木材学会誌
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55 巻, 3 号
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総説
  • 佐野 雄三
    2009 年 55 巻 3 号 p. 119-128
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    広葉樹材の管状要素間壁孔の構造と機能に関する研究の現状について概説した。道管相互壁孔に関しては,壁孔壁が従来考えられているよりも多様で複雑な構造をもつことが明らかにされ,壁孔壁マトリックスによる通水の制御などについて新たな研究の展開が見られる。木部繊維間壁孔や道管・木部繊維間壁孔についても,細胞壁における存否や分布,あるいは壁孔壁の微細構造に関して,従来考えられていなかったような知見が得られており,季節的に見られる水分流動と関連づけた生理学的な研究も始まっている。
一般論文
  • 土屋 竜太, 古川 郁夫
    2009 年 55 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    広葉樹において3つのパラメータ,すなわち木部繊維長(WFL),道管要素長(VEL),道管内腔径(VLD)は未成熟材と成熟材の境界区分を決定する際に用いられる代表的材質指標である。我々は2種のポプラ造林木14個体14枚の円板を用いて,道管内腔径の水平変動を調べ,成熟齢(変動の安定する形成層齢)を算出し,それらと既に報告されている木部繊維長と道管要素長の成熟齢とを比較した。さらに,3つのパラメータの成熟齢と肥大成長段階の境界齢との関連性を調べた。その結果,VLDの成熟齢はWFL,VELの成熟齢と比べて常に 4-5 年程度早い一方で,どのパラメータの成熟齢も累積年輪幅の水平変動にゴンペルツ成長曲線式をあてはめて求めた肥大成長段階の壮齢期と老齢期の境界齢(age t2)に近似した。このことから,これら2種のポプラ造林木ではVLDよりも肥大成長段階境界齢(age t2)が材質区分の指標として優れ,境界齢(age t2)を算出することで材質区分の境界推定が可能であることが示された。
  • 宮下 久哉, 織田 春紀, 半田 孝俊
    2009 年 55 巻 3 号 p. 136-145
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    10年次のスギクローンを用いて立木の状態で非破壊的な方法による試験を実施し,平均胸高直径が10 cm以下の供試材料での材質評価の可能性を検討した。容積密度数については,ピロディンの打ち込み深さと高い負の相関が認められ推定が可能であることが示唆された。ヤング率については,応力波伝播速度と高い正の相関が認められ推定精度が高いことが示唆された。含水率の推定については横打撃共振法を試みたがその推定精度は高くなかった。以上の結果から,既往の20年生以上,平均胸高直径16 cm以上の結果と同じく,平均胸高直径が10 cm以下の10年次スギクローンという条件でも密度と強度の推定については材質評価が可能であることを明らかにした。本研究で検討した測定は,今後の成長に影響の少ない非破壊試験であり,また大量の供試木を効率的に検定できることから,10年次検定林での材質育種検定に適した方法であると考えられる。
  • 心持ち正角の目視等級区分及び曲げ性能と枝打ち・間伐との関係
    後藤 崇志, 中山 茂生, 池渕 隆, 古野 毅
    2009 年 55 巻 3 号 p. 146-154
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    枝打ち,間伐などの施業と,スギ心持ち正角の目視等級区分及び曲げ性能との関係について検討した。無施業林と施業林より丸太を供試して心持ち正角に製材,乾燥した後,針葉樹の構造用製材の日本農林規格に従った目視等級区分,及び実大曲げ試験を行った。その結果,以下のことが分かった。1)目視等級区分の結果,無施業林では2級の割合が高かったが,施業林では1級の割合が高くなった。この差異は,材縁部での最大節経比と集中節径比が影響していた。2)実大曲げ試験の結果,MOEMORは無施業林では7.36 kN/mm2,40.7 N/mm2,施業林では7.52 kN/mm2,43.2 N/mm2 であった。MORの信頼度75%の5%下限値はそれぞれ29.1 N/mm2,32.1 N/mm2 であった。施業林では,曲げ性能のバラツキが全体的に小さくなる傾向が認められた。3)目視等級区分とMORとの関係では,施業林は無施業林よりも各目視等級区分でのバラツキが小さくなる傾向が認められた。
  • モーメント抵抗接合としての強化LVL接合の特性
    中田 欣作, 小松 幸平
    2009 年 55 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    強化LVL接合の強度特性を検討するために,柱-土台接合部のモーメント加力試験および箱型ラーメン架構の水平加力試験を行った。柱-土台接合部は,モーメント加力試験において最大荷重を示した後も緩やかに荷重が低下し,接合ピンが集成材にめり込むことにより回転角が増加する粘り強い接合性能を示し,その接合効率は30%,塑性率は6.97であった。接合ピン1本当たりのせん断性能を基にした線形応力解析では,柱-土台接合部の回転剛性および最大モーメントの計算値は実験値と良く一致した。スパン2730 mm,高さ2730 mmの箱型ラーメン架構は,水平せん断試験において柱-土台接合部と同様の粘り強い接合性能を示し,その短期許容せん断耐力は,見かけのせん断変形角が 1/120 rad時の耐力で決定される5.7 kNであった。箱型ラーメン架構の柱-梁接合部および柱-土台接合部に発生するモーメントは,モーメント加力試験での最大モーメントとほぼ一致した。
  • 朴 仁善, 船田 良, 近藤 晋, 梶田 真也, 久保 隆文
    2009 年 55 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    ホオノキの樹皮に含まれ,薬理活性を有するネオリグナンの一種のマグノロールを大量生産する方法として組織培養法に着目し,ホオノキの葉柄と成熟種子からのカルス誘導条件とその増殖条件の検討,およびカルス中に含まれるマグノロールの同定・定量を行った。その結果,葉柄および成熟種子からカルスは誘導されたが,増殖性は両者で異なった。成熟種子由来のカルスは,葉柄由来のカルスより高い増殖性が認められた。いずれの組織に由来するカルスにおいても,マグノロールが含まれることを確認した。カルス中のマグノロールの含有量の最高値は,葉柄由来は乾燥重量当たり約150μg/gで種子由来では70μg/gであった。カルス中のマグノロールの含有量は,カルス誘導条件,培養期間,植物器官およびカルスの色調によって異なった。
ノート
  • 添加量と子実体の収量,含有量,鮮度保持,食味との関係
    寺嶋 芳江, 渡辺 智子, 鈴木 亜夕帆, 白坂 憲章, 寺下 隆夫
    2009 年 55 巻 3 号 p. 170-175
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/05/28
    ジャーナル フリー
    シイタケ培地へトレハロースを0.5,1,2,3,4%添加して栽培し,子実体の収量,トレハロース含有量,鮮度保持,食味への影響を試験した。その結果,収量には有意差のある変化を生じなかったが,0.5,1,2,3%添加培地から1回目に発生したMサイズ以上の子実体の個数割合が多くなった。無添加に比べて,2,3,4%添加培地からの子実体のトレハロース含有量は3回目までのいずれの発生回でも多くなった。鮮度については,2%添加ではいずれの発生回でも高い保持効果が認められ,特に4%添加では1回目に有意に高かった。官能検査では,2%と3%添加の場合に摂取時の「香り」,「食感」,「味」と「総合評価」が比較的高かった。
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