木材学会誌
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65 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
カテゴリーI
  • 古川 隼人, 藤原 裕子, 簗瀬 佳之, 澤田 豊, 藤井 義久
    2019 年 65 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    年輪接触角φを変化させて気乾ヒノキ材を平削りした際に生じる毛羽立ちについて,画像解析と顕微鏡観察から生成機構を考察すると共に,切削時に検出されたAEから毛羽立ちの定量評価が可能か検討した。仕上面の画像上で白塊として認識される毛羽を画像処理で抽出し,毛羽立ちの程度を毛羽の面積率として定量評価できた。φに対して毛羽の面積率は下に凸の形状に変化し,その値は刃先角によらずφ=0°で最大値(6-10%)を,φ=45°付近で最小値(3-4%)をとった。SEM観察から,毛羽は放射組織の近傍で掘り取られ切屑として分離できなかった細胞群が刃先に押し潰される等して一塊となり,刃先通過後に回復して浮き出たもので,その生成には放射組織での局所的な切削形態の変化が関与することが示唆された。また切削時のAE事象数と毛羽の面積率との間には正の相関が認められ,切削時のAEから毛羽立ちの程度を評価しうることが示された。

  • 張 雲翔, 小林 研治, 安村 基
    2019 年 65 巻 2 号 p. 71-82
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    CLTパネル脚部の接合部の仕様を引きボルトとしたもの,およびビス留め金物のみとしたものについて,小幅CLT耐力壁の静的水平加力実験および仮動的水平加力実験を行い,これらの接合部の違いがCLT耐力壁の力学特性および地震時挙動に及ぼす影響について調べることにより,ビス留め金物接合の変形性能を考慮した合理的な耐力壁の可能性について検討した。また,時刻歴地震応答解析の結果を実験結果と比較することにより,解析モデルの妥当性を調べ,これを用いて各耐力壁における地震入力と応答変位の関係を調べた。ビス留め金物を用いることにより,静的水平加力実験において降伏耐力,最大耐力が20%高くなり,仮動的水平加力実験では同一の地震波に対して最大応答変位が小さくなる傾向が見られた。さらに時刻歴地震応答解析結果からも同様な傾向が確認できており,ビス留め金物接合のみによる耐力壁の有効性が示唆された。

  • ランダム効果を組み込んだ階層モデルのベイズ推定
    高麗 秀昭, 渡辺 憲, 林 知行
    2019 年 65 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    MDFの耐久性を評価するために21年間屋外に暴露し,その曲げ強さ (Modulus of rupture (MOR)) の低下をベイズ統計で解析した。MDFは21年間の屋外暴露後でも耐久性が示された。MORの分散が不規則に変化するためその事後予測分布は暴露時間によって大きく異なった。そのため,MORの分散を一定としたモデルを用いてMORの事後予測分布をベイズ推定したが,適切な事後予測分布を推定できなかった。そこで,MORの分散の不規則な変化をランダム効果としてこれを組み込んだ階層モデルを構築し,MORの事後予測分布をベイズ推定した。ランダム効果を組み込んだ階層モデルによりMORの事後予測分布を適切に推定することが可能となった。また,分散を一定としたモデルとランダム効果を組み込んだ階層モデルより95%予測区間を推定したが,後者のモデルの方が前者のモデルより適切だった。

  • 高麗 秀昭, 渡辺 憲
    2019 年 65 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    パーティクルボードの強度性能(曲げ強さ,剥離強さ,側面抵抗力,釘頭貫通力)を測定し,これらを従来の統計手法およびベイズ統計を用いて解析した。すべての強度性能が正規分布に適合可能であった。従来の統計手法では平均や分散は一点の真値を持つ定数と考えるため,パーティクルボードの強度性能のように平均や分散がばらつく場合,強度性能の確率分布は適切に推定できなかった。ベイズ統計は平均と分散に分布があるものとして考えるため,これらの分布を考慮して強度性能の確率分布も適切に推定できた。パーティクルボードの強度性能のようにばらつきの大きなものは,平均や分散が分布していると考えた方が現実的である。このため,ベイズ統計はパーティクルボードの品質管理に大いに役立つと考えられる。

カテゴリーII
  • 工藤 佳世, 大山 幹成, 栗本 康司, 足立 幸司, 高田 克彦
    2019 年 65 巻 2 号 p. 102-109
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    平成26年秋,日本海沿岸東北自動車道の延伸工事に伴い,秋田県にかほ市の象潟インターチェンジ付近の工事現場から大量の埋没木が発掘された。これらは紀元前466年の鳥海山の山体崩壊による象潟岩屑なだれによって地中に埋まったと考えられ,学術的にも地域の文化遺産としても非常に貴重なものである。本研究では今後の埋没木の利活用や研究のための基礎的な知見を収集するために,埋没木の樹種を同定し解剖学的特徴や材色を明らかにした。埋没木39点について樹種同定を行った結果,クリ,コナラ属,ケヤキ,トチノキ,ブナ属,アサダ,スギが同定された。埋没木の材色は現生材とは異なり,クリおよびコナラ属は黒色,ケヤキは深緑色,ブナ属は暗い黄土色,トチノキは暗い黄灰色,アサダはこげ茶色,スギは緑灰色から茶色を呈していた。今後,樹種同定結果をもとに埋没木の強度特性や化学成分,材色変化機構との関連性を解明することが必要である。

  • 田鶴 寿弥子, 松本 康隆, 中山 利恵, 杉山 淳司
    2019 年 65 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2019/04/25
    公開日: 2019/04/28
    ジャーナル フリー

    従来の茶室建築研究は,様式,構造,意匠,変遷などに重きを置いたものが多く,使用されている部材の樹種については数寄屋大工や建築家の目視に頼ったものや伝承によるものを主としていた。近年,樹種識別の重要性が周知され,茶室における科学的な樹種調査がようやく行われつつある。本研究では,数寄屋大工笛吹嘉一郎による三重県伊賀市に位置する芭蕉翁故郷塚「瓢竹庵」に注目した。瓢竹庵では,嘉一郎自筆と考えられる茶室見積書が現存しており,柱や構造材,天井や床など,計画段階での部材ごとの樹種や数量などが74点について記されている。本研究ではそのうち32部材について樹種調査を行い,当時の用材観ならびに材料変更について明らかとすることができた。

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