木材学会誌
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58 巻, 1 号
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総説
  • 仲村 匡司
    2012 年 58 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/28
    ジャーナル フリー
    この総説では視覚刺激としての木材に関連する最近の研究を概説する。あたたかな木材色,変化に富んだ木目模様,まろやかな光沢など,材面に現れている木材特有の外観的特徴は,見る者の心理や生理に影響を及ぼす。海外では,消費者の木製品に対する「好み」の心理学的構造がマーケティングの手法によって解析され,材面の見えの寄与の大きさが指摘される。我が国では,材面の見えを数量的に表現するとともに,観察者が木材に対して抱く印象との対応づけが試みられている。また,製品デザインシステムに組み込む目的で,リアルな木目模様をコンピュータ・グラフィックスによって表現することも行われている。そのような木材が実装された内装が,見る者の心理や生理に及ぼす影響を調べる実験的検討は,内装写真の印象評価から,被験者を実大木質内装に曝露して心理応答だけでなく生理応答指標も同時に測定するものへと移行しつつある。
  • 今井 貴規
    2012 年 58 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/28
    ジャーナル フリー
    樹木が10年程の齢に達すると,幹や枝などにおいてその中心部から心材が形成される。心材の特性が色調・におい・耐久性など木材の諸性質を左右するといった木材利用上の興味に加え,樹木が心材を形成する意義の理解ならびに心材形成の機構の解明といった植物基礎科学的な興味が,長い間研究者を心材研究・心材形成研究へと向かわせてきた。心材形成は生物学的・化学的・物理学的変化を伴う複雑な樹木生理現象である。中でも化学的な変化となる,心材に特有な物質すなわち心材成分の新生・堆積は,これら化合物自体が色・におい・対生物活性を持つことが多いため,直接的に心材特性の発現に結び付けられ得る,心材形成時の最も顕著な変化現象と言えよう。本総説では心材形成について,主に「心材成分の堆積」に着眼して生理学的見地,生化学的見地,組織(化)学的見地,分子生物学的見地等から解説する。
カテゴリーII
  • 松元 明弘, 小田 久人, 有馬 孝礼, 藤本 登留
    2012 年 58 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/28
    ジャーナル フリー
    スギ心持ち柱材の乾燥過程における表面割れの発生を抑制するために,ホットプレスを用いた表面割れ抑制処理を検討した。ホットプレス表面処理における基礎的知見を得ることと,最適な処理条件の確立を目的に,今回は,特に表面割れ抑制の要となるドライングセットの形成に着目し,検討を行った。熱盤温度は150℃,180℃および210℃の3条件,圧締時間は,30 minと60 minの2条件を設定し,処理を行った。その結果,処理温度が高く,処理時間が長い条件ほど,木材表層部のドライングセット量は大きくなり,より深く形成され,その形成深さは最大で約 7 mmであった。一方,180℃60 min処理および210℃60 min処理における処理後の含水率分布は,表面では10%以下に含水率が減少した一方で,内部では逆に含水率の上昇が見られた。なお,今回のホットプレス表面処理により,従来の蒸気式高温乾燥による処理と同程度のドライングセットが短時間で形成されることが示唆された。
  • 松元 明弘, 小田 久人, 有馬 孝礼, 藤本 登留
    2012 年 58 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/28
    ジャーナル フリー
    スギ心持ち柱材の乾燥過程における表面割れの発生を抑制するため,ホットプレスを用いた表面割れ抑制処理を検討した。長さ3 mのスギ心持ち柱材の4材面に表面処理を施した後に仕上げ乾燥を行い,乾燥終了後の表面割れ発生量を指標に表面割れ抑制効果を検証した。表面処理条件は,熱盤温度を200℃,圧締圧力を約0.1~0.15 N/mm2とし,処理時間を30 min,60 min,90 minの3条件とした。その結果,処理材においては,処理時間の違いによる表面割れ面積の差は認められず,また,いずれの処理時間における処理材とも,表面割れ面積が無処理材の8分の1以下に抑えられていた。一方,60 min処理および90 min処理の条件では内部割れが発生しており,処理時間が長くなるに従い,内部割れが増加していた。
  • 関根 伸浩, 澁谷 栄, 谷田貝 光克
    2012 年 58 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2012/01/25
    公開日: 2012/01/28
    ジャーナル フリー
    クロマツとスギの葉油とその構成成分の水溶性と生物活性,加えてこれらの関係性を検討した。水溶性については,クロマツ,スギ葉油の水への溶解量はそれぞれ26.2,21.9(mg/L)となり,α-,β-pineneは,それぞれ1.7,2.1(mg/L)を示した。一方,α-terpineol,terpinen-4-olの溶解量は,それぞれ70.7,81.1(mg/L)となり,葉油とモノテルペン炭化水素のそれより高い値を示した。植物種子発芽抑制活性は,ハツカダイコンへのクロマツとスギ葉油,α-terpineol,terpinen-4-ol(濃度5 ppm,播種1日後)の発芽率はそれぞれ11.9,4.8,0,2.4(%)と低く,活性が示された。ヤマトシロアリへの殺蟻活性も,クロマツとスギ葉油,α-terpineol,terpinen-4-olの半数致死量はそれぞれ60.3,34.8,8.6,6.3(ppm)となり,活性が示された。葉油とその構成成分は,水溶性が高くなるとその生物活性は高くなり,さらに,葉油の水溶性と生物活性には,モノテルペンアルコール類の影響が推測された。
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