木材学会誌
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55 巻, 4 号
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総説
  • 岸本 崇生
    2009 年 55 巻 4 号 p. 187-197
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    リグニンは,樹木の細胞壁中に存在する非常に複雑なバイオポリマーである。これまでにリグニンの部分構造のみを取り出したさまざまなリグニンモデル化合物が合成されている。それらは,木材研究のいろいろな分野に応用され,重要な役割を果たしてきた。本論文では,リグニンモデル化合物の合成に関する最近の成果に注目しながら,リグニンモデル化合物の主な合成方法とその木材研究への応用例について概説する。さらに,筆者らが合成に成功したβ-O-4 型人工リグニンポリマーについても,併せて簡単に紹介する。
一般論文
  • 雉子谷 佳男, 北原 龍士
    2009 年 55 巻 4 号 p. 198-206
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    この研究では,オビスギ樹幹の高さ方向における材質変動を明らかにするために,オビスギ15品種材の胸高部と地上高 5 m部の木材材質を髄から木部最外層にかけて調べ比較した。その結果,胸高部と比べて地上高 5 m部では,縦圧縮ヤング率と縦圧縮強さが増大し,髄から木部最外層に至る放射方向での力学的性質の変動も増大する品種が多いことがわかった。胸高部に比べて地上高 5 m部で縦圧縮ヤング率および縦圧縮強さが増大する原因は,おもにミクロフィブリル傾角の減少によると考えられた。つぎに,オビスギ林木の根元から梢端に至る高さ方向での材質変動を調べたところ,動的縦ヤング率の高さ方向変動を組織構造指標の変動によって上手く説明できることがわかった。また,樹幹の動的縦ヤング率,その高さ方向の変動および組織構造指標の高さ方向変動への樹高成長量の関与が示唆された。
  • 柱梁強化LVL接合と柱脚金物接合による門型ラーメン架構の性能
    中田 欣作, 小松 幸平
    2009 年 55 巻 4 号 p. 207-216
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    強化LVL接合板と接合ピンを用いた柱梁接合部と柱脚金物に強化LVL接合ピン(B1 タイプ)あるいは丸鋼ドリフトピン(B2 タイプ)を用いた柱脚接合部を組合せた門型ラーメン架構を作製した。モーメント加力試験において柱梁強化LVL接合部はあそびが小さく粘り強い強度性能を示したが,柱脚金物接合部はあそびが大きく粘りのない接合性能を示した。門型ラーメン架構の水平加力試験では,柱梁接合部と柱脚接合部の回転剛性の比によりそれぞれにモーメントが分配され,柱梁接合部が降伏耐力に達した後に柱脚接合部が降伏耐力に達した。門型ラーメン架構の最大耐力および破壊形態は柱脚接合部により決定され,B1 およびB2 タイプの門型ラーメン架構の短期許容せん断耐力はそれぞれ8.0 kNおよび11.9 kNとなった。稲山式により求めた門型ラーメン架構の反曲点高さはひずみ度分布より求めた実験値とほぼ一致し,本式により耐力および変形の予測が可能であった。
  • せん断クリープ特性
    大橋 義德, 松本 和茂, 佐藤 司, 平井 卓郎
    2009 年 55 巻 4 号 p. 217-225
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    トドマツ製材とカラマツ合板を用いた道産I形梁のせん断クリープ特性を把握するために,スパン-梁せい比の異なる2種類のクリープ試験を行った。試験体は梁幅の異なる3種類ごとに3体とし,20℃65%RHの恒温恒湿室内で調湿した。曲げクリープ試験とせん断クリープ試験は温湿度が制御されない試験棟内で35日間ずつ各9回行った。50年後の相対クリープ,すなわち見かけの曲げクリープ係数は,曲げクリープ試験で約1.4,せん断クリープ試験で約1.8となり,せん断成分の多い条件でクリープたわみが増大すると予測された。それらの係数から本報で考案したクリープ係数分離法により求めた純曲げクリープ係数は約1.3,せん断クリープ係数は約2.0となった。分離したクリープ係数を用いた長期たわみ計算法ではスパンや荷重条件に関わらず常に合理的な剛性設計が可能となることが明らかとなった。
  • ドリフトピン接合の基本的な静的せん断特性
    内迫 貴幸, 徳田 迪夫
    2009 年 55 巻 4 号 p. 226-234
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    木造軸組工法の接合部の合理化を目的として,ガラス繊維強化ナイロン樹脂を挿入型のプレートとして用いるドリフトピン接合を考案した。この接合部のせん断試験を行い,ドリフトピンの形状が最大荷重や降伏耐力におよぼす影響を検討するとともに,鋼板挿入型の接合部と比較した。ナイロンプレートを用いた接合部のせん断性能は,鋼板を用いた場合と比較すると,初期剛性は60%,最大荷重は90%,降伏点荷重は90%であった。ナイロンプレートあるいは鋼板を用いた接合部では,どちらの場合も鋼管製ドリフトピンを用いた場合の耐力は通常のドリフトピンを用いた場合の80%であった。ナイロンプレートと鋼管製ドリフトピンの組合せでは,正負繰り返し加力によっても単調加力と同等の最大荷重と降伏点荷重を示した。また,降伏点荷重レベルの正負繰り返し加力においてもナイロンプレートの破壊は認められなかった。
  • 軸組接合部の静的荷重に対する強度特性
    内迫 貴幸, 徳田 迪夫
    2009 年 55 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    ガラス繊維強化ナイロン樹脂を挿入型のプレートとして用いるドリフトピン接合を考案し,前報においてドリフトピン1本によるせん断性能を調べた。今回は種々の軸組接合部について引抜およびせん断耐力試験を行い,強度性能をプレカット接合部および金物接合部と比較検討した。柱-土台接合部の引抜許容耐力は15.3 kNで,山形プレートによる金物接合部よりも高くなったが,初期剛性は低くなった。梁-梁接合部のせん断許容耐力は20.7 kNであり,腰掛け蟻接合したプレカット接合部より低かったが,最大荷重,初期剛性,降伏耐力および終局耐力はこれより高くなった。柱-梁接合部のせん断試験では,プレートの破損による脆性的な破壊が生じたため許容耐力は28.1 kNとなり,かたぎ大入れほぞ差し接合したプレカット接合部より低くなったが,初期剛性,降伏耐力および終局耐力はこれより高くなった。
  • 岸野 正典, 谷口 僚, 中川 明子, 大井 洋
    2009 年 55 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2009/07/25
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル フリー
    イオン液体,1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド([C4mim]Cl)を用いて処理されたトドマツ(Abies sachalinensis)木粉およびアカシアマンギュウム(Acacia mangium)機械パルプ(アカシア機械パルプ)の化学的性質を検討した。[C4mim]Clを用いて処理されたトドマツ木粉およびアカシア機械パルプからの残渣率は,溶解時の温度および時間に伴って減少した。一方,トドマツ木粉の残渣のFT-IRスペクトルは糖成分に由来する1050 cm-1 および896 cm-1 のピークの減少と,リグニンに由来する1507 cm-1 および858 cm-1 のピークの増加を示した。さらに,アカシア機械パルプからの残渣中のグルコースが急激に減少する一方,リグニン量は増加していた。これらのことから,セルロースやヘミセルロースといった木材中の糖成分の溶解速度は,リグニンのそれよりも非常に速く,その結果リグニンが残渣中に濃縮されることが明らかとなった。
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