1.帯広農業高校構内のカシワ自然林及びカラマツ造林地約16haで,1976~1979年の4月下旬~7月下旬にアカゲラとコアカゲラの造巣期から巣立ちまで,繁殖について観察を行った。
2.主調査地内に毎年3~7つがいのアカゲラと,1つがいのコアカゲラが繁殖した。
3.アカゲラの造巣期は,4月下旬~5月中旬で,造巣期と産卵期をあわせると27~30日間であった。抱卵期は5月中旬~6月上旬で15~20日間,育雛期は6月上旬~下旬の約20日間であった。コアカゲラの繁殖はアカゲラより数日遅れ,抱卵期は6月上旬~中旬,育雛期は6月中旬~7月上旬であった。
4.アカゲラの巣造りは,初期は雄だけで行い,後期になってから雌が参加した。巣造り期間中,交尾とドラミングが観察され,ドラミングは抱卵,育雛まで続いた。コアカゲラは,雌雄とも巣造りに参加したが,雄が主に行っていた。
5.アカゲラの営巣木はほとんど生立木で,主調査地ではカシワ(77.8%)が多かったが,主調査地外では10種の樹木にわたり多様であった。営巣木の胸高直径は20~65.0cmで,25~30cmの間が最も多かった。巣の高さは,0.7~7.3mで平均3.03mであった。コアカゲラは観察された5例とも枯木か生立木の枯れた幹に営巣した。
6.アカゲラの抱卵は雄と雌が交代で行ったが,日中の抱卵時間は雌で長いことが多かった。抱卵率は,抱卵後期になるにしたがい高くなった。抱卵初期には雄,雌どちらか一方が60分以上抱卵している時間帯があったが,後期は1時間に両性とも20~40分は抱卵を行った。コアカゲラでも雌雄交代で抱卵を行った。
7.給餌は,雌雄交代で行った。雌雄合せた1時間あたりの平均給餌回数は,ふ化後14日目ごろまでは増加する傾向にあったが,18~20日目には減少した。親による巣の中からの糞の運搬行動は給餌回数の増加とともに増加したが,巣立ち2~3日前にはまったく行われなくなった。観察したコアカゲラの巣では雄だけが給餌を行った。
8.アカゲラでは,全部が巣立つのに2~3日かかった。雛の数は2~4羽であった。雛は巣立ち後1週間は巣の近くの高い枝で親から給餌をうけていた。コアカゲラも全部が巣立つのに2日かかった。巣立った1羽はハイタカに捕えられた。
抄録全体を表示