木材学会誌
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68 巻, 3 号
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カテゴリーII
  • 渋井 宏美, 佐野 雄三
    2022 年 68 巻 3 号 p. 107-116
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル フリー

    軟X線写真法は,木材の密度プロファイルの取得をはじめとして,木材科学および関連分野において広く用いられてきた。しかし,樹皮の構造解析には汎用されてはいない。そこで,北海道産12樹種の樹皮組織の軟X線写真撮影を行い,樹種ごとの特徴を調べた。高コントラストの軟X線透過像が得られた。各樹種の濃淡パターンは,樹皮の解剖学的な特徴とともに,カルシウム(Ca)結晶の偏在を反映していることが明らかになった。この結果から,軟X線写真法は植物全般に普遍的に存在するCa結晶の樹皮組織における集積場所を可視化するのに有効であると言える。光学顕微鏡観察では,同一の樹皮組織内に複数の形態タイプのCa結晶が存在する場合でも,厚壁組織にはもっぱら菱形結晶が随伴することが明らかであった。菱形結晶は,他のタイプのCa結晶とは機能が異なり,厚壁組織の力学的な機能を補強する役割をもつことが示唆される。

  • 千原 鴻志, 佐野 雄三, 熊木 俊朗
    2022 年 68 巻 3 号 p. 117-123
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル フリー

    北海道北見市大島2遺跡で調査された擦文文化後期~晩期(約11~12世紀)の竪穴住居跡4軒より出土し,用途推定と樹種同定の結果については既に報告済みの計166点の炭化材について,肉眼観察と年輪幅測定を実施した。166点中97点の試料について,原木の径級と加工法を推定することができ,このうち95点は小径の丸木材と成木の割材に分けられた。小径の丸木材は,スノコ状の構築物(敷物と推定)に多用され,約3分の2がヤマナラシ属であった。一方,成木の割材は垂木などに利用され,コナラ属が約3分の2を占めていた。この結果から,原木の径級と加工法が建築における木材の用途や樹種選択に影響を与えていたと考えられる。また,コナラ属の平均年輪幅は他樹種・群に比べて小さく約0.58mmであった。この結果は,コナラ属材は遺跡周辺の天然生林から採取され,適度な強度と加工性を備えていたために多用されたことを示唆している。

カテゴリーIII
  • 京都府産原木からラミナを製造する場合における予測手法の有効性および原木測定コストの検証
    岸 和実, 神代 圭輔, 明石 浩和, 足立 亘, 渕上 佑樹, 古田 裕三
    2022 年 68 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル フリー

    原木段階における製材品の簡便な強度等級予測手法の開発を目的として,京都府産原木を対象に推定密度を用いた原木の強度等級判別によるラミナの強度等級予測の有効性を検証した。また,山土場における原木の強度等級判別コストについても検証した。その結果,原木の強度等級判別に推定密度を用いた場合,各強度等級のラミナの出現割合は実測密度を用いた場合と大差なかった。さらに,動的ヤング係数が9GPa以上の原木を選別することでL100のラミナの出現割合が1.6倍になるなど,ラミナ製造における原木段階での強度等級判別の有効性が確認できた。また,強度等級判別コストにより原木の購入単価は上がるものの,強度等級判別した原木を選択的に購入できるため,結果として原木の購入費用は強度等級判別しない場合と比較して約30%削減できた。以上のことから,推定密度を用いた原木の強度等級判別は,実用的かつ効果的な手法であると判断できる。

  • 金 光范, 周 晓莹, 沈 聪浩, 张 克誉, 翟 睿, 朱 春鳳, 中川 明子
    2022 年 68 巻 3 号 p. 132-138
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル フリー

    本研究は水酸化ナトリウム (NaOH)/亜硫酸ナトリウム (Na2SO3)/チオ尿素 (CS(NH2)2)/尿素 (CO(NH2)2) 水溶液を用い,120~140℃でポプラ (Populus simonii var.) の枝のリファイナー機械パルプ(RMP)を前処理し,前処理条件がRMPの酵素糖化性に与える影響を調べた。その結果,NaOH添加率4%,Na2SO3添加率12%,CS(NH2)2添加率13%,CO(NH2)2添加率16%,処理温度130℃,処理時間60分間,浸漬時間15分間,およびパルプ濃度20%の条件で,最も良い結果が得られた。NaOH/Na2SO3/CS(NH2)2/CO(NH2)2水溶液前処理によるRMPのグルコース転換率は70.2%で,NaOH/CS(NH2)2/CO(NH2)2水溶液前処理によるグルコース転換率の63.7%に比べて高かった。

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