木材学会誌
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59 巻, 2 号
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総説
  • 寺島 典二
    2013 年 59 巻 2 号 p. 65-80
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/28
    ジャーナル フリー
    植物細胞壁中のリグニンの三次元高分子構造は,壁中の場所,細胞の種類,植物の種類等によって異なり,不均一かつ多様である。この多様性は「細胞壁の構築は,植物の進化の過程を辿って,多糖類の堆積,モノリグノールの供給と重合,多糖との複合により進む」との視点から体系的に理解できる。すなわち,約4億年前出現したシダ植物および裸子植物では,HG型リグニンによる仮道管壁の防水通道性と微生物等からの攻撃に対する防御性の付与,および力学的強度の付与によって繁栄した。しかし高防御機能の縮合型HGリグニンを含む仮道管は,個体の大型化と長寿命化による世代交代頻度の低下,地球環境の変化への遺伝的適応性の低下をもたらした。多機能の仮道管は,進化した被子植物では通道機能に特化した道管と支持機能に特化した木繊維とに分化し,リグニンもSGリグニンへと縮合度を低減し防御性能を適正化して地球環境の変化への遺伝的適応性を高めた。
カテゴリーI
  • 相馬 智明, 井上 雅文, 稲山 正弘, 大林 宏也, 安藤 直人
    2013 年 59 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,伝統的な接合方法のひとつである割くさびほぞ接合について,その引抜き抵抗機構の解明を試みた。割くさび接合の引抜き抵抗機構を木材のめり込み変形および男木と女木の接触面における摩擦抵抗によってモデル化し,弾性域と塑性域のP-δ関係および降伏変位を算出した。得られた計算結果と実験結果の比較を行ったところ,くさびしろ角度が1/10rad程度の小さな場合には剛性はおよそ一致したが,降伏荷重ならびに降伏変位は計算値の方が小さく算出された。くさびの荷重変位関係では,初期すべりと男木の横摩擦が影響していると考えられる。
  • 高周波空気噴射プレスがボード性能に与える影響
    長田 剛和, 高麗 秀昭, 角田 惇
    2013 年 59 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/28
    ジャーナル フリー
    ホットプレスの加熱と高周波加熱を併用した高周波プレスを用いて高含水率のパーティクルからパーティクルボードを製造し,その性能を解析した。高周波加熱を用いずホットプレスのみでは,プレス時間が8分でボードが製造でき,そのはく離強さが0.192MPaであったが,高周波プレスでは,プレス時間が3分でボードが製造でき,そのはく離強さが0.440MPaであった。高周波プレスの使用によりボード内部の温度が素早く上昇したため,プレス時間の大幅な短縮とはく離強さの増加が達成された。さらに高周波プレスに空気噴射装置を取り付けることにより,プレス時間を2.5分に短縮でき,はく離強さを0.552MPaに向上できた。空気噴射によりプレス時間のさらなる短縮とはく離強さの増加が達成された。そのため,接着剤の添加率を25%削減しても十分なボードのはく離強さを得られることが明らかとなった。
カテゴリーII
  • 高橋 雅和, 阪上 宏樹, 藤本 登留, ヘルマワン アンディ
    2013 年 59 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/28
    ジャーナル フリー
    ホットプレスを用いて短時間かつ省エネルギーで簡易にスギ板材の表面硬さを向上させる圧密処理法の最適条件を検討した。本研究では,スギ辺材と心材を含水率約10%および25%に調整して,熱板温度20℃から140℃で5分間の圧縮工程と1分間の解圧工程を6サイクル繰り返して圧密処理を行い,その性能を評価した。スプリングバックによる厚さの戻り,放射方向密度分布,SEM観察,ブリネル硬さの結果から,辺材では含水率約10%,熱板温度100℃以上,心材では含水率約10%,熱板温度100℃が本研究の圧密処理法での最適条件であることがわかった。実用性を考慮してこれらの圧密材にプレーナー処理を施しても,表層密度の局所的な増大および表面硬さの向上が維持された。実際に使用する材は辺材と心材をともに含むため,含水率約10%,熱板温度100℃が最適条件であると考えられる。なお,今回の実験は塗装処理を前提としたため長期的な寸法安定性は評価の対象外とした。
カテゴリーIII
  • 陶山 大志, 桐田 龍一, 物部 英樹
    2013 年 59 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2013/03/25
    公開日: 2013/03/28
    ジャーナル フリー
    横打撃共振法は簡易な立木材質診断法で,樹幹打撃時の振動・音の共振周波数fと樹幹直径の積dfを診断指標とすることができる。このfの検出に及ぼすハンマー質量の影響を明らかにするため,胸高直径58~107cmの9樹種大径木21本を,質量の異なる8種類(101~3250g)の木製ハンマーで打撃した。全供試木においてfを同定することができ,大径木においてもdfを指標として材質の診断が可能であることが示された。質量の大きいハンマーでは低周波側の周波数ピークが発生しやすくなる傾向であった。ハンマー質量と共振周波数fの検出力の関係を検討したところ,ハンマー質量が増加するにつれfの検出力が高くなる傾向であった(R2=0.54~0.99)。このことから,大径木においては質量の大きいハンマーでfを検出しやすいことが示された。また,軽量性とfの検出力の両面を考慮した実用的なハンマー質量について考察した。
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