木材学会誌
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56 巻, 1 号
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カテゴリーI
  • スプルース柾目面回転切削で摩耗した工具の切屑生成能
    土屋 敦, 藤原 裕子, 奥村 正悟
    2010 年 56 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    逃げ面側のみ窒化クロムで被覆した超硬合金工具(UP)の摩耗特性と切削性能を明らかにするため,スプルース柾目面の回転切削(回転径134 mm,回転数6000 rpm,送り 1 m/min)と,その回転切削で摩耗した工具による平削り(切込量を徐々に増加させるために被削面を順目方向に0.14°傾斜。送り 3 m/min)を行い,切れ刃の摩耗,平削りでの切屑生成能などを高速度工具鋼(HSS)および被覆なしの超硬合金(UH)工具と比較した。回転切削においてUPは常に鋭利な切れ刃を保持し,切削材長50 mでの刃先の丸み半径(R)はHSSの約 1/6,UHの約 1/2 であった。平削りの実験から,切屑生成過程は切削力の変化などから3段階に分類できること,切れ刃が被削材に接触し連続した切屑を生成し始めるまでの時間は常にUPが最も小さいこと,連続した切屑を生成し始める切込量とRは良好な直線関係を示すことなどが明らかになった。
カテゴリーII
  • 種々の環境条件が力学特性に及ぼす影響
    大橋 義德, 戸田 正彦, 藤原 拓哉, 佐藤 司, 平井 卓郎
    2010 年 56 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    北海道産人工林材のトドマツ製材とカラマツ合板を用いた木質I形梁(道産I形梁)の力学特性に及ぼす使用環境の影響を調べるために,種々の劣化処理(高湿度,浸せき,防腐,煮沸,減圧加圧)を施した試験体の曲げ,せん断,めり込み試験を行い,それぞれ常態試験体と処理試験体の特性値を比較した。高湿度処理では,約4%の含水率増加に対して曲げ耐力,せん断耐力,めり込み強さ,曲げ剛性は約1割低下し,せん断試験の曲げ剛性は合板の吸湿特性により約2割低下した。浸せき処理と防腐処理では,いずれの特性値も高湿度処理より性能低下が小さく,乾燥状態に戻れば吸水や薬剤塗布による影響は小さいことが示された。煮沸と減圧加圧処理では,曲げ耐力よりせん断耐力のほうが大きく低下する傾向が示された。せん断性能の比較では,防腐,浸せき,高湿度,減圧加圧,煮沸処理の順に残存率が小さくなり,I形梁の梁幅が大きいほど,劣化処理の影響が大きいことが明らかとなった。得られた残存率は使用環境に応じた調整係数として,または,接着性能の品質管理データとして活用される。
  • 木村 文則, 谷口 与史也
    2010 年 56 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    本報告は80年生スギ中径材の構造用材料としての利用促進を目的に,和歌山県産の原木丸太35本とそれから製材された平割材(標準寸法:45×90 mm)275本について,縦振動法による動的ヤング率および小荷重載荷法による静的曲げヤング率の測定をおこないそれらの相互関係を検討した。その結果以下の主な知見を得た。一つ目は,平割材の動的ヤング率(Ed)と静的曲げヤング率(MOE)との間に非常に高い相関関係が認められたことである。二つ目は,MOEのロットによる差が高度に有意であり,かつロット別の相関係数も高いことからロット別による区分が有効なことである。三つ目は,原木丸太の動的ヤング率(Efr)とMOEとの間に高い相関関係が認められ,さらにEfrに基づく機械等級区分が有効なことである。これは,ロットごとに木材の材質にバラツキがあることを考えると,いろいろなロットが集まる地域を区分とした場合には大きな意味を持っている。
  • 高麗 秀昭, 大橋 一雄, 小林 正彦, 凌 楠, 大村 和香子
