福祉社会学研究
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2004 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 副田 義也
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 5-29
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    This paper discusses the following three matters.1) Welfare sociology is one of the hyphen sociologies, and is based on general sociology or theoretical sociology.2) Welfare sociology is the science of social welfare as social action by interpretation, or the science of understanding social welfare as the product of a total society by analysis.3) In Japan, welfare sociology was established as late as the beginning of the 21century.
  • 直井 道子
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
  • 社会政策論・社会計画論・福祉国家論とのかかわりで
    平岡 公一
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 37-49
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本論文は,戦後日本における福祉社会学の展開過程の見取り図を描くとともに,その成果と残された課題を筆者の問題意識に基づいて検討することを課題としている.この課題に即して,1節から4節では,(1)1948年の福武直論文と戦後日本の社会政策学の研究の展開との関連, (2) 社会開発論から社会計画論・社会指標論へとつながる1960~70年代の研究の展開, (3)福祉国家論・比較社会政策研究の展開, (4)副田義也による福祉社会学研究の展開にっいての検討を行った. (1)に関しては,福武論文に,社会民主主義モデルの福祉国家論の方向への研究の展開の潜在的可能性が含まれていたが,その可能性が実現する条件がなかったことを指摘した. (2)に関しては, コミュニティ論等の応用研究の出発点としての社会開発論の歴史的意義が評価されるべきであることを指摘するとともに,社会計画論・社会指標論に関しては,基礎理論のレベルでの政策論・計画論の理論枠組みと分析手法の開発という点での研究史上の意義が大きいと論じた. (3)に関しては,80年代以降の日本での研究の展開を整理するとともに,今日では,この分野の研究が学際的に展開されるようになっていることを指摘した. (4)については,福祉社会学理論の特徴を中心に,副田の研究業績について検討を行った.最後に5節では,福祉社会学の研究史および今後の課題の検討にあたって考慮すべき論点を3点あげて若干の考察を行った.
  • 「普遍主義」の日英比較を手がかりに
    杉野 昭博
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 50-62
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    「普遍主義」あるいは「普遍化」という概念の日英間のずれに着目することによって,戦後福祉政策論,および,戦後福祉国家の日本的特徴の一端をとらえる可能性を示したい.本稿では,最初にイギリスにおける「普遍主義」および「選別主義」概念を整理したうえで,わが国の論者が,このイギリス的な概念を日本の政策分析に適用しようとした努力を振り返りながら,その「日本的特徴」に着目する.次に視点を変えて,一般にわが国の論者がこの概念を適用しようとした1980年代以降の政策展開ではなく,それ以前,とくに1950年代末から1970年代前半までの期間,いわゆる福祉六法時代における政策展開に,「普遍主義」「普遍化」概念をあてはめてみる.「普遍主義的福祉政策」あるいは「福祉サービスの普遍化」は,わが国においては,イギリス的な意味で言えば,ほぼ戦後すべての時期を通じて,あてはまるとも言えるし,あてはまらないとも言える.そういう意味では,「普遍主義」概念は,少なくとも福祉政策の歴史的分析のための有効な枠組みとはなりえない.わが国の福祉政策の歴史的展開を適切に分析するためには,戦後福祉制度の基盤の1つである生活保護制度の歴史的分析が重要である.
  • その課題と可能性
    野口 裕二
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 63-76
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    社会福祉は「制度政策」と「援助実践」というマクロ・ミクロ2つの側面から成り立っが,日本における福祉社会学の展開はこれまで「制度政策」研究が中心であり,「i援助実践」に関する研究は相対的に少なかった.「援助実践の社会学」は何を主題とし,どんな理論的射程をもつのか,その見取り図を描くことが本稿の課題である.その際同じくヒューマン・サービスに関わる制度と実践を研究対象としてきた医療社会学の成果が参考になる.これによって,医療実践と福祉実践の比較という作業が可能となり,さらに,「医療化」と「福祉化」という現代のマクロな社会変動をミクロな場面で考察することも可能となる.このような観点から,専門職と専門性の変容というテーマについて考察した結果,「専門化」という社会変動はこれまで「近代化」とともに進展してきたが,いままさにその進展の帰結として「脱近代化」という課題に直面しており,現代の援助実践は「近代化」と「脱近代化」という2つの社会変動のはざまで揺れ動いていることが明らかとなった.こうした変容のゆくえを見据えることが「援助実践の社会学」の重要な課題となる.
