木材学会誌
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60 巻, 1 号
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カテゴリーI
  • 7樹種の樹木年輪情報と気候情報との関係
    桃井 尊央, 大林 宏也, 栃木 紀郎, 小林 純, 塩倉 高義
    2014 年 60 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    前報で構築した東京都西多摩郡奥多摩町に生育する7樹種の樹木年輪指数(年輪幅指数:IWar,年輪内平均密度指数:IDar)と同町で観測された気候変数との関係を検討した。その結果,樹木年輪指数と気候変数との間で認められた有意な相関関係の中には,多くの樹種間に共通した相関関係が,(1)IWarと当年1月から3月の月平均気温との間,(2)IDarと当年5月から8月の月平均気温との間,(3)IDarと前年5月から7月の月平均気温との間,(4)IDarと当年6月から9月の月降水日数との間で確認された。さらに,上記した4つの相関関係には樹種による違いも確認できた。また,月平均気温と月最高気温,月最低気温は,樹木年輪指数との相関関係において似た傾向が認められたが,月最高気温の方が月平均気温や月最低気温よりも樹木年輪指数との間に有意な相関関係が多く,その相関係数の絶対値は大きかった。
  • 鈴木 養樹, 黒田 克史, 高野 勉, 張 春花, 鈴木 敏和, 高田 真志
    2014 年 60 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年3月の福島第一原子力発電所爆発事故による放射性物質放出からすでに2年経過したが,福島県内の多くの森林域では,まだ林業施業従事者の作業は制限されている。本研究では,簡易的な森林管理手段として市販のサーベイメータによる樹木内部放射能濃度の推定手法の開発を試みた。検出限界向上のため,遮蔽容器付きGM管サーベイメータを用いて個々の樹木表面汚染密度を測定した。測定後に,伐倒した樹木を樹皮,辺材,心材に分けて粉砕,乾燥した後,Ge半導体検出器によるγ線スペクトロメトリー法でそれぞれの放射能濃度を測定した。両測定値の関係を調べた結果,調査に用いた全ての樹種において,それぞれの部位の放射能濃度(y)と表面汚染密度(x)との関係を関数(y=AxB)で表すことができた。従って,樹木の表面汚染密度による樹木内部の放射能濃度の簡易推定は可能であると考えられる。
カテゴリーII
  • 井道 裕史, 長尾 博文, 三浦 祥子, 宮武 敦
    2014 年 60 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    スギを用いて製造したクロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)について,積層数,ラミナ構成,加圧板の方向に対する外層ラミナの方向,荷重方向に対する試験体の配置を変化させてめり込み試験を行い,各組み合わせによるCLTのめり込み強度性能を明らかにするとともに,めり込み強度性能を簡便に評価する方法を検討した。めり込み試験の結果,めり込み強度性能を決定づけるパラメータは,外層ラミナの方向と試験体の配置であり,積層数やラミナ構成はめり込み強度性能にはあまり寄与しないことがわかった。各ラミナの比例限度応力を用いて,CLTの比例限度応力を推定したところ,推定値と実測値は比較的よく一致した。
  • 柱材におけるインサイジング密度の曲げ強度への影響
    安藤 恵介, 服部 順昭
    2014 年 60 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    レーザインサイジングの木材強度への影響を調べるために,スギ柱材を用いてインサイジング密度4万個/m2までの3水準とインサイジングを行わない水準の合計4水準の試験体について,曲げ強度試験を,荷重方向をインサイジング方向として行い,インサイジング密度1万個/m2についてはインサイジング方向と直交についても行った。その結果,今回用いたインサイジング密度1万個/m2以上の条件では,明らかに曲げ強度は低下することが分かった。また,インサイジング密度1万個/m2でのインサイジング方向に対する荷重方向の影響は見られなかった。
  • せん断強度の分布形と低下速度
    柳川 靖夫, 満名 香織, 和田 博