    2010 年 56 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    未処理ファイバーとアセチル化ファイバーをオゾン処理し,ファイバーボードを製造した。オゾン処理がPMDI(poly-methylene diphenyl diisocyanate)およびフェノール樹脂を用いたボードの耐久性に及ぼす効果を調べた。耐久性を調べるためにASTM6 サイクル促進劣化試験を実施したが,促進劣化試験後に,過度のオゾン処理によりPMDIを用いたボードの剥離強さ(IB)の低下は顕著であった。PMDIのイソシアネート基と木材の水酸基との化学結合の可能性は低く,オゾン処理により導入されたカルボキシル基が多くのイソシアネート基と反応し,PMDIの硬化を阻害したと考えられる。一方,適切なオゾン処理によりフェノール樹脂を用いたアセチル化オゾン処理ボードのIBは増加し,防蟻性も向上した。またフェノール樹脂に高い耐朽性があることが明らかとなり,フェノール樹脂とアセチル化処理,オゾン処理の組み合わせは防蟻性・耐朽性でも高い効果があった。
カテゴリーIII
  • 井城 泰一, 田村 明, 飯塚 和也
    2010 年 56 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    スギで開発された簡便かつ非破壊的な心材含水率の推定法である横打撃共振法を,トドマツ精英樹クローンに適用した。立木状態で横打撃共振周波数(f)と直径(d)を測定したところ,dと1/fは高い相関関係にあり,その回帰直線はクローン毎に異なっていた。また,腐朽個体の検出にも応用できる可能性が示唆された。1/dfと実際に伐採して調べた心材含水率との関係を調べたところ,両者の間には,個体値,クローン平均値とも有意な正の相関関係が認められた。相関係数は,クローン平均値の方が個体値に比べ高かった。1/dfと心材含水率の関係には,d,辺材含水率,心材率など複数の形質が影響していると考えられた。1/dfの個体値の順位より,心材含水率の異なる3つのグループ(高い,中間,低い)に分けることが可能であると考えられた。特に,心材含水率の低いグループは,他のグループに比べて高い精度で選抜できると考えられた。これらの結果から,横打撃共振法は,非破壊的に心材含水率の低いグループを選抜することができ,トドマツにおける心材含水率の遺伝的改良に有効な方法であると考えられた。
  • 戸田 正彦, 森 満範, 大橋 義德, 平井 卓郎
    2010 年 56 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,一般的な褐色腐朽菌であるオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を用いて強制腐朽処理を行ったトドマツ(Abies Sachalinensis)の縦圧縮試験および鋼板添え板釘打ち接合の一面せん断試験を実施した。また試験終了後に鋼製ピンの衝撃打ち込み深さを測定した。試験の結果,腐朽初期の釘せん断耐力の低下は,縦圧縮強度の場合に見られるような指数曲線的な急激な減少とは異なる傾向を示していた。また腐朽した釘接合部では,釘頭部の破断が生じずに釘が引き抜ける破壊形態であったため,最大耐力に達した後は荷重がゆるやかに低下しながら変形が進行していった。鋼製ピンの衝撃打ち込み深さから推定した木材の支圧強度を用いてヨーロッパ型降伏理論に基づいて求めた釘せん断耐力の低下傾向を実験結果と比較した結果,腐朽した釘接合部の終局せん断耐力を,ピン打ち込み深さから評価することが可能であると示唆された。
  • 孟 慶軍, 平井 卓郎, 澤田 圭, 佐々木 義久, 小泉 章夫, 植松 武是
    2010 年 56 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2010/01/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    枠組壁工法の耐力壁-床組間では,壁下枠から床組に打たれた釘接合その他の機械的接合耐力と鉛直荷重による摩擦抵抗によってせん断力が伝達される。この研究では枠組耐力壁と床組の小型モデル試験体を用いた静的水平加力試験を実施し,耐力壁-床組間のせん断耐力に及ぼす摩擦抵抗の影響について検討を行った。モデル実験から得られた見かけの摩擦係数は,約0.2から0.35の範囲で大きく変動したが,下限摩擦係数は純粋な摩擦試験で得られる動摩擦係数に比較的近い値となった。この摩擦力は接合耐力に寄与するが,特に履歴減衰特性に大きく影響することがわかった。
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