木材学会誌
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57 巻, 6 号
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総説
  • 吉村 剛
    2011 年 57 巻 6 号 p. 329-339
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    外来木材害虫であるアメリカカンザイシロアリは,1976年に東京の住宅で初めてその被害が報告されて以来,現在では日本全土に広くその分布を拡げつつある。アメリカカンザイシロアリの総合的防除には,個々の要素技術の集積である住宅レベルの総合的防除と,地域からの根絶を目指した地域レベルにおける総合的防除の2つのレベルがある。最近の研究成果によって住宅レベルにおける個々の技術的課題は克服されつつあり,今後は根絶に向けた地域レベルでのシステムづくりが鍵となる。予防および駆除における新しいアメリカカンザイシロアリ対策を一つの突破口として,日本における木材保存産業の発展を期待したい。
カテゴリーI
  • 雉子谷 佳男, 高田 克彦, 伊藤 哲, 小川 雅子, 永峰 正教, 久保田 要, 坪村 美代子, 北原 龍士
    2011 年 57 巻 6 号 p. 340-349
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    日本における造林樹種としてのslash pineの有用性を探ることを目的に,南九州で生育した46年生slash pineについて年輪形成と木材材質を明らかにした。slash pineは,スギやヒノキに比べて晩材形成期間においてより活発に細胞分裂をおこなうことがわかった。容積密度数および曲げ性能は,北米産slash pine材とほぼ同じであった。ミクロフィブリル傾角および晩材仮道管長さでは,胸高直径の大きなslash pineにおいて,未成熟材から成熟材への移行がより早い時期におこり,成熟材部での変動が小さかった。日本におけるslash pineでの木材生産は,スギに比べてより効率的に力学的な性質の優れた木材を安定して生産できると考えた。
カテゴリーII
  • スギ流木内の無機物および塩分の分布特性
    阪上 宏樹, 松村 順司, 長野 起子, 飯干 信幸, 前畠 龍三
    2011 年 57 巻 6 号 p. 350-358
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    台風や大雨などの自然災害が起こると大量の流木が発生する。これらの流木はダム機能の低下,および船舶航行の障害,景観の悪化を引き起こすため,回収作業が必要となる。回収された流木は産業廃棄物として処分されるため有効活用が期待されている。本研究では流木の利活用に向けた基礎資料を得ることを目的に,流木および丸太の性状評価を行った。まず,ダムに漂流する流木内部の土砂の混入状況をSEM-EDXA法で分析した結果,無機物は丸太端部付近および外周部に分布し,損傷が無い限り,材内部に混入する可能性が低いことを明らかにした。次に,海水に浸漬させた丸太内の塩分分布をSEM-EDXA法で分析した結果,辺材では浸漬後8週間で全域に塩素が分布することが明らかとなった。心材では4週間まで塩素分布が徐々に広がっていくが,その後は変化しないことがわかった。
  • 超音波伝播速度の低下と残存強度との関係
    後藤 崇志, 冨川 康之, 中山 茂生, 古野 毅
    2011 年 57 巻 6 号 p. 359-369
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    島根県産スギ,ヒノキ,アカマツ,コナラそれぞれの辺材と心材及びブナの辺材を供試し,オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)とカワラタケ(Trametes versicolor)による素材の耐朽性試験(JIS Z 2101(1994))を行った。さらに,柱状試験体にオオウズラタケとカワラタケによる腐朽処理を施した後,超音波伝播速度の測定と部分圧縮試験を行った。腐朽処理した柱状試験体では,オオウズラタケによって腐朽した全ての樹種の辺材とアカマツの心材について3.2~12.9%の質量減少率が認められた。これら腐朽材の厚さ方向での超音波伝播速度は,腐朽処理時に培地と接触していた木口面近傍が最も低下していた。また,腐朽材の部分圧縮強度σe5%及びσe10%(それぞれ辺長の5%及び10%における値)もコントロールに対する比で0.36~0.85となった。腐朽材では超音波伝播速度の低下率とσe5%の残存率との間に統計的に有意な(P<0.01)負の相関関係が認められた。
カテゴリーIII
  • 小山 太, 清水 邦義, 松原 恵理, 吉田 絵美, 近藤 隆一郎
    2011 年 57 巻 6 号 p. 370-376
    発行日: 2011/11/25
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    スギ製材工程で大量に発生する樹皮の有効利用を図るため,スギ樹皮のアンモニア吸着能に着目した鶏ふん堆肥化過程の臭気低減効果について検討した。粉砕処理したスギ樹皮を620ppmに調製したバッグ内のアンモニアガスと5分間接触させたところ99.5%のアンモニアが除去された。鶏ふん堆積物の表面をスギオガクズまたはスギ樹皮で被覆し,堆肥化過程で発生するアンモニアの吸着を試みたところ,スギオガクズは1g当たり11mgのアンモニアを吸着したのに対し,スギ樹皮では33mgに達した。堆肥化後,スギ樹皮中の窒素の形態を調査したところ,水溶性窒素が22%,イオン交換性窒素が23%,有機態窒素47%であり,高い陽イオン交換能に伴うイオン結合だけでなく,共有結合による除去も示唆された。スギ樹皮は,アンモニアガス発生源の表面を被覆するだけで発生量を抑制でき,安価で簡便な臭気対策資材としての活用が期待される。
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