木材学会誌
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57 巻, 5 号
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カテゴリーI
  • 腰塚 実穂, 大谷 忠, 井上 雅文
    2011 年 57 巻 5 号 p. 249-255
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル フリー
    スギの縦切削における巨視的な切屑型と微視的なき裂挙動を検討した。スギを切削角が中位の加工条件(例えば,切削角が50°)において縦切削した時の巨視的な切屑型は,一定の切込み深さから,「先割れ」が現れ,切込み深さの増加に伴い,流れ型から折れ型に移行した。この時,微視的なき裂挙動を観察した結果,切屑が生成される段階では,刃先前方に位置する細胞間層や細胞内腔に面した放射壁にき裂が発生し,巨視的な曲げ破壊が生じる終期の段階では,複数の細胞にまたがって起こる破壊として,刃先の斜め前方に起こる傾斜破断と垂直方向に起こる垂直破断が現れた。これらの結果から,折れ型切屑が支配的な,切削角が中位の加工条件において,巨視的に観察できる「先割れ」の破壊現象は,主に微視的なき裂挙動における細胞間層のき裂が成長したものであることが考察された。
カテゴリーII
  • 三嶋 賢太郎, 井城 泰一, 平岡 裕一郎, 宮本 尚子, 渡辺 敦史
    2011 年 57 巻 5 号 p. 256-264
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル フリー
    大久保育種素材保存園に植栽されている14年生のスギ精英樹のつぎ木クローン,745クローン2149個体を対象に胸高直径,応力波伝播速度およびピロディン陥入量を測定した。より正確にこれら形質を評価するため,すべての調査した個体についてジェノタイピングを行った。胸高直径,応力波伝播速度およびピロディン陥入量は,有意なクローン間差が認められた。応力波伝播速度およびピロディン陥入量の平均値や変動係数は,これまで報告されている値と大きな差は認められなかった。胸高直径,応力波伝播速度およびピロディン陥入量の相関関係は,総じて低い値を示し,成長形質と材質形質がともに優れたスギの創出が可能であることが示唆された。大久保育種素材保存園と3つの検定林との間に共通して植栽されているクローンを対象に,相関関係を検討した結果,応力波伝播速度およびピロディン陥入量ともに遺伝子型と環境の交互作用が小さいことが示され,同時に,比較的早期に選抜することが可能であることが示唆された。
  • 屋外曝露試験で評価した接着耐久性および促進劣化試験との関係
    柳川 靖夫, 増田 勝則
    2011 年 57 巻 5 号 p. 265-275
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル フリー
    ラミナを木材保存剤(ACQ,E-NCU,CUAZ2,E-NZN,AAC)で処理して作製した集成材の屋外環境下での接着耐久性を,ブロックせん断試験片を使用して調べた。屋外曝露試験の劣化条件は促進劣化試験よりも緩やかであることを示唆する結果が得られ,屋外曝露試験においては,試験片の幅や密度,あるいは接着剤の種類が接着耐久性に及ぼす影響は促進劣化試験より小さかった。木部破断率は促進劣化試験とほぼ同じ結果が得られ,接着層が確認できない部分を「深木部破断」とした深木部破断率は,促進劣化試験とは異なり顕著な増加を示さず木材の劣化が軽微であったことが示唆された。3種類の解析手法により,1次回帰式を基に促進劣化試験での各処理回数に対応する屋外曝露試験での曝露月数をそれぞれ算出した結果,処理回数もしくは曝露月数を常用対数として計算した場合,実測値を直接対応させて求めた処理回数に対応する曝露月数に最も近い数値を示した。
カテゴリーIII
  • 黄 栄鳳, 呂 建雄, 趙 有科
    2011 年 57 巻 5 号 p. 276-282
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル フリー
    青変した木材の高付加値利用を目的として,カナダ産ロッジポール・パインの青変材と健全材を用いて熱処理による色値変化,物性変化および色値変化と物性の関係を検討した。青変によってa*値とb*値が著しく低下した。200℃3時間以上の熱処理では青変材のa*値とb*値が著しく向上したため,目視で青変材と健全材との区別がつかないようになった。青変材の寸法安定性は健全材と比較して有意差が認められなかった。青変は曲げ強度と曲げ弾性率に対して顕著な影響が見られなかった。熱処理した青変材も健全材も,その色値L*及び色値a*と木材の各物性指標との間に顕著な相関関係があり,特に平衡含水率との間に0.1%レベルで高い相関が認められた。熱処理した木材の色値L*a*を用いて熱処理材の平衡含水率,膨張率,収縮率とMORなどの物性値を推定することが可能である。
  • 下田 隆史, 城内 隆志, 森川 康, 西堀 耕三
    2011 年 57 巻 5 号 p. 283-292
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル フリー
    マイタケ廃菌床のセルラーゼ糖化の前処理として,希硫酸処理と水酸化ナトリウム処理を行い,グルコース収率上昇に及ぼす効果を検討した。その結果,前者は,未処理のものと比較して顕著な差異が認められなかったのに対し,後者では,前処理の効果が顕著に認められた。これは,廃菌床中に含まれるリグニンやヘミセルロースの減少率が,前者と比較して後者の方が高くなったことによると考えられる。また,マイタケ廃菌床(SMCM)は,培地原料のブナオガコやマイタケ菌植菌前培地(MCM)に比べて,水酸化ナトリウム処理後の糖化によるグルコース収率が著しく高くなった。これらのことから,廃菌床は,マイタケが生育することにより一部前処理が行われた,糖化が容易な木質バイオマスであることが明らかとなった。
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