山階鳥類研究所研究報告
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13 巻 , 3 号
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  • 山階 芳麿, 真野 徹
    1981 年 13 巻 3 号 p. 147-152_3
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    沖縄島北部の通称ヤンバルと呼ばれている丘陵地帯に,地上を歩くクイナの1種が居る事は少し前から知られていたが,山階鳥類研究所の真野徹外数氏が環境庁の鳥類標識調査事業の一環として国頭郡奥間において,1981年6月18日から7月7日にかけて調査を実施し,そのクイナの成鳥及び幼鳥各1羽の捕獲に成功した。これら2羽については,各部を詳細に調べた後,足環をつけて捕獲した元の場所に放した。又これより前にフエンチヂ岳附近の林道脇にて拾得された1個体を名獲市の友利哲夫氏が標本として保存していたが,これも今回捕獲したものと同種である事がわかった。
    これら3個体は羽色がRallus torquatus及びその亜種に似ているが,嘴と脚が赤色でやや大きく,それに比例して翼と尾が長くなく,又最外側の初列風切羽はそれ以外の初列風切羽より短いなどの点が異なるので,今迄に発見された事のない新種のクイナと断定し,ここに新種として記載する。
  • Donna Hansen
    1981 年 13 巻 3 号 p. 153-182
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1978年春,箱根国立公園で調査した日本のカワガラス,および1977年の春にカルフォルニアのシエラ山麓で調査したメキシコカワガラスの番構造について比較考察した。この2種の類似点は次の通りである。
    1) 両種とも人がよく出入する地域に生息し,ダムの人工壁に営巣する。
    2) 両種とも固定したナワバリを有し,ナワバリの境界を出ることはほとんどない。雄,雌ともナワバリ防衛飛行(territorial defence flight)を行なう。
    3) 繁殖期におけるこの行為は,番形成におけるコートシップディスプレイの前に,普通見られるものとは異なっていた。
    4) 両種とも雄は営巣の段階で,番いの相手を変えた。番いの前の相手と新しい相手は後でコートシップや交尾が行なわれる時に,巣の地域に共に出現した。そしてメキシコカワガラスの場合雄は両方の雌と交尾した。
    5) 隣接するナワバリ内の雌たちの繁殖サイクルに部分的非同時性が見られた。
    両種における相違点も観察された。
    1) 巣は隣接するナワバリ内にあるが,カワガラスの方がメキシコカワガラスより一層巣が接近していた。
    2) メキシコカワガラスは流れのコースに沿って飛ぶがカワガラスはむしろ,地上を飛ぶ傾向がより大きかった。
    3) メキシコカワガラスが行なうコートシップディスプレイは著者が垂直伸びディスプレイと称するものであるが,カワガラスではそれが水平伸びであった。ただし,両種とも,周回誇示飛行を行なった。
    著者はメキシコカワガラスとカワガラスの繁殖行動におけるこの著しい類似性はおおむね本調査における環境の類似によるものであり,特に人間がカワガラスの生息地におよぼした影響によるもの,と仮説する。人間の近接およびダム,橋,養魚場の建設による生息地への影響は,メキシコカワガラスとカワガラスの営巣行動,特に営巣場所と採餌地域に必要な自然資源を変更する働きをする。この環境要因に加え,これら2種のカワガラスは一夫多妻制への前適応をもっていたため,一夫多妻の配偶形式が可能となった。この前適応性は,1)育雛上の仕事の性差と,2)安全なドーム形の閉鎖巣によって,1羽の親の育雛労力が節約でき,雌の間の生殖環をずらすことができ,まだ水中の餌を(他の鳥と競争なく)独占できるという条件である。逆に言うと,カワガラス類は一夫多妻制繁殖システムによく適応しているので,人間によってもたらされた彼らの生息環境における諸変化に対処することが可能である。
  • 藤巻 裕蔵, 戸田 敦夫
    1981 年 13 巻 3 号 p. 183-195
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.帯広市の都心から郊外の住宅地,郊外の落葉広葉樹林の4調査地の鳥類について1977,1980両年の5月下旬~7月中旬に調査した。
    2.記録された鳥類は(A)林で39種,(B)林や空地のある住宅地で33種,(C)樹木の多い住宅地で23種,(D)都心部で9種で,植被率が減少するにしたがって種数は少なくなった。
    3.林での優占種はアオジ,ゴジュウカラ,アカゲラ,ニュウナイスズメ,ハシブトガラ,シジュウカラなど森林性,灌木林性鳥類であったが,住宅地では,スズメ,カワラヒワ,ドバト,ハクセキレイなどが優占していた。
    4.種多様度は林でもっとも大きく,都心部の住宅地で最小で,植被率が減少するにしたがって小さくなった。
    5.各調査地の鳥相の類似性は調査地CとDの間でもっとも高く,ついでこれら両調査地とBで高く,Aの鳥相はどの調査地とも類似性は低かった。
  • 藤巻 裕蔵
    1981 年 13 巻 3 号 p. 196-206
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.帯広市の都心部から郊外の農耕地にかけて500×500m2の方形区157個を設け,1976~1978年の5月下旬~7月上旬に植被率と鳥類の生息状況の関係について調べた。
    2.都心部から郊外にかけて植被率(x)が高くなるにしたがって出現種数(y)は増加し,両者の間にはy=4.1766+0.3542x-0.0020x2という関係がみられた。