    2014 年 60 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    2種類の木材保存剤(ACQ,AZP)で処理したラミナおよび無処理のラミナを使用して,2種類の接着剤(PRF,API)により集成材を作製した。これらを,(1)10年間の屋外暴露試験,(2)25mm幅および10mm幅のブロックせん断試験片の2年間の屋外暴露試験,(3)25mm幅のブロックせん断試験片の1~20回処理の減圧加圧試験,に供した後せん断強度を測定し,分布形への適合性を調べた。その結果,(3)では適合する分布形に関して明確な傾向は認められず,(1)および(2)では,劣化が進行すると一部では2Pもしくは3Pワイブルに適合する可能性が示された。横軸を処理回数もしくは暴露月数の平方根とし,縦軸を対初期せん断強度平均値比とした図より1次回帰式の傾きを求め,せん断強度の低下速度を比較した。ACQで処理した試験体では,(1)~(3)の間でせん断強度の低下速度に差が認められた。AZPで処理された試験体および木材保存剤無処理の試験体では,(2)のブロックせん断試験片の幅による低下速度の差は明確ではなく,また,(1)の屋外暴露試験では,保護塗料が無塗布で西面から採取した試験片でもせん断強度の低下速度はほぼ0であった。
カテゴリーIII
  • 陶山 大志
    2014 年 60 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    横打撃共振法によるスギ立木の心材色の推定を試みた。本法は樹幹直径Dと打撃された樹幹の振動の共振周波数Frの積DFrを診断の指標としている。DFrが低いと心材含水率Mcは高くなり,Mcが高いと心材の明度Lは低くなる,それゆえDFrが低いとLは低くなる可能性がある─という仮定に基づいて推定を行った。本法によって700本を測定し,うち70本を伐採し心材色を調査した。伐採木のDDFrの回帰直線に対する各個体のDFrの増減率R(%)を算出し,RLを推定する指標とした。その結果,RMcr=0.71)およびMcLr=0.70)に負の相関が,RLに正の相関(r=0.53)が認められた。RLの相関係数は高くなかったが,Rによって心材の明度Lを3階級にグループ分けすることが可能であった。そして,間伐施業において本法による心材色を推定する意義について考察した。
  • 亀山 雄搾, 安藤 康裕, 大野 英克, 安齋 祐輔, 石栗 太, 横田 信三, 飯塚 和也
    2014 年 60 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    ヒノキ正角実大材(10.5cm角)の背割り深さ(材面の幅に対して30及び50%)及び荷重面に対する方向が,座屈,曲げ及びせん断性能に及ぼす影響を調査した。座屈性能,曲げヤング係数及び静的曲げ試験における比例限度比は,背割りの有無の間で有意な差は認められなかった。一方,背割りが荷重面の反対に存在する場合,曲げ強度は,いずれの背割り深さにおいても有意に低下する傾向が認められた。また,逆対称4点荷重法により求めたせん断強度は,背割り面が荷重面と直交する場合に大きく低下した。しかしながら,曲げ強度及びせん断強度は,背割り深さが50%までであれば,建設省告示第1452号に示すヒノキ無等級材の基準強度を満たしていた。座屈強度は,全ての試験体において,日本建築学会木質構造設計規準に基づき,ヒノキ無等級材の圧縮基準強度を用いて算出した座屈強度値を上回った。
  • 橋田 光, 田端 雅進, 久保島 吉貴, 牧野 礼, 久保 智史, 片岡 厚, 外崎 真理雄, 大原 誠資
    2014 年 60 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2014/01/25
    公開日: 2014/01/28
    ジャーナル フリー
    未利用なウルシ材を染色用途に利用するため,ウルシ材の織布への染色特性を検討した。ウルシ材フェノール成分の効率的な熱水抽出条件を検討した結果,炭酸ナトリウムの添加が有効なことを明らかにした。抽出液による染色特性を検討したところ,ナイロン,羊毛及び絹で良好な染色性を示した。また,炭酸ナトリウム添加抽出による染液に酢酸を添加することで,熱水抽出より効率的な濃染が可能であり,金属塩を用いた媒染においてもより濃色に発色することが示された。洗濯処理により,未媒染の染色布は大きく脱色したが,媒染や濃染により脱色の抑制が可能であり,特に酢酸鉄(II)を用いた媒染による抑制効果が高かった。また,ウルシ材による染色布は,黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対し,明確な抗菌性を有することを明らかにした。
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