木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
Print ISSN : 0021-4795
ISSN-L : 0021-4795
54 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
一般論文
  • 桝田 信彌, 福田 香織, 矢口 行雄, 本間 環
    2008 年 54 巻 2 号 p. 58-67
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    本報告では,苗木生産に使用できる胎生種子の状態を明らかにすることを目的として,メヒルギ(Kandelia candel)胎生種子の大きさの違いおよび根原基形成が植栽後の発根や根およびシュートの伸長成長量の大きさにおよぼす効果について検討した。その結果,発根に必要な根原基は長さ 2 cm以上の胎生種子で確認された。また,胎生種子が大きくなるほど根原基数は増加し,根原基の長さや幅も増大した。さらに,胎生種子が大きくなるほど,発根本数は増加し,根およびシュートの伸長成長量も増加した。これらの現象は一般的な植物の種子の発芽および発根と類似していた。しかし,長さ 6 cm未満の胎生種子は生育過程で枯死した。これらを基に,長さ 8 cm以上の胎生種子では100%の発根率を示すことから,メヒルギの苗木生産に使用できるものと考えられる。
  • 桝田 信彌, 小塩 貴, 米盛 重友, 伊藤 健, 本間 環
    2008 年 54 巻 2 号 p. 68-79
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    メヒルギ胎生種子の成長発育の詳しいメカニズムは解明されていない。これまで,多くの植物の成長発育には,植物ホルモンの関与が明らかにされている。そこで,本研究ではメヒルギの成長発育のメカニズムを検討する第一段階として,植物ホルモンとメヒルギ胎生種子の成長発育との関連を検討した。その結果,根の伸長成長は,すべての植物ホルモン処理で促進する傾向がみられた。とくに,ジベレリン,アブシジン酸,エチレン処理で強い根の伸長促進効果がみられた。また,高濃度のジャスモン酸処理は著しい発根の促進効果および著しい根の伸長成長およびシュートの伸長成長の抑制効果がみられた。一方,シュートの伸長成長はジベレリン処理で強い促進効果が,アブシジン酸処理で弱い促進効果がみられた。これらのことから,メヒルギ胎生種子のシュートと根の伸長成長促進には,ジベレリンが最も効果が高いことが示された。
  • 宮澤 紀子, 大賀 祥治
    2008 年 54 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    バイリング(Pleurotus nebrodensis)の生育において,培地への核酸関連物質の添加が菌糸生長および薬理効果に及ぼす影響を検討した。核酸関連物質は,液体,寒天,木粉の全ての培地で菌糸体の生長を促進させた。その促進効果は,液体および寒天培地では核酸関連物質の添加濃度が0.1%の試験区において最も高くなった。血小板凝集抑制試験およびケモカイン遺伝子発現抑制試験では,核酸関連物質の添加培地で培養した菌糸体は,抑制効果が高くなる傾向にあった。薬理効果は,添加物濃度によって影響をうけることが明らかになった。
ノート
  • 大崎 久司, 久保島 吉貴, 外崎 真理雄, 太田 正光
    2008 年 54 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    トドマツ水食い部および正常部のそれぞれについて加熱乾燥を受けたものと受けていないもので静的曲げ特性,衝撃曲げ特性並びに加熱乾燥による収縮変形を比較検討した。試験体には北海道産55年生トドマツ(Abies sachalinensis Mast.)造林木を用いた。静的曲げ試験体および衝撃曲げ試験体として,7 mm(R)×7 mm(T)×115 mm(L),収縮変形測定用として30 mm(R)×30 mm(T)×5 mm(L)の試験体を作製した。いずれの試験体も水食い部と正常部は半径方向に隣接したものを用いた。スパンを98 mm,変形速度を 5 mm/minとし,柾目面荷重で3点曲げ試験を行い,静的曲げヤング率,静的曲げ強度ならびに破壊に要する仕事を求めた。容量30 kgw・cmのシャルピー型衝撃試験機を用い,スパン84 mmで,柾目打撃の衝撃曲げ試験を行い,衝撃曲げ強度と衝撃曲げ吸収エネルギーを求めた。また,半径方向と接線方向の収縮率および試験体の4隅の角度の変化を求めた。熱処理は,設定温度を100℃,120℃,140℃とし,試験体重量が変化しなくなったときに終了した。その結果,静的曲げ特性,衝撃曲げ特性および収縮,変形に対する熱処理の影響が水食い部と正常部で明確な差が認められなかった。従って,トドマツ熱処理材の物性変化は水食い部と正常部で大差ないと考えられ,乾燥された水食い部の物性は正常部とほぼ同等であることが分かった。
  • 宋 周勲, 中尾 哲也
    2008 年 54 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/28
    ジャーナル フリー
    3次元の拡散方程式を差分法で解き,乾燥過程の構造材の含水率を計算した。その際,拡散係数の温度依存性に必要な材温については,含水率を相対湿度に変換し,その湿球温度が材温に相当するとして計算を行った。材全体の温度の平均値を用いて含水率の変動を計算した結果,中温乾燥の過程における様々な温度での拡散係数が最も一定の値となった。また,高温乾燥の過程においては,材温の実験結果と良く一致する結果が得られた。
feedback
Top