山階鳥類研究所研究報告
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15 巻 , 1 号
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  • 中村 登流
    1983 年 15 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    志賀高原の亜高山針葉樹林の鳥類群集について1973年から1981年の9年の繁殖期に調査された。またその附近のいくつかの針葉樹林,落葉広葉樹林の鳥類群集と比べられた。調査結果は針葉樹林部,落葉広葉樹林及びその両者の推移帯に分けて分析された。亜高山針葉樹林の鳥類群集の特徴は極端に高い密度(1.0♂/ha以上)と安定した個体群(変異係数0.1以下)を持っていることである。これらはヒガラ,キクイタダキ,メボソムシクイ,ルリビタキの4種である。亜高山針葉樹林の下縁では高い種の多様性,高い個体群密度,高い群集の多様度を示す特徴がある。これは広葉樹林からの浸入種(シジュウカラ,キビタキ,コルリなど)と推移帯の種の存在であらわれる(クロジ,エゾムシクイなど)。ヒガラを除く代表種は推移帯を経て広葉樹林部でにわかに消失する。鳥類群集の分析の一つとして,適応空間(中村1978)の概念を更適用した。針葉樹林の鳥類群集の全個体数の70%は3つの主要な適応空間から成り立っている。それはシジュウカラ型,ムシクイ型及びツグミ型適応空間である。代表4種の内ヒガラはシジュウカラ型に,キクイタダキとメボソムシクイはムシクイ型に,ルリビタキはツグミ型に入る。亜高山針葉樹林では特に,ムシクイ型適応空間の大きい比率を持つという特徴がある。
  • 由井 正敏
    1983 年 15 巻 1 号 p. 19-36
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.繁殖期の鳥類群集構造の年次変動の実態を明らかにするため,3つの試験地の計7つの異なる林相プロットで,4~12ヵ年のなわばり記図法調査を行なった。
    2.なわばり数で表わした各鳥種の繁殖密度は,若い林では増加ないし減少傾向を示すものが多く,全種合計では年とともに増加した。壮令人工林や天然林では,増加ないし減少傾向を示すものは相対的に少なく,最大で平均値の2倍位までの変動幅に収まる一見不規則な年次変動をするものが多かった。全種合計の密度は,変動係数10%前後以内に収まり年々安定していた。
    3.比較的若い林における下刈り,除伐などの育林諸作業は,生息鳥類に大小さまざまの影響を与えた。
    4.その影響の大きい場合を除いて,若令林,壮令林の鳥類群集は,10年前後の期間は全体としてあまり変化せず,同一の群集と見なし得ることが明らかになった。極相林では,より長期間同一の鳥類群集にとどまることが推測された。
  • 佐野 昌男
    1983 年 15 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.この調査は,1976年11月から1977年3月にかけて,北海道の18か所で行なった。冬期間のスズメPasser montanusの個体群密度と生息環境について,繁殖期のそれと比較して検討した。
    2.個体群密度は場所により大きな差がある。高い所では1280.0羽/km2,低い所では20.6羽/km2である。
    3.冬の個体群密度は,繁殖期と比べ都市部では平均倍と増加し,村落部では平均0.4倍と減少した。都市部と村落部の間で,秋と春に成鳥の移動があるものと考えられる。
    4.個体群密度は,繁殖期中の調査でも人家数との関係が明らかだったが,冬はさらにその関係が高くなった(r=0.7537>r0.05)。また,個体群密度は人口との間にも高い相関関係が認められた(r=0.6479>r0.05)。
    5.冬の行動場所は人家に密着し,人家から20m以内の行動が都市部98.2%,村落部99.5%で,採食地点はさらに近くなり,10m以内で都市部97.0%,村落部97.9%だった。
    6.都市部は家屋内での採食が最も多かった(23.8%)。村落部はごみ捨て場での採食が多かった(55.3%)。