  • 三重野 卓
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
  • その序論的検討
    藤村 正之
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 84-97
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    21世紀初頭の現在,20世紀に浸透した福祉国家化の価値のとらえ直しが進行しつつあり,そこに福祉社会学がマクロ社会学あるいは社会理論として取り組むべき課題があると考えられ,本稿ではその論点を整理する.その際福祉に関わる価値を社会学的に対象化・相対化し,諸価値が錯綜し立体的に配置される福祉観としてとらえるべく,福祉の価値空間という視点をもちながら考察を進めていく.
    本稿では,そのような福祉の価値空間の変容をとらえるため,社会構想,社会制御・社会形成,問題把握という分析上の3点を設定し,各々について論点を整理していく.社会構想の視点としては,自由と拘束をめぐる福祉の規範理論が活発化しているが,それを関係性の4象限として整理しなおしつつ,社会学における共同性への強い関心の自覚化と相対化の必要性を論ずる.社会制御と社会形成の視点からは,福祉国家にひそむ国家中心主義の時代的困難が進みつつあり,再編の可能性としてある福祉社会論福祉政府論福祉世界論の論点を確認したうえで,近年福祉国家と福祉社会の架橋を期待される福祉ガヴァナンス論の動きについてふれる.最後に,問題把握の視点として,必要の議論が再浮上してきているが,同時にリスクや自己決定など新たな視点も錯綜しつつあり,福祉領域の独自性と領域間の連関を確認することが求められている.
  • 小川 全夫
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 98-112
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    社会学が福祉的課題を扱う時,個々人の生老病死,障害,失業,被差別,不安,孤独,虐待等々に対処療法的に関わるよりは,むしろその福祉課題を生み出したり,解決を図ったりする社会的コンテキストの解明に力を注いできた.政治経済や社会文化といった制度や価値体系の中に組みこまれた社会的カテゴリー,階級,集団,社会的ネットワーク,地域を媒介にして,個々人は特定の福祉的課題が課せられるのであり,それを解決するためにも個々人は媒介過程に働きかけるという図式にしたがって,社会学は調査研究を重ねてきた.特に日本においては,地域という媒介過程に関心が強く寄せられ,地域ごとに多様に現れる福祉課題と,それらを解決する上での「地域福祉」の必要性をめぐる論議を展開してきた.しかし,今日住民生活行動の広域化や広域行政の進展などに伴って,地域の範域や,地域活動の可能性について,実態に即した地域概念の再検討が迫られている.
  • ―2つの制度領域間のインターフェイス―
    藤崎 宏子
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 113-125
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    90年代の社会福祉基礎構造改革の展開と軌を一にして,政策論議の場で盛んに「家族」が論じられるようになった.とりわけ,「少子高齢化」の進行は,近代家族が抱える問題や矛盾を象徴するとともに,社会福祉基礎構造改革の必要性を語る際にも,まず筆頭にあげられる重要なキーワードであった.そして,このことも契機となって,近年では家族研究,福祉研究両分野で,「家族福祉」「家族政策」に関する議論が活発におこなわれるようになった.しかし,それらの多くは,基本的概念のコンセンサスさえ得られていないばかりか,不毛なイデオロギー論争にのみ終始する場面も見受けられる.「家族と福祉政策」に関する研究の累積的展開は,なお今後の課題だといわねばならない.
    本稿ではまず,「家族と福祉政策」に関する議論に混乱をもたらす主要な要因として,「考察対象の政策範疇」「政策領域の分断」「価値要因の影響」の3点について論じる.次いで,近年の家族変動と福祉改革がそれぞれ独自の論理で展開しつつも,両者のインターフェイス部分でさまざまな影響関係や葛藤が生じていることに注目する.そこでは,「家族の自助原則」「ジェンダー・ジェネレーション規範」「自己決定の原理」という3種の規範を中心として,試論的な考察をおこないたい.
