山階鳥類学雑誌
Online ISSN : 1882-0999
Print ISSN : 1348-5032
ISSN-L : 1348-5032
36 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 吉野 知明, 藤原 一繪
    2004 年 36 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    静岡県静岡市の有度丘陵の農道上に,8月から10月にかけてアカメガシワ Mallotus japonicus を含むハシブトガラス Corvus macrorhynchos とハシブトガラス C.corone の排泄物が多く落とされていた。そこで,種子散布を介したカラス類とアカメガシワの相互関係を明らかにするために,排泄物を定期的に回収し,内容物分析を行い,種子の含有率や採餌された種子の消化度合いを調査した。調査期間中に合計283個の排泄物が回収され,排泄物中から16植物種の果実や種子および昆虫類の破片が検出された。アカメガシワ種子は,16植物種中最も多くの種子が含まれていたが,エノキ Celtis sinensis var. japonica や昆虫類とほぼ同時期に同程度利用されており,カラス類にとって重要な食物のひとつと考えられた。アカメガシワ種子の外種皮は脂質に富んでいるが,種子当たりの可食部位は少ない。このため,カラス類はアカメガシワ種子を大量に摂取していると考えられた。アカメガシワ種子の外種皮の消化度合いは,排泄物によって異なった。昆虫類と同時に含まれるアカメガシワの種子では,外種皮が消化されているものが多く,植物質と同時に含まれるものでは,未消化のまま排泄される傾向にあった。アカメガシワの種子は,昆虫類破片が含まれることで,外種皮に傷がつき消化が促進されると考えられる。未消化で排泄されたアカメガシワ種子には外種皮が残存しており,アリによる二次的な採餌が観察された。カラス類によって未消化のまま排泄されたアカメガシワ種子は,二次的な散布の可能性を残しているといえる。
  • デカンディド ロバート, アレン デボラ, ヨゼフ ルーベン
    2004 年 36 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    マレーシア西部,海岸近くの渡り鳥観察地であるタンジュントゥアンにおいて,2001と2002年の3月に,渡り途中のハリオハチクイ Merops philippinus とルリノドハチクイ M.viridis の個体数をカウントした。両年合わせて26日間で計2,226羽(12.9羽/h)のハリオハチクイとルリノドハチクイが出現した。そのうちの60.8%(1,353羽)がハリオハチクイ,10.0%(222羽)がルリノドハチクイであった。両種のハチクイは,他の風向きと比べて西方向(北西,西,南西)の風が吹いたときに,多く出現した。タンジュントゥアンでは,渡り途中のハチクイが春期に定期的に出現し,今後も出現すると予測されることから,この東南アジアの渡り鳥観察地において,春期のカウントを今後も行いたい。
  • 前田 琢, 井上 祐治, 小原 徳応, 荒木田 直也, 辻本 恒徳
    2004 年 36 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    岩手県北部で保護されたイヌワシ幼鳥に電波発信機を装着して放鳥し,その後の移動を追跡調査した。この個体は2002年6月30日に岩手県大野村で衰弱,保護された当年生まれの幼鳥(雌)で,保護施設で約1か月間飼育して体力を回復させ,8月8日に出生地と考えられる営巣場所付近で放鳥した。放鳥後は原則として毎日追跡し,複数点からの方向交差により位置を求めた。また可能な場合は目視して位置を確認した。この個体は放鳥後8月15日までは放鳥地点付近にとどまっていたが,16日には放鳥地点から西に8.1kmの山間地に移動した。また8月21日に2.1km北へ移動し,翌日さらに北方向へ移動した後は確認がとれなくなった。その後,10月5日に八甲田山で北西方向から電波が受信され,10月8日には青森県深浦町で再び保護されるに至った。再保護地点は放鳥地点から直線で152kmであった。再保護された個体はすぐに放鳥され,自力で飛び去ったが,11月11日,発信機とともに死体で発見された。この記録は,日本のイヌワシの長距離移動を示す初めての事例であり,イヌワシ幼鳥の分散が遠距離に及んでいることを示唆するものである。
  • 小松 吉蔵, 佐藤 弘, 藤沢 幹子, 千葉 晃
    2004 年 36 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    本州中部日本海沿岸におけるウグイスの渡りの様相を解明するため,新潟市の関屋海岸において1988年から14年間標識調査を実施した。関屋海岸の西海岸公園(北緯37°55'東経139°01')のクロマツ林内に調査地(約100m×150m)を設け,カスミ網12枚を用い,小鳥類の声をプレーバックしながら作業を行った。調査結果を便宜上,春季(4月1日~5月15日:45日間)および秋季(10月5日~11月18日:45日間)に大別し,各季の捕獲数を雌雄別に整理•比較した。また,雄または雌が捕獲された日について,1日当たりの雄または雌の捕獲数をDCI (daily catch index)として求め,この数値の各季節平均値と性比を指標にして移動時期の性差を検討した。その結果,次のことが明らかになった。春の渡りでは総計1,959羽のウグイスが捕獲され,そのうち雄は810羽,雌は1,149羽であった。春の渡りにおける雌の性比は平均58.6±6.1%(n=14)で秋の渡りにおける該当値(平均45.5±5.4,n=14)より有意に(P<0.001)高かった。また,有意差は認められないものの,春の渡り14シーズンにおける雌の平均DCI値(3.8±0.9)は雄の該当値(3.1±0.9)よりやや高い傾向が示された。一方,移動時期は雄が雌より早い傾向が認められ,その移動盛期は4月上旬~下旬,雌のそれは4月中旬~5月中旬であった。秋の渡りでは,春の数より約4倍多い総計7,860羽(雄4,201羽,雌3,659羽)が捕獲され,移動の盛期は10月下旬から11月上旬であった。これは,秋の移動群において幼鳥が占める高い割合(雄で66.5~93.1%;雌で79.2~96.3%)を反映した結果と推察された。秋の渡りでは,春に見られたような性比の偏り傾向や移動時期の性差は認められなかった。また,関屋海岸に関する国内回収記録11例を見ると,新潟の海岸は,本種の渡りにおいて北海道と近畿ないし山陰を結ぶ中継地として利用されていることが示唆された。
  • 紀宮 清子, 鹿野谷 幸栄, 安藤 達彦, 柿澤 亮三
    2004 年 36 巻 1 号 p. 37-71
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
  • 風間 辰夫
    2004 年 36 巻 1 号 p. 72-82
