福祉社会学研究
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14 巻
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【会長講演】
  • 藤村 正之
    原稿種別: 講演記事
    2017 年14 巻 p. 5-24
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     本講演の主題は,福祉社会学の研究において,もう一度社会学や社会科学の

    問題関心を意識しながら取り組んでみてはどうかということである.福祉社会

    学の登場は,業績主義が浸透する社会において,1960 年代以降,性・年齢・

    障害・エスニシティなどの属性要因に基づく問題が浮上してきたことと軌を一

    にするといえよう.その際,人間の内なる自然への関心として福祉社会学が,

    人間の外なる自然への関心として環境社会学が登場したと位置づけることがで

    きる.福祉社会学が取り組むべき現代の社会変動として少子高齢化,リスク社

    会化,グローバル化の3 つを考えることができる.それらの事象を分析するた

    めの社会学的認識をあげるならば,中間集団の栄枯盛衰,経済と社会への複眼

    的視座,資源配分様式(自助・互酬・再分配・市場交換),関係性の社会的配

    置(親密性・協働性・公共性・市場性),社会科学の原点としての規範と欲望

    の相克・相乗などの論点が考えられる.21 世紀に向けては,生とグローバル

    の対比,福祉社会や共生社会などの理想モデルの探索,公共社会学との接点の

    検討などが福祉社会学の課題となっていくであろう.

【特集論文】領域横断性――創造的活動との接点から福祉社会を考える
  • 井口 高志, 森川 美絵
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 27-35
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
  • 〈郊外〉となった場所を/で〈分解〉する
    猪瀬 浩平
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 37-49
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    福祉と農業が語られる時,そこで期待されるのはたとえば障害者や高齢者本人にとってリハビリテーションになること,あるいは稼ぎの仕事となることの

    いずれかであることが多い.重要なのは,新しい事業を如何に〈生産〉するかであり,障害者や高齢者はその事業を〈消費〉する存在として位置づけられる.

    この眼差し自体は,決して新しいものではない.裏側には,賃労働に適した存在を丁寧に取り込みながら,そこに適さない存在を同じように丁寧にケアの対

    象に振り分ける流れがある.

     それに対して,筆者自身の活動のフィールドである,見沼田んぼ福祉農園は,埼玉県の総合政策部土地政策課(現土地水政策課)が,見沼田んぼの治水機能

    の担保と荒地化対策の文脈で企画・立案した「見沼田圃公有地化推進事業」をうけて始まっている.福祉政策としても,農業政策としても,明確に位置づけ

    られていない.

     本稿は,見沼田んぼとその周辺の地域史と見沼田んぼ福祉農園に関わる人びとの個人史に留意しながら,高度経済成長期に周縁化された農業と周縁化され

    た障害者の二つの問題系が交差する中で「見沼田んぼ福祉農園」が如何に生まれ,活動を変化させながらも持続していく,その〈分解〉の過程を描く.

  • ホームレス支援の事例を通じた「宗教の社会貢献」の検討
    白波瀬 達也
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 51-64
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    第二次世界大戦が終わるまで,Faith-Based Organization(FBO:信仰に基づく組織)は日本の社会福祉領域において大きな役割を果たしてきた.第二次

    世界大戦後,社会福祉は国家責任となった.それによって,日本の宗教組織は社会福祉領域から排除されがちになった.

    しかしながら,福祉国家の危機を背景に社会福祉における国家の役割は大きく変わってきた.こうした文脈においてFBO は社会福祉領域への再参入し始めるようになっている.

    特にホームレス問題など,新しい社会問題において大きな存在感を持っている.ホームレス支援をする際に布教を積極的におこなう組織がある一方で,

    両者を明確に切り分けて活動をおこなう組織もある.

    本稿ではホームレスを支援するFBO に焦点を当て,それらの活動の社会的役割を筆者が考案した4 象限マトリックスを用いて説明する.

【公募特集論文】シティズンシップとその外部――複数の排除,複数の包摂
  • 特集によせて
    亀山 俊朗
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 67-73
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー
  • EU 諸国における移民の福祉の比較分析
    寺田 晋
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 75-94
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     移民と福祉国家の関係に注目する従来の研究はグローバル化のもとでの福祉国家の持続可能性に関心を向け,移民をもっぱら福祉国家に危機をもたらす存

    在として捉える傾向があった.近年,EU 諸国を対象とする研究においては,こうした傾向に変化がみられる.

    移民の貧困という研究課題を提示したD. セインズベリーの研究以降,福祉国家にとっての移民ではなく,移民にとっての福祉国家に着目する研究が行われるようになってきている.

    とくに注目されるのは,移民の貧困率や市民と移民の貧困率の差にみられる国ごとの違いが何によってもたらされているのかという問題をめぐる議論である.

    この論文では,シティズンシップ研究の観点から,移民の貧困をもたらす要因に関する近年の比較研究の成果を整理するとともに,

    そこに本論文独自の分析を加えることで,移民の貧困に関してどのような仮説がどの程度まで検証されており,どのような研究課題が残されているのかを明らかにする.

    本論文は,先行研究が考えられる要因のうち統合政策の効果を検討してこなかったことを明らかにし,政策指標を利用した分析によって統合政策が貧困にあたえる効果を検証する.

    そのうえで,論文の最後では現在までの研究の限界を明らかにし,今後検討されるべき課題を提示する.

  • モラル・エコノミーとシティズンシップ
    冨江 直子
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 95-119
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     米騒動は,米価の高騰に苦しんだ人びとの生活要求の叫びであった.米を求める民衆の蜂起は,日本全国に拡大し,大暴動となった.

