本研究の目的は,水性高分子-イソシアネート系接着剤で接着した集成材中の接着剤塗布量分布を,そのX線透過像から得られる情報から非破壊的に推定する方法を開発することであった。集成材のX線透過像を接着前と接着後の2段階に渡って撮影し,それら2段階におけるX線透過像の濃淡値を比較することにより,集成材接着面における2次元的な接着剤塗布量分布を推定する手法を提案した。妥当性検証の結果,本手法は精度の良いものであり,とくに集成材の接着面における接着剤の多い部分,少ない部分といった分布傾向をうまく可視化できることが示された。この手法は接着剤の2次元的分布を集成材ごとに非破壊で測定可能であることから,木材接着に関するさまざまな基礎研究への活用だけでなく,産業的な応用も期待できる。
木材を用いた家の価値が見直されている中で,木材から放散される揮発性成分の機能性が注目されている。季節ごとの温度や湿度の変化の大きい我が国においては,木材から放出される揮発性成分も大きく変化していると考えられる。本研究では,スギ(Cryptomeria japonica)の無垢材を内装に用いた建物(A棟)と,表面に塗装を施された内装材またはビニールクロスで覆われた内装材を用いた建物(B棟)の室内において,年間を通して揮発性成分を定期的に捕集し,ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)分析による比較を行った。その結果,木材の揮発性成分の大半を占めるセスキテルペン類の量は,どちらの棟においても冬季より夏季で高く,年間を通してB棟よりもA棟の方が常に高いことが明らかになった。
木粉をフィラーとした混練型ウッドプラスチック(以下ウッドプラスチックと略す)を無機フィラー充填プラスチック等の汎用プラスチック分野に展開するために,新たな木粉製造方法の提案とその木粉を利用した複合材の特性を評価した。新たな木粉粉砕方法として,ディスクミルを用いた段階的な湿式粉砕と乾燥及びこの乾燥した木粉を解繊粉砕する手法を提案した。この結果,粒径が均質化した木粉を簡単に得られるとともに,木粉表面に複合材として補強効果が期待できる毛羽立ち(=フィブリル)を形成することが確認された。この木粉を用い,ポリプロピレンと複合化することで,フィブリルの効果と予想される補強効果も実現した。この成果により,機能と均質性を求められる自動車等汎用プラスチック分野にウッドプラスチックが展開できる可能性を見出した。
◎訂 正
木材学会誌62巻6号に誤りがありました。
訂正申し上げます。
p. 282,左上から9~10行目
誤:停留回数,停留時間を増加させたが
正:停留回数,停留時間を減少させたが
p. 279,左上から28行目
誤:LifeTouc, NEC
正:LifeTouch, NEC