木材学会誌
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57 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
カテゴリーI
  • 雉子谷 佳男, 豊海 彩, 北原 龍士, 藤本 英人
    2011 年 57 巻 4 号 p. 195-202
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    この研究では,同一林分で生育したオビスギ15品種材および2他地域スギ品種材について,シロアリ抵抗性を明らかにした。さらに,共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)による抽出成分の観察方法を検討し,オビスギ品種材について抽出成分の組織内分布を明らかにした。品種によってシロアリ抵抗性に違いが認められたものの,オビスギ品種の心材でのシロアリ抵抗性は,他地域スギ品種の心材と同程度であった。辺材であるにもかかわらず,シロアリ抵抗性をもつオビスギ品種が含まれていた。CLSMを用いて励起波長と蛍光波長を選択することによって,2つの抽出成分群の組織内分布を自家蛍光によって観察することができた。抽出成分の組織内分布には品種によって特徴があり,シロアリ抵抗性に優れた品種では,抽出成分B群(励起波長633nm,蛍光波長638-642nm)が仮道管内こうだけでなく,細胞壁中にも多量に存在した。
カテゴリーII
  • 合板を非対称配置した3層壁の音響透過損失
    中村 哲男, 矢野 隆, 村上 聖, 川井 敬二, 江藤 留寿, 北原 良誠
    2011 年 57 巻 4 号 p. 203-210
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,スギ角材およびスギ合板の表面材と中心材,裏面材を組み合わせて,対称配置(表面材と裏面材の厚さが同じ)あるいは非対称配置(表面材と裏面材の厚さが異なる)した3層構造壁の音響透過損失をJIS A 1416,JIS A 1419-1により測定・評価し,在来工法の壁材と比較した。結果は以下のとおりである。同一面密度で表面材と裏面材を非対称配置とすると,対称配置とするよりも低周波帯域と中周波数帯域で遮音性能が改善できる。3層構造壁は,2層壁に見られる2000Hzから3000Hz帯域にかけて現れるコインシデンス効果が現れにくい。3層構造壁の遮音性能は比較的高いため,グラスウールを充填した効果は小さい。同一面密度で同一材料構成の3層構造壁の場合,片側の空気層の厚みを増しても,空気音遮断効果は向上しない。
  • 促進劣化試験で評価した接着耐久性
    柳川 靖夫, 増田 勝則
    2011 年 57 巻 4 号 p. 211-222
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    屋外曝露試験と促進劣化試験とを関連付けるため,および木材保存剤が接着耐久性に及ぼす影響,あるいは試験片寸法,密度,接着剤が接着耐久性に及ぼす影響を調べるため,ラミナを5種類(ACQ,E-NCU,CUAZ2,E-NZN,AAC)の木材保存剤(薬剤)で処理して作製した5プライのスギ集成材から幅10mmおよび25mmの小試験片を採取し,促進劣化試験として煮沸繰り返し試験および減圧加圧繰り返し試験(処理回数:2,5,10,20回)を行った。その結果,せん断強度の低下の度合いと薬剤間でせん断強度に差が生じることとは必ずしも対応しておらず,促進劣化試験前には25mm幅>10mm幅および高密度>低密度であったせん断強度は,促進劣化試験後に10mm幅>25mm幅となり,密度間でのせん断強度の差は消滅する傾向が見られた。木部破断率の判定に際し,接着層が確認できない破断部分を深木部破断と規定した深木部破断率は2回の促進劣化試験により増加した。
  • 杉山 諒司, 玉井 裕, 矢島 崇, 宮本 敏澄, 原田 陽
    2011 年 57 巻 4 号 p. 223-226
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    ブナシメジの菌床栽培におけるカラマツ木炭の培地への添加効果を検討した。おが粉米ぬか培地への木炭添加はブナシメジの菌糸伸長を促進させ,添加率10%で伸長量は最大となった。菌床栽培試験において木炭の添加による子実体収量への影響はなかったが,菌糸伸長促進による菌まわしの早期完了により総栽培日数は7~10日短縮された。したがってブナシメジの菌床栽培におけるカラマツ木炭の添加は栽培期間の短縮に有効であることが示された。
カテゴリーIII
  • 被処理スギ心持ち角材における抗収縮能
    水野 裕章, 安藤 直人, 西岡 久寛
    2011 年 57 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    事前乾燥をしないで木材の寸法安定化を図る尿素系化合物とグリコール系化合物の加圧注入処理(DS処理)の効果を実証することを目的として,スギ心持ち角材の乾燥試験を実施した。試験の結果,DS処理材の抗収縮能ASEは気乾状態,全乾状態ともに約33%(T方向)であった。この収縮抑制効果によりT方向とR方向の収縮率がほぼ同じになったことで割れが軽減され,正方形の断面形状を維持したまま乾燥した。また気乾状態の試験体の木口断面に呈色液を塗布し薬剤の浸潤度を測定したところ,材端から50mm程度までは完全に浸潤し,それより内側では材の側面から15mm程度の距離まで浸潤が確認された。その浸潤度と収縮抑制効果には高い相関関係があった。以上よりDS処理の実大材に対する一定の寸法安定化効果が確認された。
  • 曲げ性能
    椎葉 淳, 荒武 志朗, 森田 秀樹
    2011 年 57 巻 4 号 p. 234-241
    発行日: 2011/07/25
    公開日: 2011/07/28
    ジャーナル フリー
    宮崎県産スギ大径材及びそれから得られる平角について,材料特性を把握するとともに曲げ性能を調べた。丸太の縦振動ヤング係数(Et)は,1番玉は2番玉に比べて約19%低かったが,1番玉から側面定規挽きにより製材された心去り材と2番玉から中心定規挽きにより製材された心持ち材とでは,曲げ強さ(MOR)は2%程度しか変わらず,有意差もなかった。丸太のEtと製材した平角のEtの関係をみると,心持ち材(2番玉)では約2%しか増加しなかったのに対し,心去り材(1番玉)では約25%も増加した。これらのことから,側面定規挽きは強度性能を向上させる有効な製材方法であることが確認された。また,その効果はEtが低く細り率(Tr)の大きい丸太ほど現れやすいことが示された。
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