    「米騒動後」の社会においては,普通選挙運動や労働運動を中心とする社会運動が大きく飛躍し,

    近代的市民の諸権利獲得運動の新たな段階の到来が語られた.米騒動は,民衆の生活要求というものが,

    政治的・社会的に無視することのできない大きな力をもつことを知らしめたのであった.

     しかし,米を求める民衆の暴動と「米騒動後」の社会とは,無媒介につながっていたわけではない.

    米騒動は,同時代の知識階級の人びとによる意味づけの過程を経て,「米騒動後」に来るべき社会構想へと媒介されていった.

     本稿は,生存権への関心から,米騒動をめぐる〈意味づけの政治過程〉を分析する.

    近世と近代の二つの「生存権」論が交差し,交替していく過程をそこに見ることができるからである.

    米騒動は,近代社会における市民の権利義務――シティズンシップ――としての生存権への道の始点に位置づけられた.

    それは同時に,伝統的世界における民衆の生存権――モラル・エコノミー――を求める道の終点でもあった.

  • 「フリースクール」の法制度化とシティズンシップの再編
    森田 次朗
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 121-143
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本の義務教育制度の枠外で不登校児童生徒を受け入れる「フリースクール」の活動とその法制化の取り組みを題材に,

    フリースクールではいかなる社会的排除/包摂の機制が働いているか,また,そうした法制化の意義と課題とは何かについて考察した.

     結果,前者の問いについては,フリースクールとは子ども中心の名のもと,

    不登校児童生徒を学びと承認という双方の観点から学校外で柔軟に包摂しようとする実践であること,

    他方で現状ではフリースクールには卒業資格が認められず,また低所得層を排除する機制が存在することが明らかになった.

    後者の問いについては,上記フリースクールの限界を解決すべく,不登校問題の支援者により推進されてきた「多様な教育機会確保法案」(2015 年)を取り上げ,

    その枠内では,個別学習計画という届出制により年齢や国籍によらず義務教育上の卒業資格と一定の公費助成が認可される点で,

    就学をめぐるシティズンシップの諸権利(学習権)の適応範囲と内容が拡張されうること,ただし社会階層間で利用格差が拡大する危険性を法案の賛成/反対派は看過しており,

    学校による包摂の複数性を論じる際には格差是正の視点が重要になることが明らかになった.

     本稿からの示唆としては,従来の移行研究や社会政策学が見落としてきた多元的な社会的包摂の可能性,すなわち休息権が保障され能力主義的な価値が相対化されうる「居場所」の重要性が明らかになった.

【自由論文】
  • 「1 年目の壁」はいかにして超えられるか
    大久保 将貴
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 147-167
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,介護労働における早期離職率の規定要因を明らかにし,さらに,2009 年10 月より2 年半の時限措置として導入された「介護職員処遇改善交付金」が,早期離職率にいかなる影響を与えたのかを検証することである.

    介護保険制度の創設以来,要介護高齢者が増加の一途をたどる一方で,介護労働者は慢性的に不足しているため,今日の介護労働をめぐる最も大きな問題は人材不足であるとも言われている.

    こうした人材不足の背景には早期離職率の高さがある.今後のさらなる介護労働需要の高まりを考えると,早期離職率の規定要因を解明し,

    「介護職員処遇改善交付金」という過去の政策介入がどれほどの効果をあげたのかを明らかにすることは,持続可能な介護保険制度を運営する上で喫緊の課題である.

    本稿では上記の問題意識に基づき,全国の介護保険サービス事業所を対象とした大規模調査を用いた分析を行った結果,以下の3 点が明らかとなった.

    第1 に,正規職と非正規職では早期離職率の規定要因が異なる.第2 に,早期離職率と離職率では正規・非正規ともに規定要因が異なる.

    第3 に,介護労働者の離職を防ぎ定着を図る目的で2009 年に実施された「介護職員処遇改善交付金」が早期離職率に与えた効果は限定的である.

  • 「ニーズ」をめぐる政策論および実践論との関係から
    佐藤 惟
    原稿種別: 研究論文
    2017 年14 巻 p. 169-191
    発行日: 2017/05/31
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,近年社会科学の分野で注目を集める「希望」の概念を社会福

    祉領域に適用することが,「ニーズ」をめぐる議論に与える影響を探ることで

    ある.本稿では特に,「ニーズ」や「デマンド」,「希望」に関する議論と,介

    護保険制度導入前後の時期に出された行政文書から,高齢者福祉領域における

    政策理念の転換を分析した.その結果,1990 年代前半まで「ニーズ」と「デ

    マンド」の相違に関する議論が主流であったのが,2000 年前後からは,「ニー

    ズ」と「希望」の関係への言及が増えていた.介護保険制度の導入に当たって

    は,高齢者の「希望」に基づき「その人らしい生活」を送ることが,「尊厳の

    保持」につながることが述べられ,それまでの「ニーズ」とは別の視点が現れ

    ていた.

     「デマンド」に比べて「希望」は,自己決定の土台となる概念でもあり,介

    護保険制度が掲げる「自立支援」や「尊厳の保持」と親和性の高いものである.

    ミクロ実践の場では,「信頼関係構築」のためにも,「希望」の把握が欠かせな

    い.一方で,本当に支援が必要な社会的マイノリティの存在を見逃さないため

    にも,マクロ政策においては「希望」とは別の基準による議論が必要であり,

    「社会的判断に基づくニーズ」を語ることがあくまで重要な意味を持つ.「希望」

    の概念を導入することで,「ニーズ」が指し示す範囲は客観的ニーズとしての

    あり方に収束し,その輪郭が明確になってくる.

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