木材学会誌
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57 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
カテゴリーI
  • 藤本 清彦, 高野 勉, 奥村 正悟
    2011 年 57 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    スギの丸鋸切削時に発生する浮遊粉塵の質量濃度に及ぼす切削条件および被削材の含水率条件の影響を調べた。切削条件として,丸鋸回転数が一定で送り速度が異なる場合,送り速度が一定で丸鋸回転数が異なる場合,1歯当たりの送り量が一定となるように丸鋸回転数と送り速度を組み合わせた場合の3条件を設定した。浮遊粉塵の質量濃度は,光散乱式粉塵計を用いて作業者の口付近に相当する位置で測定した。また,含水率が異なるスギを丸鋸切削した時に発生する浮遊粉塵を同様の方法で測定した。浮遊粉塵の質量濃度の幾何平均は,丸鋸回転数の影響を強く受け,丸鋸回転数の増加とともに大きくなった。これは,丸鋸の周速が増加することにより,作業者の口付近まで飛来する粉塵量が増えたためであると考えられる。また,試験体含水率が高くなると,幾何平均は小さくなる傾向があったが,幾何標準偏差は大きくなった。
  • 廣瀬 孝, 櫛引 正剛
    2011 年 57 巻 3 号 p. 136-142
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,リンゴ剪定枝から空気賦活で調製した活性炭の収率や灰分,比表面積,吸湿率に及ぼす賦活温度の影響を明らかにし,それらの物性に関してスギを原料とした活性炭と比較検討を行った。その結果,リンゴ剪定枝を原料とした活性炭の賦活収率は,900℃が最も低く,スギを原料としたものよりも低い値を示した。また,灰分はリンゴ剪定枝の方が高かった。比表面積は,900℃が最も高く,灰分を除いて換算した比表面積はスギよりも高い値を示した。吸湿率は,相対湿度および賦活温度が高くなるに従って高くなり,灰分を除いて換算した吸湿率はスギよりも高い値を示した。
  • 中根 優子, 渡邉 啓子, 中川 香奈子, 阪口 利文
    2011 年 57 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,Thermobacillus compostiによるキシランの糖化と菌体の親水性ゲル状多孔担体への固定化について検討した。T.compostiは50℃の好気条件下においてキシランを糖化し,これを炭素源として増殖した。このT.composti培養液より,キシロースが検出された。次にT. compostiを担体へ固定化した。走査型電子顕微鏡によってT.compostiが担体の孔内に入り込み,そこでよく増殖したことが観察された。この担体固定化T.compostiの培養液においても,キシロースが検出された。T.compostiの糖化能は固定化によって阻害を受けなかった。
カテゴリーII
  • 木村 彰孝, 杉山 浩之, 佐々木 靖, 谷田貝 光克
    2011 年 57 巻 3 号 p. 150-159
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    ヒバ(Thujopsis dolabrata Sieb. et Zucc.)材を用いた室内空間での視覚・嗅覚刺激が人の心理・生理面に与える影響を検討した。供試空間にはヒバ材使用量の異なる4部屋を用いた。被験者は健常な大学生男女14名とし,入室による心理評価と生理反応の変化を調べた。実験後の室内空気の香気成分を分析した結果,ヒバ材使用量の増加と共にセスキテルペン類の気中濃度は高くなった。におい強度はヒバ材使用量の増加と共に有意に強くなり,においの快適度も向上した。また,ヒバ材を床と壁に用いた部屋は未使用の部屋より有意に「自然な」「伝統的な」イメージを与え,「疲労」(POMS)の変化量は有意に低かった。血圧と唾液アミラーゼ活性の結果から,内装へのヒバ材使用量の違いは自律神経系の活動に違いをもたらすことが示唆され,心理評価と生理反応は対応しなかった。
  • 木村 彰孝, 佐々木 靖, 小林 大介, 飯島 泰男, 谷田貝 光克
    2011 年 57 巻 3 号 p. 160-168
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    木材使用量の異なる室内空間による視覚刺激が二桁加算・減算の作業効率に与える影響を検討した。供試空間はスギ材使用量の異なる4部屋を用いた。被験者は健常な大学生と一般成人の男女12名とし,室内で5分間安静にした後,計算作業を16分間行った。併せて心理評価と生理反応の変化を調べた。室内のイメージを調べた結果,部屋間で「快適性」「雰囲気」のイメージは有意に異なっていた。また,作業開始前の快不快感は有意に異なっていたが,作業終了後は全ての部屋で不快と評価され,部屋間で有意差は認められなかった。唾液アミラーゼ活性は,時間経過に伴う有意な変化は確認されたが,部屋間で有意差は認められなかった。作業効率として回答数と誤答率をみた結果,共に部屋間で有意差は認められず,部屋間での空間のイメージや作業開始前の快不快感の違いは二桁加算・減算の作業効率に影響を及ぼさない可能性が示唆された。
  • 森田 慎一
    2011 年 57 巻 3 号 p. 169-177
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    落下した縄文杉の枝材(推定枝齢800-1000年)から試料を採取し,健全部分と腐朽部分におけるメタノール抽出物のヘキサン可溶部(中性部),並びに樹皮から表面に滲出していた樹脂中のテルペノイド成分を分析した。その結果,材の健全部分ではδ-cadineneが最も高い組成比を示すとともにcadaleneなど芳香環を持つテルペノイド成分がいくつか検出された。腐朽部分ではセスキテルペン炭化水素の減少に伴ってジテルペン類の組成比が高くなり,未同定成分も多数検出された。また,樹皮から滲出していた樹脂の主要成分は,α-pinene,6, 7-dehydroferruginol及びferruginolの3つであった。縄文杉の滲出樹脂と35年生のヤクスギ造林木に傷をつけて滲出させた樹脂とでは,テルペノイド成分の構成がやや異なり,縄文杉の滲出樹脂では含酸素セスキテルペン類の比率が低かった。
カテゴリーIII
  • 半固定板目材の開発と単板からのスピーカーコーン成形
    中村 晋平, 二村 伸一, 前野 和也, 葭谷 耕三, 棚橋 光彦
    2011 年 57 巻 3 号 p. 178-185
    発行日: 2011/05/25
    公開日: 2011/05/28
    ジャーナル フリー
    木材の3次元成形技術は国産針葉樹材の利用拡大および,プラスチック代替資源としての木材利用に大きく寄与できる可能性を持つ技術の一つである。しかし,これまでに原料として用いられて来た半固定材はR方向に圧縮を加えた柾目材のみであり,木目の美しさ等を最大限に生かすことが出来なかった。本研究では,2段階の圧縮工程を経ることにより陥入を生じることなくT方向へ木材を圧縮することを実現し,湿潤条件下において100%程度の伸び率を有する板目材を得ることに成功した。また,まさ目材および板目材の半固定材を成形し,これらを原料として木材単板からのスピーカーコーンの成形を試みた。0.4 mm厚および0.5 mm厚の柾目材を用いた場合80%程度の成形成功率を示し,板目材を用いた場合でも50%程度の成功率を示した。音圧周波数特性の測定の結果,これらが市販ウッドコーンに匹敵する音響特性を有することが示された。
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