山階鳥類学雑誌
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38 巻, 2 号
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原著論文
  • 江崎 保男, 馬場 隆, 堀田 昌伸
    2007 年 38 巻 2 号 p. 67-79
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    1996年~1999年の繁殖期に長野県北東部のブナ林において,個体識別した森林性ホオジロ類であるクロジ個体群の繁殖生態,特になわばりと行動圏について調査した。成鳥雄は若鳥雄よりも有意に早く渡来し,雌は最初の雄よりも6~10日遅れて渡来した。1999年には12羽の雄が出現し10羽が定着した。これら定着個体はすべて雌を獲得し繁殖した。雄間の闘争行動は5月初めから5月15日まで高い頻度で観察されたが,その後急激に減少した。1999年のソングエリアは雄間の闘争が激しかった5月15日以前には,一部の隣接雄間でかなり重複していたが,5月16日以降ほぼ完全に分離し,調査地全域に隙間なく分布していた。1999年に定着した雄10羽のうち6羽は1998年以前より調査地内のほぼ同じ場所で定着・繁殖していた個体であり,クロジの雄がなわばりへの強い帰還性をもつことが明らかになった。ソングエリアとは異なり,かれらの行動圏は繁殖期をとおして大きく重複していた。1999年に調査地内で23個の巣を発見した。雄を特定できた17巣のすべてで,雄親は繁殖地内に定着した10雄のいずれかであった。つがい数より多い巣が発見されたが,雄が特定された17巣のうち16巣では雌親も特定された。雄のなわばり内に複数の巣が発見された場合には,いずれも最初の営巣に失敗した同一つがいが再営巣した結果であった。また,雄親が特定できなかった6巣についても,上記のつがいの再営巣あるいは,調査地に隣接するペアのものと考えて矛盾がなかった。このことから,クロジが社会的な一夫一妻であることが示唆された。
  • 村上 正志, 大島 成生, 山岸 哲
    2007 年 38 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    河畔林に生息する鳥は,河川から羽化する水生昆虫を利用し,河川生態系に依存していることが知られている。このような河川から森林へのエネルギーの移動は,森林に生息する鳥類群集に影響すると考えられる。本研究では,静岡県清水町を流れる,柿田川,および,近隣の狩野川を対象として,河川から羽化する水生昆虫の季節消長と,河畔に生息する鳥類の群集との関係を調査した。柿田川は湧水河川であり,流量と水温が通年安定しているのに対し,狩野川の流量は大きく変動し,また,水温も顕著な季節変化を示す。このような両河川の特性の違いが,河川からの羽化水生昆虫の羽化量に影響していた。羽化量は,狩野川と比較して,柿田川においては11月から3月まで継続して多かった。4月以降は両調査河川で羽化量が増加し,両調査地点間で差は見られなかった。柿田川,狩野川は両調査地点において,鳥類の個体数と種数は,水生昆虫の羽化量に対応した変化を示した。4月から10月には,両調査地点でともに鳥類は少なく,また,調査地点間の差は見られなかった。しかし,11月から3月にかけては鳥類の生息個体数,種数は両地点ともに増大し,この期間,柿田川において,個体数で3倍,種数でも約2倍の鳥類が観察された。これらの結果から,柿田川が鳥類の越冬場所として非常に重要であることが示された。しかし同時に,夏の生息個体数が,過去の調査と比較して少なかったことから,夏期,柿田川河畔林は,繁殖地としては十分に機能していないようだった。これは,柿田川の河畔林が孤立した森林であることと関係すると思われる。このような結果は,今後の柿田川の河畔林も含めた保全に対して重要な示唆を与えるものである。
短報
  • 今西 貞夫, 茂田 良光, 吉野 俊幸
    2007 年 38 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    On 21 July 2002 at Nobeyama Plateau in Nagano Prefecture, central Japan, we found an interspecific pair comprising a male Brown Shrike Lanius cristatus superciliosus and a female Thick-billed Shrike L. tigrinus, feeding their hybrid young aged about five days after fledging. The male and female parents and one hybrid young of about 28 days old were caught on 21 July, 22 July, and 31 July 2002, respectively. The parental plumage was typical for their respective species. The hybrid's plumage was entirely juvenile, with the remiges and rectrices growing. The juvenile plumage of the hybrid resembled that of Brown and Thick-billed Shrikes in some parts, but differed in many parts, notably in the colour and markings of the greater coverts and the face-mask. At the study area (ca. 15 km2) in 2002, only this interspecific pair and three pairs of Brown Shrikes were found breeding: no pairs of Thick-billed Shrikes bred. This is the first authentic case of hybridization of Brown and Thick-billed Shrikes in Japan.
