木材学会誌
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58 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
カテゴリーI
  • 関 雅子, 杉元 宏行, 三木 恒久, 金山 公三, 古田 裕三
    2012 年 58 巻 6 号 p. 302-308
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    木材と金属の摩擦は,木材の変形加工の際に考慮すべき重要な因子である。本研究では,木材の変形加工の際に発生する1MPa以上の高圧力下における摩擦特性を明らかにするための基礎的研究として,含水率の影響に着目して検討を行った。垂直荷重Nは3段階(1,5,10kN)に変化させて摩擦係数を測定した。摺動中の摩擦係数μsは含水率の増加とともに増大した。しかし,飽水試料では潤滑効果によりμsは低下した。また,μsは木材が変形することで低下し,大きく圧密された状態では増大した。このことから,高圧下における摩擦特性は木材の変形特性の影響を大きく受けることが分かった。一方で,μsは木材の変形状態に影響を及ぼすことも明らかとなった。
  • 接合方法とモーメント抵抗性能
    野田 康信, 古田 直之, 小松 幸平
    2012 年 58 巻 6 号 p. 309-317
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,木質構造の仕口において,剛節かつ接合強度が部材強度同等の接合構造を実現するため,単板を交差させて重ね合わせて圧密する接合方法を開発した。フェノール樹脂を含浸した厚さ3.3mmのトドマツロータリー単板(Abies sachalinensis)を基材として,単板積層圧密接合法を用いた断面120×180mmのL字形試験体を作成し,そのモーメント抵抗性能を検証した。破壊性状は接合部と腕部の境界からの曲げ破壊が支配的であり,最大荷重時における境界部の存在モーメントの曲げ強度換算値は30N/mm2を上回った。樹脂含浸圧密合板のせん断試験,曲げ試験,および樹脂含浸単板積層材の曲げ試験から得た材料特性から,L字形試験体の変形性能は接合部を剛とモデル化した計算値と同等であること,接合部におけるひずみ分布の測定結果から境界部の曲げ耐力よりも接合部のせん断耐力の方が高いことを確認した。
  • サンドイッチパネルの製造と性質
    大場 正一, 笹田 智貴, 村田 功二, 川井 秀一
    2012 年 58 巻 6 号 p. 318-328
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    各種配向性低密度ファイバーボード,すなわち,平板成型ファイバーボード,水平配向ファイバーボード,押し出し成型ファイバーボードおよび垂直配向ファイバーボードをコアに,板紙または単板をフェイスに使用したサンドイッチパネルを製造し,コアの配向状態がサンドイッチパネルの曲げ性能をはじめとする基礎的材質に与える影響を検討した。その結果,曲げ性能については,垂直配向ファイバーボードをコアにしたサンドイッチパネルの性能が優れ,平板成型ファイバーボードが最も劣った。ただし,1方向の性能に限定すれば,押し出し成型ファイバーボードのボード平面内のファイバー配向方向の曲げ性能が最も高かった。曲げ破壊の形態は平板成型ファイバーボードおよび水平配向ファイバーボードをコアに用いたサンドイッチパネルがすべて,コアの層間(中層)での水平せん断により破壊したのに対し,押し出し成型ファイバーボードおよび垂直配向ファイバーボードの場合は,コア密度,試験体の方向により,異なる破壊形態を示した。サンドイッチパネルのはく離強度と厚さ変化率は,コアであるボード単体の性能に依存し,長さ変化率はフェイスの性能にほぼ依存した。
カテゴリーII
  • 安部 久, 黒田 克史, 山下 香菜, 矢崎 健一, 能城 修一, 藤原 健
    2012 年 58 巻 6 号 p. 329-338
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    わが国の森林面積の約13%を占めるブナ科コナラ属樹木の木材を有効に利用することは国産材の自給率向上につながることが期待できる。本研究では,森林総合研究所が所蔵する日本各地から採集されたコナラ属樹木14種35個体の木材標本を用いて,胸高部位における髄から1~10cmの範囲内での容積密度,道管内こう面積の放射方向の変動を解析した。容積密度は,環孔材の樹種では髄付近で高く,外側に行くにしたがって低くなる傾向を示す個体が多く見られ,放射孔材の樹種は髄から外側にやや増加し,その後減少する個体,髄からほとんど変化のない個体が見られた。放射孔材の密度の変動は道管面積率の変動によるものと考えられた。1個体内での容積密度の変動幅の平均は環孔材を有する樹種では0.082g/cm3,放射孔材を有する樹種では0.041g/cm3であった。今回の研究に用いた樹種の中ではウバメガシの容積密度が最も高かった。
  • 広橋 亜希, 児嶋 美穂, 吉田 正人, 山本 浩之, 渡邊 良広, 井上 広喜, 鴨田 重裕
    2012 年 58 巻 6 号 p. 339-346
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    東京大学付属演習林樹芸研究所にて植栽されたユーカリ6樹種を用いて,年半径成長量,成長応力解放ひずみ,伐採直後の心割れ率,気乾密度,ミクロフィブリル傾角を測定し,樹種間の比較を行った。成長量は個体によるばらつきが大きかった。成長応力解放ひずみと心割れ率は,E.signataE.andreanaE.piperitaの3樹種で大きな値を持つ個体があった。気乾密度,ミクロフィブリル傾角は樹種間で有意な差がみられた。成長が速く,密度も高く,伐採後の割れが小さいと考えられるE.smithiiがもっとも木材利用の観点から有力であると考えた。
  • 高麗 秀昭
    2012 年 58 巻 6 号 p. 347-356
    発行日: 2012/11/25
    公開日: 2012/11/29
    ジャーナル フリー
    接着剤としてMDIを用いたMDF(MDF(MDI))とフェノール樹脂を用いたパーティクルボード(PB(PF))を屋外に暴露し,その耐久性を調べた。つくばに5年間暴露したPB(PF)の曲げ強さ,剥離強さ,釘頭貫通力,側面抵抗力の残存率は46.5,16.9,60.9,28.0%であり,MDF(MDI)は77.1,96.7,86.4,87.8%であった。都城では,PB(PF)のこれらの残存率は24.1,6.73,52.5,22.6%であり,MDF(MDI)では75.1,100,87.9,66.8%であった。気温と降水量がつくばより高い都城のPB(PF)のすべての残存率がつくばより低下したが,都城のMDF(MDI)とつくばには大きな差異はなかった。MDFは表面の平滑性が高く,雨水が表面に滞留しにくい,さらに,繊維の絡み合いの効果により内部に雨水が浸透しにくいため高い耐久性があると考えられる。
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