社会学領域の組織理論の特徴として,以下の4 点を示す.第一に,社会学領
域の組織理論は比較的新しく,学際的である.第二に,たとえばマルクス理論
など,社会学領域の多くの理論が労働者への関心にもとづいているが,組織理
論は組織への関心から出発している.組織理論の源流は,ウエーバーの官僚制
に関する研究に遡る.ウエーバーは, 組織のフォームは多様であり,どのフォ
ームが有効であるかは,組織を取りまく諸条件によって異なることを示した.
第三に,組織理論では,そういった立場にある人々の判断は必ずしも論理的で
はなく,自分たちの利益を守るための判断に偏りがちであり,日常の活動で対
応をせまられる課題からは目を背ける傾向があると想定する.第四に,組織の
戦略的対応について,environment やinstitutional context との関わりを重視
する.とりわけエコロジー・セオリーと新制度学派の諸理論は,組織理論の体
系化に多大の貢献をなしたが,それぞれのパースペクティブは大きく異なって
いる.本稿の後半では,組織理論の新しい展開として,エコロジー・セオリー
から派生した種別分類論と,新制度学派内で展開されているinhabited
institutionalismを紹介する.これらの動向は,組織理論が未だに発展途上にあり,
新しい視点を開拓し続けていることを示す.
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