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
  • 平野 敏明
    2004 年 36 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    Eight nesting males of the Gray-faced Buzzard Butastur indicus captured a total of 295 prey items in the study site during the breeding seasons from 1999-2002. Of these prey items, 142 were transported to their chicks and mates, and 153 were consumed by the males themselves. The difference in prey species between the two categories was not significant. In prey groups, however, the males carried significantly more voles and mice to their nests than they consumed themselves, whereas they themselves consumed more insects than they carried to their nests. Captured voles and mice were transported greater distances to the nests than were lizards and frogs.
  • 堀本 富宏
    2004 年 36 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    One to five Magpies were observed in 1984, and almost every year from 1992, in Muroran, Noboribetsu, Shiraoi and Tomakomai, Iburi District, south-western Hokkaido. They nested in 1993 and 1994 in Muroran, in 1998 and 2000 in Noboribetsu, and in 1996 and 1998 in Shiraoi. In Wanishi, Muroran, two young with an adult were observed in the summer of 1993, strongly suggesting that they bred there. Based on these observation records, the Magpie is considered to be resident in this area.
  • 外崎 秀和, 河井 大輔, 一北 民郎
    2004 年 36 巻 1 号 p. 91-92
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    A single male Pied Harrier Circus melanoleucos was observed on 18 August 1996 in grassland at Atsuma, southeastern Hokkaido. This is only the fourth record of this species from Hokkaido.
  • 奴賀 俊光, 桑原 和之, 乃一 哲久, 羽賀 秀樹, 竹田 伸一
    2004 年 36 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    We report two records of the Japanese Murrelet Synthliboramphus wumizusume in the breeding season. 1) On 21 April 2003, one adult was observed about 1km offshore of Uchiura Bay, Amatsu-Kominato. 2) On 23 May 2003, two adults and one chick were observed about 2km offshore of Katsuura Bay, Katsuura. This is the first observation record of a chick with adults on the sea around Chiba Prefecture.
  • 森本 元, 田中 啓太, 上田 恵介
    2004 年 36 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ジュウイチによるビンズイへの托卵を確認したので報告する。日本国内で繁殖する1属4種のカッコウ類の中でも,ジュウイチは分布がアジア圏に限られることや,その観察の困難さから,ほとんど研究がない。ジュウイチの主たる宿主はオオルリ,コルリ,ルリビタキであり,これらの宿主以外への托卵報告はきわめて少ない。ビンズイについても過去に富士山麓において1例の報告があるのみである。この希なビンズイへのジュウイチによる托卵を筆者らは富士山(35°22'N,138°46'E)の標高2,100mの地点においてルリビタキの調査中に確認•撮影に成功したので報告する。筆者らは調査地において2年間でルリビタキ87巣,メボソムシクイ9巣,ミソサザイ10巣,ビンズイ7巣を発見した。このうちジュウイチによる托卵は,ルリビタキ6巣,ビンズイ1巣で確認された。托卵されたビンズイは造巣開始後,産卵した。早朝観察時の巣内にはビンズイ卵1卵があったが,午後に再び巣内を確認するとビンズイの卵はなくなっており,ジュウイチの卵と思われる青緑色の卵が托卵されていた。その後,この巣は捕食されたため,それ以上の追跡はできなかった。日本国外ではジュウイチに似た青系の色の卵を産むカッコウとツツドリが知られているが,国内での報告はない。卵の大きさはカッコウ,ツツドリに比ベジュウイチは大きい。発見した卵の卵長は27.6mmであり,ジュウイチ卵の大きさに近かった。これらよりこの卵はジュウイチ卵であると考えられた。また,この卵以外のルリビタキへの托卵6例(発見時:雛1例,卵5例)では,卵はルリビタキ卵よりも大きな青緑色の卵であった。既に孵化していた1雛と破壊されていた2卵中の雛は,皮膚の色からジュウイチと確認できた。さらに,本調査地ではジュウイチ以外のカッコウ類の托卵が見つかっていないことも本観察がジュウイチ卵であることを支持している。
feedback
Top