トドマツ水食い部および正常部のそれぞれについて加熱乾燥を受けたものと受けていないもので静的曲げ特性,衝撃曲げ特性並びに加熱乾燥による収縮変形を比較検討した。試験体には北海道産55年生トドマツ(
Abies sachalinensis Mast.)造林木を用いた。静的曲げ試験体および衝撃曲げ試験体として,7 mm(R)×7 mm(T)×115 mm(L),収縮変形測定用として30 mm(R)×30 mm(T)×5 mm(L)の試験体を作製した。いずれの試験体も水食い部と正常部は半径方向に隣接したものを用いた。スパンを98 mm,変形速度を 5 mm/minとし,柾目面荷重で3点曲げ試験を行い,静的曲げヤング率,静的曲げ強度ならびに破壊に要する仕事を求めた。容量30 kgw・cmのシャルピー型衝撃試験機を用い,スパン84 mmで,柾目打撃の衝撃曲げ試験を行い,衝撃曲げ強度と衝撃曲げ吸収エネルギーを求めた。また,半径方向と接線方向の収縮率および試験体の4隅の角度の変化を求めた。熱処理は,設定温度を100℃,120℃,140℃とし,試験体重量が変化しなくなったときに終了した。その結果,静的曲げ特性,衝撃曲げ特性および収縮,変形に対する熱処理の影響が水食い部と正常部で明確な差が認められなかった。従って,トドマツ熱処理材の物性変化は水食い部と正常部で大差ないと考えられ,乾燥された水食い部の物性は正常部とほぼ同等であることが分かった。
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