報告
  • 山内 健生, 尾崎 清明
    2007 年 38 巻 2 号 p. 97-99
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の Ornithoica exilis(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ Gallirallus okinawae 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における O. exilis の初記録であり,ヤンバルクイナは O. exilis の新宿主記録となる。
  • 劉 陽, ホルト ポール, 張 正旺
    2007 年 38 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    ズグロカモメ Larus saundersi は東アジアの沿岸にのみ生息しているが,個体数が急激に減少しておりバードライフ・インターナショナルによって危急種に指定されている。渤海湾周辺では旅鳥,夏鳥であり冬はほとんどいないとされていた。世界の個体の多くは江蘇の塩城と韓国や日本の九州の数カ所で越冬すると考えられてきた。ここでは2005-2006年の冬にズグロカモメのかなりの数が渤海湾で越冬したことを報告する。2005年12月23日に天津の塘沽と大1147の間の井区干潟で864羽のズグロカモメがカウントされた。2006年2月19日には同所で941羽をカウントした。別の研究者によって2005年12月24日と2006年2月15日に莢州湾でもそれぞれ522羽,569羽がカウントされている。1羽の成鳥は足環によって遼寧の繁殖コロニー,双台子河口から来たことがわかった。このコロニー由来の鳥が中国で観察されたのは3度目と考えられる。このコロニー由来の鳥はこれまではほとんどが韓国か日本で記録されていた。この2か所で1,386-1,510羽が越冬したと考えられるが,これは世界中の個体数(9,600羽と推定されている)の 14.44-15.73% にあたる。これまでズグロカモメが渤海湾で越冬した記録はわずかであったが,今回の発見によって渤海湾がこの種にとって重要であることがわかった。
  • 藤巻 裕蔵, 一北 香織
    2007 年 38 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    The relative abundance of Tree Sparrow Passer montanus were compared between 1991-2004 and 2006 in 17 residential areas of Hokkaido. Average numbers (±SD) of birds counted in a transect 2 km long and 50 m wide decreased significantly from 24.6±7.5 in 1991-2004 to 14.5±8.1 in 2006. Relative abundance increased in two study areas, remained unchanged in one area and decreased in 14 areas. Change rates (CR, Number of birds counted in 2006/number of birds counted in 1991-2004) exceeded 1.0 in two areas located in mountainous localities, but were 0.71-1.00 in south-western and eastern parts and less than 0.71 in central parts.
  • 平田 和彦
    2007 年 38 巻 2 号 p. 108-109
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
  • 黒田 長久
    2007 年 38 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    カツオドリ Sula leucogaster に比してアオアシカツオドリ S. nebouxii の剥皮体は胸筋が円筒状で肩の張りもない点で異なる。これは後者が前者より高空から深海突入する突入度の違いを反映している。アオアシカツオドリは全く水しぶきをあげずに突入し,カツオドリは多量の白泡を立てる。また,トビウオを空中捕捉する。最も熱帯性のアカアシカツオドリ S. sula は突入体型の度が低い。カツオドリ類はその突入とその前の空中バランス浮揚に関連して大胸筋主部の下に筋肉の盛り上がりのある点が特徴である。アオアシカツオドリは胸筋長/腹長比が1.5でカツオドリの0.9より長いことも深海突入に適応して翼力の強化を示す(強い翼搏には長い胸筋が必要)。胸筋全量 117.2 g, 脚筋量 51.0 g であった。肩部に未記載と思われる三筋,m. biceps subaccessorius(下副二頭膊筋),m. deltoideus major inferior(下大三角筋)と m. deltoideus medius(中三角筋)を認め命名した。
  • —羽根を同定するための基礎資料として—
    藤井 幹, 丸岡 禮治
    2007 年 38 巻 2 号 p. 120-142
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    We collected data to see which bird taxa possess unique feather structures, namely the after-shaft and tegmen, as a basis for bird feather identification. Using the collection of the Yamashina Institute for Ornithology, we examined 19 orders, 75 families and 529 species for tegmen feathers, and 18 orders, 44 families and 334 species of non-passerines and six families of passerines for after-shaft feathers. We also examined the authors' personal collection of passerines feathers for after-shaft feathers. After-shafts were present in 15 orders, 35 families and 246 species of non-passerines and 29 families of passerines, and tegmen was present in six orders, nine families and 86 species.
  • 吉川 徹朗
    2007 年 38 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2009/03/20
    ジャーナル フリー
    Over a 2-day period, 30-70 Grosbeaks Eophona personata were observed feeding on acorns of several fagaceous species (Quercus glauca, Castanopsis cuspidate and its variation C. cuspidate var. sieboldi) in the understory of evergreen broadleaved forest at Funaokayama Hill, Kyoto City. Grosbeaks cracked the cupula and pericarps of acorns with their bills, and fed only on the embryos and cotyledons inside. This feeding behavior on synzoochorous seeds is very similar to that observed when feeding on anemochorous and endozoochorous seeds.
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