社会福祉研究において,「社会福祉とは何か」が問われ続けている.多数の論者により多様な理解を伴ってこの概念が用いられ,その捉え方は錯綜しているのが現状である.そこで,社会福祉概念がどのように捉えられているのかを照射するために,社会福祉の成立する範疇に関する分析枠組を構築し,その一端を明らかにすることが本論文の目的である.
まず初めに,本論文における基本概念の定義を明確にし,次いで,社会福祉概念の範囲に関係する先行研究を整理・検討する.その上で,自らの理論に基づく分析枠組を提示する.具体的には,時代や社会,文化などの社会的諸要因により規定される価値観の中で,少なくともマジョリティの価値観に適合し(第1段階のふるい),かつ,生活問題を特定の手段によって解決・緩和するもの(第2段階のふるい)が社会福祉であるという理論的枠組みを示し,この2重のふるいにかけられた結果,それが社会福祉として見なされる範疇にあるか否かが,社会福祉を規定すると論じる.そして,「生活問題」や「価値観」,「マイノリティ」,「マジョリティ」などの概念を基に,4つの象限からなる分析枠組を構築した
最終的には,社会福祉とは,特定の価値観の中で,特定の手段によるものであり,マイノリティとマジョリティの価値観は社会的諸要因によって規定されるため,社会福祉の範疇は極めて可変的な性質を有することを指摘している.
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