  • 平野 寛弥
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 129-148
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本稿は,中欧諸国の社会保障制度の動向に関するこれまでの研究の成果を基に,移行期と呼ばれる1980年代末から90年代半ばにかけての社会保障制度の特徴を整理した上で,中欧諸国の1つであるポーランドの事例を用いて社会保障制度と経済の関係について考察し,移行期における社会保障制度の意義を問うものである.ポーランド・ハンガリー・チェコをはじめとする中欧諸国は,1980年代末から開始された体制の移行に伴い,劇的かつ様々な社会変動を経験した.こうした状況の下,経路依存性と寛容性という共通した特徴を有する移行期の中欧の社会保障制度は,急速な経済の安定化,およびその後の経済成長を可能にするとともに,社会的・政治的な安定に貢献した.すなわち,社会主義体制下で構築された社会保障制度を修正しつつ最大限活用し,時間を要する社会保障制度の抜本的改革を先送りすることに成功したことが,移行期における中欧諸国の経済政策優先の姿勢を可能にした最大の要因である.したがって,中欧における移行期の社会保障制度の意義とは,体制の移行に適応できない人びとを寛容度の高い社会保障制度で一時的に吸収して潜在化することで,経済の効率化を促進させるとともに,経済政策に専心可能な状況を創出し,体制の移行の迅速な進展に貢献したことにあった.
  • 寺田 貴美代
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 149-168
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    社会福祉研究において,「社会福祉とは何か」が問われ続けている.多数の論者により多様な理解を伴ってこの概念が用いられ,その捉え方は錯綜しているのが現状である.そこで,社会福祉概念がどのように捉えられているのかを照射するために,社会福祉の成立する範疇に関する分析枠組を構築し,その一端を明らかにすることが本論文の目的である.
    まず初めに,本論文における基本概念の定義を明確にし,次いで,社会福祉概念の範囲に関係する先行研究を整理・検討する.その上で,自らの理論に基づく分析枠組を提示する.具体的には,時代や社会,文化などの社会的諸要因により規定される価値観の中で,少なくともマジョリティの価値観に適合し(第1段階のふるい),かつ,生活問題を特定の手段によって解決・緩和するもの(第2段階のふるい)が社会福祉であるという理論的枠組みを示し,この2重のふるいにかけられた結果,それが社会福祉として見なされる範疇にあるか否かが,社会福祉を規定すると論じる.そして,「生活問題」や「価値観」,「マイノリティ」,「マジョリティ」などの概念を基に,4つの象限からなる分析枠組を構築した
    最終的には,社会福祉とは,特定の価値観の中で,特定の手段によるものであり,マイノリティとマジョリティの価値観は社会的諸要因によって規定されるため,社会福祉の範疇は極めて可変的な性質を有することを指摘している.
  • 愛知県知多半島を中心とした福祉NPOのネットワークを事例として
    廣瀬 まり
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 169-188
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,非営利組織のリーダー層の福祉活動における主体性と,団体アイデンティティの恒常的な模索とが,福祉ネットワークの形成の促進要因となりうることを明らかにすることである.それを検討するために,愛知県知多半島のNPOの福祉ネットワーク形成の事例を取り上げる.知多半島(5市5町)は,事業体として成功しっつある福祉NPOの多さと,同地域のほとんどの福祉NPOを結ぶネットワークの存在,そしてその結節点としての中間支援系NPO「サポートちた」の存在によって,現在注目されている地域である.同地域の諸団体の多くは,1990年代から“住民互助型”福祉団体として活動してきた.“住民互助型”団体には,活動の確固としたモデルが存在せず,しかも知多半島の“住民互助型”団体に対する行政や地域自治会等からの支援は少なかった.そのため諸団体のリーダー達は,常に団体活動の方向性(団体アイデンティティ)に不安を抱くこととなり,このことが諸団体の連携を促進した.
