木材学会誌
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59 巻, 3 号
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カテゴリーI
  • 滝本 裕美, 安江 恒, 徳本 守彦, 武田 孝志, 中野 達夫
    2013 年 59 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/05/28
    ジャーナル フリー
    106年生の高樹齢カラマツ(Larix kaempferi Carr.)造林木5個体を対象として,仮道管二次壁中層(S2層)のセルロースミクロフィブリル傾角(以下MF傾角)をヨウ素法により測定した。MF傾角の年輪内変動は形成層齢によらず,早材では外側に向かうにつれて減少し,晩材では早材よりも変動が小さかった。早材のはじめから早晩材境界にかけてのMF傾角の減少傾向は肥大成長速度の大小に関わらず,形成層齢の増加に伴い緩やかな減少から急激な減少へと変化した。MF傾角の樹幹内半径方向変動は,晩材では形成層齢の増加に伴い急激に減少した後,緩やかな減少に変化し,30年輪以降その変動は小さくなった。早材では形成層齢の増加に伴う減少は認められなかった。30年輪以降において年輪幅と晩材MF傾角には有意な相関は認められないことから,成熟材部の晩材MF傾角は年輪幅の変動の影響を受けないといえる。
カテゴリーII
  • 土屋 善裕, 樋口 泉
    2013 年 59 巻 3 号 p. 128-137
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/05/28
    ジャーナル フリー
    木質材資源としてあまり有効に活用されていないタケを板材に加工し,活用の一方法としてタケ・ヒノキ接着板を作った。静的曲げモーメントを作用させ接着板の応力と強度について検討した。タケ,ヒノキともに機械的性質が明らかになっていなかったので,繊維方向,繊維直角方向および繊維に対して45度方向の引張試験を行い縦弾性係数,横弾性係数およびポアソン比を決定した。接着板表面にひずみゲージを貼り曲げモーメントを作用させひずみに関する実験を行った。有限要素法による計算を行い接着板の応力を検討した。ひずみに関する実験結果と計算結果はかなりよく一致した。接着板表面ヒノキ側に発生する引張応力が最も大きくなることがわかった。同時に接着界面での応力もかなり大きくなることが分かった。ヒノキおよびタケの板厚の割合を変化させた計算結果から接着板表面ヒノキ側に発生する引張応力が最も小さくなるタケ,ヒノキの板厚の割合がわかった。曲げ強さに関する実験から接着板の強度の向上が確認出来た。
カテゴリーIII
  • 松村 ゆかり, 伊神 裕司, 村田 光司, 松村 順司
    2013 年 59 巻 3 号 p. 138-145
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/05/28
    ジャーナル フリー
    人工林の高齢級化に伴って供給が増加すると予測されている末口径30cm以上のスギ一般材大径材の効率的な製材生産について検討するため,心去り正角を複数本採材する木取りで製材試験を行った。丸太の心材含水率と心去り正角の含水率,および丸太のヤング係数と心去り正角のヤング係数との間には高い相関があり,心材含水率や丸太のヤング係数に基づいて丸太を選別することが,要求品質を満たす製材品を効率的に生産するために有効であることが明らかとなった。また,人工乾燥後の寸法変化と曲がりの発生を考慮し,木取りに応じて製材時の寸法を調整することにより,寸法精度の高い製材品を高歩止りで生産することが可能である。
  • 藤本 清彦, 高野 勉, 奥村 正悟
    2013 年 59 巻 3 号 p. 146-151
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/05/28
    ジャーナル フリー
    これまでの我々の研究から被削材の含水率が高いほど丸鋸切削時の粒子径10µm以下の浮遊粉塵が減ることが明らかになっている。そこで,この結果を応用し,切削前に被削材に水を与えることによって,切削時に発生する粉塵の質量を低減できないかを検討した。被削材としてスギの気乾状態の板目材を用意し,切削前に1日間あるいは3日間水中に浸漬してから切削した場合,切削直前に試験体表面を水を含んだローラで濡らしてから切削した場合,水を与えずに気乾状態のまま切削した場合の4条件で試験を行った。切削には丸鋸盤を用い,切削によって発生した粒子径10µm以下の粉塵を作業者の呼吸器付近の位置でローボリウムエアサンプラを用いて捕集し,その質量濃度を測定した。その結果,被削材を切削前に1日間あるいは3日間水中に浸漬することにより,粒子径10µm以下の浮遊粉塵の質量濃度がそれぞれ約1/2あるいは1/3になった。また,被削材の上面を水を含ませたローラで濡らす実験では,粒子径10µm以下の浮遊粉塵の質量濃度が約半分にまで減少した。したがって,切削前に被削材を水中に浸漬,あるいは被削材表面を水で濡らすことによって,切削時に発生する浮遊粉塵を減らすことができる。
  • 戸田 正彦, 森 満範, 高橋 英明, 狩俣 隆史, 平井 卓郎
    2013 年 59 巻 3 号 p. 152-161
    発行日: 2013/05/25
    公開日: 2013/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,構造用木質面材料の腐朽が釘接合せん断性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,構造用合板と構造用MDFを対象に,褐色腐朽菌であるオオウズラタケおよび白色腐朽菌であるカワラタケによる強制腐朽処理を施した後,釘接合の強度試験を実施した。その結果,腐朽処理によって合板は著しく腐朽し,特にオオウズラタケによって大きな質量減少が生じたものがあったのに対して,MDFは両腐朽菌ともほとんど腐朽しなかった。釘接合の強度試験の結果,合板およびMDFの釘側面抵抗や釘接合せん断耐力は腐朽処理によって低下したが,腐朽処理初期の強度低下は含水率の上昇に起因すると考えられた。ヨーロッパ型降伏理論に基づき,質量減少や含水率を考慮することによって,腐朽した釘接合部の降伏せん断耐力や終局せん断耐力を適切に推定することが可能であった。ただし,釘頭が木質面材料を貫通する場合の終局耐力は,MDFについては現行の設計規準に示されている補正比重や含水率を考慮した低減によって過小な評価となった。
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