート系樹脂(EMDI)を用いた小型のストランド・パーティクルボード(SPB)を製造した。接着剤添加率(3,6%),表層マット含水率(5,10,15,20%),熱圧温度(170,200,230℃)がSPB材質に及ぼす影響を検討した。また,接着剤添加率(10%),表層マット含水率(20%),熱圧温度(170,200,230℃)がSPBのパンクに及ぼす影響を検討した。得られた結果は以下のとおりである。
    1)熱圧温度230℃,接着剤添加率6%,表層マット含水率15%の条件で最も優れた材質のSPBが得られ,その材質は,ボード密度0.62 g/cm3,はく離強さ0.93 MPa,曲げ強さ43.1 MPa,吸水厚さ膨張率1.9%であった。
    2)表層マット含水率20%では,製造ボードのすべてで表層ストランド部分にパンクを生じた。
    3)EMDIとマット中の水分の反応により発生する二酸化炭素が熱圧時のパンクおよびボード材質に影響を及ぼす可能性が考えられた。
  • 田中 潤治, 大井 洋
    2007 年 53 巻 4 号 p. 194-200
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    修正クラフト・キノン蒸解において,広葉樹材パルプの収率を向上させる最適化条件について検討した。そのために,まず実験室レベルで修正クラフト蒸解法を再現できる研究用の木材蒸解装置を開発した。これを用いて,修正蒸解工程に 1,4-ジヒドロ-9,10-ジヒドロキシアントラセンのナトリウム塩(SAQ)を添加する方法について検討したところ,蒸解途中で一部の黒液を白液と交換することによってパルプのカッパー価を下げることができること,SAQのパルプ収率向上効果は,SAQを蒸解初期に一括して添加する場合に分割添加する場合よりも大きいこと,この効果は,蒸解初期の白液添加比率を30~70%とする条件で白液を分割して添加する場合には,白液を一括して添加する場合と同等以上であること,また,蒸解途中に抽出される黒液に含まれるアントラキノンの量は,全添加量のわずか5%にすぎないことが明らかになった。
ノート
  • 木材構成成分の熱膨張,及び熱分解の影響
    王 悦, 駒 さや香, 飯田 生穂
    2007 年 53 巻 4 号 p. 201-205
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    全乾材の急冷処理による流動量,ならびに温度80-180℃,処理時間0-480分範囲の計30条件で熱水処理した材の急冷処理による流動量を求め,コントロール材の流動量と比較し,不安定状態の発生に及ぼす熱膨張,熱分解の影響を調べた。得られた結果は,以下のとおりである。1)全乾材の急冷処理による不安定状態の発生は認められなかった。これは,構成成分間の熱膨張の相違が不安定状態の発生要因でないことを示す。2)不安定化の程度は,熱水処理温度80℃から120℃までは,処理時間に関係なく一定の値を示す。120℃以上の熱水温度になると,短時間の処理では120℃以下の場合と等しい値であるが,長時間の処理で不安定化の程度は減少した。3)全熱水処理条件でリグニン量の変化は認められなかったが,ホロセルロース量は120℃以上の長時間の熱水処理で顕著に減少した。不安定状態の発生程度とホロセルロース含有量及び処理材の吸湿平衡含水率との間には,密接な関係を認め,ホロセルロース含有量の低下に伴う平衡含水率の変化は不安定化に関与していることが示された。
  • 伊神 裕司, 村田 光司, 松村 ゆかり
    2007 年 53 巻 4 号 p. 206-213
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    スギ(Cryptomeria japonica D. Don)中丸太一般材の挽き材試験を行い,丸太の外観的形質と鋸断面上の節の有無の関係を検討した。丸太表面を4つの丸太材面に分割した場合,末口における樹心からの距離が大きい丸太材面ほど無節鋸断面出現率が高くなる傾向が見られた。1番玉以外の丸太では,元口における樹心からの距離が大きい丸太材面ほど無節鋸断面出現率が高くなる傾向が見られたが,1番玉ではそうした傾向は見られなかった。最大曲がりの位置から丸太材面までの距離と無節鋸断面出現率の間には比例関係は見られなかった。末口における樹心からの距離が最も大きい丸太材面を挽き材を開始する第1丸太材面とした場合,最大曲がりの位置を鉛直方向に配置する一般的な製材方法と比較して,第1丸太材面における無節鋸断面出現率が10%近く向上することが示された。これにより,丸太の外観的形質の中で末口における樹心位置は,鋸断面に節の出現しにくい丸太材面を推測する上で最も有効な指標であると考えられた。
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