    3.植被率10%以下ではスズメ,ハクセキレイ,カワラヒワ,ドバト,ハシボソガラスが主要種であったが,植被が増加するとムクドリ,アオジ,ノビタキ,コヨシキリなどが主要種として加わった。加わる種は植被率の増加に伴って増加し,植被率60%以上ではアカゲラ,エナガ,ハシブトガラ,シジュウカラなどの森林性鳥類も加わった。
    4.植被が草地の場合より林の方で種数と種多様度も増加した。
  • 田中 裕, 稲葉 不二夫
    1981 年 13 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.この報告は,東京大学海洋研究所研究船白鳳丸(3200トン)による研究航海(1974•1975•1980年)で得られた海鳥の目視観察資料に基ずき,北太平洋西部及び日本近海におけるオオシロハラミズナギドリの季節的分布と移動についてまとめたものである。
    2.オオシロハラミズナギドリの北太平洋西部への渡来時期については,5•6月には同海域では確認されず,7月下旬になって初めて北緯30度以北の同海域で観察された。8月にはマリアナ諸島東方海域に多数分布し,9•10•11月まで同海域に広く分布していた。
    3.7月下旬~11月下旬までの北太平洋西部海域での観察数は70回,143羽であった。これは1日平均4時間の観察に基ずくもので,実際にはより多数の本種がこの海域に渡来しているものと推察される。
    4.オオシロハラミズナギドリ分布域の表層水温は20.7°~31.4°Cと幅広く,27°Cで分布密度が高く,次いで30°Cで密度が高くなっている。
    5.オオシロハラミズナギドリの北太平洋西部海域における分布は,北緯35度以南,表層水温20°C以上の海域であった。8月には,北緯20度付近,表層水温29.9°~314°Cの海域に分布密度が高く,熱帯•亜熱帯産のオナガミズナギドリ,セグロアジサシ,シロアジサシ,クロアジサシと行動をともにして,活発な採餌行動が観察された。
  • 黒田 長久
    1981 年 13 巻 3 号 p. 215-227
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.1974年4月に皇居内ハシブトガラスの若鳥群に1羽のバフ変個体を発見し,1977年に1.5km離れた港区赤坂の自宅のA番のなわばりに同一個体とみられるものが侵入したことから,本種の若鳥群期間を3~4年と推定した。
    2.その後バフ番はA番やB番となわばり争いを続けたが,その中間地域(山王地域)を領有した。
    3.しかし,その境界はシーズン中,また年々変動し営巣はしたが(ある年は巣位置選定はしたがそのままとなった),その幼鳥は発見できなかった。
    4.バフ個体は1981年4月の観察以来姿を消し(1979~'80年は観察不十分),約4年間を生産なわばり成鳥として過した。
    5.地元のA番は1969~'70年には約45haの広大ななわばりを占めていたが,バフ番の侵入により,その2/3~3/4の面積を失い,西南の中心部約10haに圧縮された。
    6.その面積は丁度,なわばりの密集する六本木の高層マンション,ビル地域の番なわばりと同じである。
    7.ここでは,ビルに囲まれた約6haの駐車場の中の立木の1つで雛の巣立をみた。
    8.以上の事実に基き,都会の見通しよい各個建て市街と見通しの悪い高層ビル街とでのハシブトガラスのなわばり面積について,開闊地と森林におけるなわばりの伸縮と対比して考察した。
    9.各個建市街は,開闊地に相当し,雄雌相互の連絡および侵入ライバルの発見が遠距離で可能であり,広いなわばりを守り,かつ餌場となる集塵所の残飯は少く散在的であり,広く探餌する必要がある。
    10.高層ビル街は,森林に相当し,雄雌相互および侵入ライバルの発見,防衛は建物に妨げられて近距離となり,なわばりは圧縮され,また,集塵所の餌は局在的だが量が多く,エネルギー確保が小範囲で可能である。
    11.1969~'70年当時の赤坂のなわばりは9.の場合の最大なわばりの例と考えられ,バフの侵入した1977年以降はビル建設が進み10.の場合に移行し最小なわばりに縮小した。そしてそれは,すでに高層ビル街として安定している六本木地区のなわばり面積と同じであった。
    12.集塵所の餌が利用できる限り,ハシブトガラスは高層ビル街に高密度分布できるが,集塵所が完全管理されるか完全な商店街(例えば銀座)になると,カラスも公園,緑地の自然餌に依存して局部的分布をするようになる。
    13.なお,広なわばりで緑地自然餌も利用できる状態では3羽の雛の生産が可能だが,ビル街残飯依存では2雛が限度のようである。
  • 西貝 正彦, 佐伯 百合夫, 石谷 類造, 杉森 文夫, 石橋 順子, 岡 奈理子, 仲真 晶子
    1981 年 13 巻 3 号 p. 228-235
    発行日: 1981/12/25
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ハシボソミズナギドリの死亡(衰弱)原因を明らかにするため1978年5月から6月にかけて,主に城ヶ島沖で採取した死亡•衰弱鳥34例について病理組織•血液および寄生虫の検査を実施した。肉眼的に全身骨格筋,特に胸筋の著明な萎縮•混濁がみられ,皮下脂肪のほとんどないものが19例にみられた。組織学的には主要臓器に幼若齢の所見が全例に認められた他,骨格筋の筋変性[21/31],肝臓•腎臓の血鉄症[肝臓16/31,腎臓7/26],脾臓の萎縮[14/17],腎臓の硝子滴変性[9/26],膠様髄[1/1],心筋変性[10/32]が認められた。
    血液所見では高度の貧血[2/10],多染性•低染性赤血球の出現[4/10]がみられ,寄生虫検査では多量のハムシ寄生[1/34],条虫の寄生[3/34]が認められたが,マラリア等の住血原虫は認められなかった。以上より感染症の所見は認められず,貧血ならびに栄養失調が幼若齢所見と合わせて重要な死亡原因となっており,これらは"幼若鳥の自然死"の範疇に入るものと推定された。
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