木材学会誌
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54 巻, 4 号
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総説
  • 片岡 厚
    2008 年 54 巻 4 号 p. 165-173
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    光劣化は,木材が屋外で気象劣化する際のキープロセスである。また屋内でも変色などの問題を引き起こす。木材の光劣化は,基本的には表面反応であり,化学構造の変化は表層付近に留まるとされている。しかし,これまでに報告された木材の光劣化層の深さは,80μmから2540μmまで幅広い。木材が光劣化するメカニズムについて深さ分析による理解を深めることは,劣化しやすい木材の表層の部分を特定して,より効果的に耐光化処理する技術を開発するためにも重要である。本稿では,木材の光劣化に関わる基礎的な知見を概説するとともに,光劣化の深さ分析におけるこれまでの研究展開と理解の深まりを紹介する。
一般論文
  • 曲げクリープ特性
    大橋 義德, 松本 和茂, 佐藤 司, 平井 卓郎
    2008 年 54 巻 4 号 p. 174-182
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    トドマツ製材とカラマツ合板を用いた道産I形梁の曲げクリープ特性を把握するために,調湿条件が異なる試験体の曲げクリープ試験を行った。試験体4体のうち各2体を20℃65%RHと20℃85%RHの2条件で調湿した。クリープ試験は温湿度が制御されない試験棟内で6年間行った。85%で調湿した試験体では,載荷直後の脱湿によりスパン中央のたわみが著しく増加した。その後もすべての試験体の変形は含水率変動に呼応し,低湿度の冬季で増加,高湿度の夏季で減少する傾向を周期的に繰り返した。85%で調湿した試験体では65%で調湿した試験体よりもたわみと含水率の変動幅が大きく,試験前の調湿条件が長時間経過後もたわみと含水率の挙動に影響を及ぼした。50年後の相対クリープは65%で調湿した試験体では約1.7倍,85%で調湿した試験体では約2.4倍まで増加すると予測された。よって,道産I形梁のクリープを抑えるためには,工場出荷から施工までの間に余分な水分を吸着させないように養生や保管に留意すべきである。
  • 高麗 秀昭, 大橋 一雄, 小林 正彦
    2008 年 54 巻 4 号 p. 183-190
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    ファイバーボードの接着強さを向上させるために木材中へのフェノール樹脂の浸透を防止した。その方法は木材ファイバーのアセチル化およびフェノール樹脂への充填剤の添加である。アセチル化により浸透が抑制され,剥離強さ(IB)が増加した。さらにアセチル化木材をオゾン処理することにより,表面のぬれ性が改善され,IBがいっそう増加した。アセチル化オゾン処理ボードでは高耐久化が実現し,ASTM 6 サイクル促進劣化試験後のIBで0.84 MPa,残存率74%を達成した。また高温脱脂大豆粉を充填剤としてフェノール樹脂へ添加し,未処理木材を原料としてボードを製造したが,IBが約40%増加した。ASTM 6 サイクル促進劣化試験後のIBの残存率はアセチル化オゾン処理ボードのそれより低いが,ファイバーボードを一般的な使用環境で使用する場合には,充填剤の添加も極めて有効である。
  • 山田 雅章, 滝 欽二, 渋谷 光夫
    2008 年 54 巻 4 号 p. 191-198
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    アセトアセチル(AA)化度を変えたAA化PVAと部分ケン化一般PVAを用いて,ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒に用いた場合のpMDIとの反応性について水を溶媒に用いた場合と比較した。AA化PVAとpMDIとの反応性や架橋形成について以下の結果が得られた。溶媒にDMSOを用いた場合では,硬化フィルムのゴム状平坦部におけるE′値から算出した架橋密度はE″ピーク温度のずれから算出した架橋密度とほぼ同じ値となったが,溶媒に水を用いた場合では,前者の値は後者の値よりも高くなった。DMSO溶媒系硬化フィルムの重量膨潤度は,一般に水溶液系のフィルムよりも小さかった。またAA化PVAフィルムの重量膨潤度は一般PVAのそれらよりも小さく,これらのことからDMSO系の方が水系よりも重量膨潤度が小さく,またAA化PVAの方がフィルムの架橋密度が高くなることが示唆された。
ノート
  • 杉本 貴紀, 平嶋 義彦, 佐々木 康寿
    2008 年 54 巻 4 号 p. 199-207
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,地域の気候・風土に適した地産地消による家づくりの普及を最終目的として,地域に根づいてきた伝統構法による木造住宅を調査した。その中で,調査建物にみられた差鴨居構造,貫構造,格子組構造についてせん断耐力試験を行った。3つの伝統木構造は,いずれも試験を行った0.15 radまで耐力を維持しながら大変形を呈した。標準的試験法に基づいて得られた壁倍率は,差鴨居構造試験体では0.46,貫構造試験体では1.31,格子組構造試験体では0.96となり,このような評価基準ではその性能が結果的に小さく見積もられることになると考えられた。そこで,伝統木構造の性能評価の一方法として,構造体とその枠組のみのせん断耐力試験結果から仕口1個あたりの平均的性能を評価し,終局モーメントは差鴨居仕口1.90 kNm,貫仕口1.46 kNm,格子組仕口4.40 kNmであった。
  • 一般地域に建設された住宅の柱と土台
    青井 秀樹, 三井 信宏, 宮武 敦, 神谷 文夫
    2008 年 54 巻 4 号 p. 208-215
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2008/07/28
    ジャーナル フリー
    一般地域に建設された3棟の木造住宅の柱および土台に生じる各種応力を算出し,許容応力度に対する割合を調べた。その結果,以下の結論を得た。1)柱の負担率(=実在応力/許容応力)は,一部の例外を除いて,いずれの荷重継続期間においても充分に小さかった。2)長期荷重および積雪荷重において,バルコニーを支持する柱および広い空間を確保するための長い梁を支える柱では相対的に余裕が少なかった。3)短期荷重において,耐力壁を構成する柱の余裕は,その壁の耐力が増すほど少なくなる傾向を示した。4)土台での特徴は,柱と非常に良く似通っていた。
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