木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
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68 巻, 2 号
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ミニレビュー
  • 小川 敬多
    2022 年 68 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2022/04/25
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    木質接合部の力学性能は試験により評価できるが,耐力発現機構を知るためには別途解析が必要である。筆者はこれまでに理論的な解析を試みてきており,具体的には,耐力発現の力学モデルを構築し,それに基づいて接合部(あるいは耐力壁)の力学挙動の理論的推定式を導いた。試験結果が推定結果と一致する事を確認し,仮定の妥当性を検証した。これを可能にするのが,(1)接合部での局所的な変形の幾何学的表現と(2)要素レベルでの力学的応答の解明である。本報ではこれに関わる具体的な内容について,筆者の取り組みを中心に概説する。

カテゴリーII
  • 静岡県産スギ精英樹交配家系等について
    池田 潔彦, 山本 茂弘, 袴田 哲司, 山田 晋也
    2022 年 68 巻 2 号 p. 66-76
    発行日: 2022/04/25
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    静岡県産スギ精英樹交配家系が植栽された林分で高ヤング率が推定された立木から挿し木苗をクローン増殖後,苗畑内の試験区に植栽し,若齢期における立木の応力波伝播速度(立木Vp)と生長形質の年次変動を計測した。また,それらを6~10年時に伐採した丸太ヤング率を計測し,若齢期における材質評価手法の適用について検証した。各系統の立木Vpは,苗植栽後の2~10年時にかけての年次変動に伴う系統間差が認められ,各計測年次間における回帰式が高い決定係数となり系統間差が継続していることが窺えた。また,苗植栽後6~10年時に伐採した丸太の動的ヤング率(丸太Efr)でも系統間差が認められ,各系統の立木Vpと丸太Efrとの回帰式の決定係数も高い値であったことから,若齢期におけるヤング率を非破壊で評価する手法として立木Vpは有効と考えられた。更に,丸太から採材した髄から5年輪までと6年輪から外周部のEfrの回帰式が高い決定係数であったことから,若齢期の段階で高ヤング率のスギ精英樹交配家系の系統はその後も同様の材質を形成する可能性の高いことが示唆された。

  • 促進劣化処理がせん断強度及び接着性能に与える影響
    石原 亘, 宮﨑 淳子, 高梨 隆也, 大橋 義徳, 土橋 英亮, 兵野 篤
    2022 年 68 巻 2 号 p. 77-87
    発行日: 2022/04/25
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    5層5プライのカラマツおよびトドマツCLTについて,平成12年建設省告示第1446号に定められる3つの使用環境(乾燥環境,断続湿潤環境,常時湿潤環境)を想定した種々の促進劣化処理(煮沸法1回および2回,減圧加圧法1回および2回,加熱冷却法6回)を行い,面外せん断強度試験により強度残存率を求めた。その結果,各使用環境における強度残存率は乾燥環境で約90%,断続湿潤環境で約80%,常時湿潤環境で約60%となった。また,せん断試験体と長さ方向にマッチングさせた剝離試験片により,同様の促進劣化処理後に接着層の剝離率を算出した。強度の減少率に比べて剝離率は大幅に低い値を示した。このことから,接着層に近接する木部の劣化がせん断強度の低下に影響を与えている可能性が示唆された。

カテゴリーIII
  • 高梨 隆也, 山田 実歩, 松本 和茂, 渡辺 誠二, 大橋 義德, 石原 亘, 植松 武是
    2022 年 68 巻 2 号 p. 88-96
    発行日: 2022/04/25
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    カラマツの成熟材部から採材されるラミナの材料特性を検証することを目的とし,末口径20cm以上の原木から採材したラミナ原板 (従来ラミナ) および,末口径26cm以上の原木の成熟材部から採材したラミナ原板 (側取りラミナ) の縦振動ヤング係数およびねじれの計測を行った。また,製材厚さおよび横切り回数と縦継ぎラミナの製造歩留まりの関係を調べたほか,集成材およびCLTで製造可能な強度等級のシミュレーションを行った。側取りラミナは従来ラミナに比べ縦振動ヤング係数は高く,ねじれは小さかった。厚さ30mmの縦継ぎラミナの製造時,側取りラミナでは原板の製材厚さを35mm,横切り回数を原板1枚に対して1回としたとき歩留まりが最大となった。側取りラミナでは集成材で対称異等級構成E150-F435,CLTでMx120およびS120の強度等級が実現可能であった。

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