  • 佐藤 恵
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 189-208
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本稿は,阪神大震災直後に,被災障害者支援のボランティア・グループとして発足し,現在に至るまで,障害者の自己決定をサポートし,「支え合い」を実現していこうとする被災地障害者センターの活動を事例研究し,「内発的義務」に端を発する自己決定支援が二者関係から三者関係としての社会的広がりを示すまでの過程に関する相互行為論的考察を行う.センターの支援においては,困難ケースであっても当事者との関係を「切らない」.トラブルが発生したとしても,それは当事者と支援者が相互の異質性を認め合い,「鍛え合う」ことを通して,対等な関係を形成する契機と解釈される.自己決定を支えるに当たっては,生活目標や生活様式自体の当事者による決定を尊重し,また,制度・ルール・マニュアルによる規制を必然視しない「隙間の発見」という技法をとることで,管理への転化を防止する.センターは当事者との関係を「切らない」のと同時に,「抱え込まない」ことを心がけるが,そうした「抱え込まない」技法とは,個人の解決能力の限界性を自覚しつつ,障害当事者一支援者の二者関係を,第三者としての他支援者に向けて開き,多様な支援者間の補完性に基づいて,三者関係における支援を実践する技法である.そしてその技法は,個人レベルだけでなく組織レベルにおいても発揮され,支援グループ間のネットワーキングと,それを通した「市民の共感」の獲得が志向されるのである.
  • “寝たきり老人”対策としての「付添」の制度化と問題化を手掛かりに
    森川 美絵
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 209-228
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本における介護労働の社会的認知・評価のメカニズムを解明する作業のひとつとして,医療施設の高齢者ケアにおける付添制度の展開を分析した.
    介護労働に関する議論は,その評価が不当に低いという前提でなされることが多い.日本では,一方で,介護専門職の国家資格化のように<脱一低評価>に向けた政策展開もみられるが,他方で,医療施設における介護専門職の導入は介護労働の<脱一低評価>と連動していない.こうした状況の制度的な規定要因として,本稿では,医療において介護労働という領域が承認され「介護職員」が配置される以前の,介護相当領域への政策対応の重要性を指摘した. “寝たきり老人”ケアへの付添制度の適用,恒常的活用とその見直しという制度的な対応の積み重ねにより,付添の属性としての“無資格”“非専門”“低い社会的経済的地位”が,病院内の「介護職」を編成し評価する上での準拠枠となった.その準拠枠が,介護専門職が登用されてなお大きな影響力をもち,介護労働(者)の評価の転換(上昇)を妨げているのである.
    同じ介護職という名称のもと,そこには異なる制度的背景に規定された多様な評価・認知の枠組がある.介護労働(者)の評価に関する議論は,こうした介護労働の多様性・異質性をふまえることが求められる.
  • 見失われた社会保障理念の再構築
    星野 信也
    2004 年 2004 巻 1 号 p. 229-250
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    わが国の社会保障制度は,第1に,国民皆保険制皮を日標に,載削,載甲に成立していた年金保険と医療保険を全国に普及する形で形成されたから,年金,医療とも低負担・低福祉の地域保険と中負担・中福祉の職域保険に分立して成立した.第2に,給付水準のヨーロッパ水準への引き上げを目標に,地域保険に不公正に国庫負担金を投入することで給付水準のみ地域と職域の格差縮小が図られ,象徴的には一時期老人医療費無料化が行われた.こうした地域保険の低負担・準中福祉・高福祉化は,産業構造の変化で自営業層が減少したこと,医療保険の場合,定年退職すると職域保険から地域保険に移り地域保険の高齢者医療費負担を増大させる構造問題があることから,年金,医療の両者で地域保険を破綻の危機に直面させた.それに対応した改革は,医療保険では,原則70歳以上について地域保険と職域保険を統合し,年金保険では地域保険を全成人に拡大し,それぞれ「どんぶり勘定化」する改良に終わった.さらに介護保険制度でも改善されなかった医療保険で職域保険の給付水準が地域保険並みに引き下げられ,職域年金給付水準も引き下げのターゲットとなっている.こうした小刻みな改革の連続は制度への信頼感喪失を招きかねない.筆者は,イギリス,スエーデンの例にならって,選別的普遍主義に基づいて社会保障制度を抜本的に一元化し,保険料による制度と税による制度を整理再編することを提言する.
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