    7.繁殖期では,各部分の面積とそこでの採食個体数との間に相関関係が成立したが,冬は全ての環境が積雪のため画一化され,極端な人家集中により,両者の相関は認められなくなった。
  • 古厩 昌幸
    1983 年 15 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    イワヒバリとカヤクグリの生態的分離について,両種の生息場所,採食地,ソング•ポストの調査を行い比較検討した。調査は1977年4月から1980年10月までの間に,中央アルプス木曾駒ケ岳の高山帯で行った。得られた主な結果はつぎのとおりである。
    1.イワヒバリの生息場所は砂礫地が30.3%,岩礫帯が25.6%と裸地が多かったのに対して,カヤクグリの生息場所は高山低木林が多く58.3%であった。
    2.高山低木林ではイワヒバリは幹や林床などの下層部で,カヤクグリは主として枝や葉などの上層部で観察され,林内で階層別に分離していた。
    3.イワヒバリの採食地は砂礫地が46.2%,高山草本帯が25.2%,カヤクグリの採食地は高山低木林が57.3%と両種の間で相違がみられた。
    4.両種ともに調査地に残雪がある期間は雪面に飛来した昆虫を採食していた。
    5.イワヒバリのソング•ポストは岩礫帯が68.2%ともっとも多く,カヤクグリのソング•ポストは高山低木林が87.4%と圧倒的に多かった。
  • 細野 哲夫
    1983 年 15 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    (1) 1976年から1980年に,長野県上水内郡鬼無里村大字日影•鬼無里(西地区)で,オナガの年間の個体数の変化と繁殖について調べた。
    (2) 積雪期間が12月末から4月上旬に及び,積雪1~1.5mの地域にも通年オナガは生息していた。調査地域内の地域群は1群で,最大個体数は約40~45羽であった。
    (3) 6巣を発見した。うち2巣は非繁殖期の群行動圏外,約3.5kmの所であった。
    (4) 営巣木は,モミ,スギ,カイヅカイブキ,ウメであった。産卵は6月初旬から7月中旬の間であった。1腹の卵数は,6~7卵で今までの観察例と似ている。3巣で不ふ化卵が1~2個みられた。抱卵日数,育雛日数も従来の観察と特に変った点はみられなかった。
    (5) 1巣にカッコウが托卵した。カッコウの卵が4日前にふ化し,オナガの卵と雛を巣外へ出してしまった。小林建治氏によれば,塩尻市東山の1巣では,両者とも巣立った。
    (6) 育雛期に,前年生まれの個体による手伝い行動が見られた。雛および雌への給餌,糞の始末,害敵の攻撃などが観察された。
  • 小林 桂助
    1983 年 15 巻 1 号 p. 72-86
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.調査地域は兵庫県社町の農耕地である。隣接して散在する灌漑用水池を巡る堤防と法面,並びに1部休耕田を含む3haを調査の対象とした。
    2.1979年には34回,1980年には35回の調査を行ったが,セッカの初鳴は4月中旬であり以後急激に数を増し,8月中旬までの間には多くの巣を見る事が出来る。9月中旬には停鳴期に入り,大多数のものは越冬地に渡去し,冬期滞留するものは極めて僅かとなる。
    3.調査した巣は1979年には40個,1980年には52個である。両年度を通じ5月,6月にはそれぞれ25巣,7月24巣,8月には18巣を記録した。セッカは4月下旬から営巣にかかり,8月になると新規に営巣されるものは急激に減る。
    4.繁殖期♂は長時間に亘り上空を飛行するが,♀は主としてくさむらの間を潜行する。野外に於ける♂♀の識別はなき声以外には容易でない。繁殖期の♂は頭上がパステル褐色であるが,♀の頭上は黒色で不鮮明な黄褐色の縦斑がある。♂が低木に止って鳴く時は口腔内は漆黒であるが,♀は黄色である。
    5.♂は複数の外装のみの巣を作り,番が形成されると♂♀共同でチガヤやススキの花穂を運んで内部の産座を作る。初卵産卵後も巣の補修は行なわれるが,1巣分の卵が産み揃うまでに巣は完成して♀は抱卵にかかる。ほぼ10日後に雛が孵化すると♂♀共同で育雛にあたる。調査した巣はいずれも一夫一妻であった。
    6.営巣草本は両年度共95%以上がチガヤとススキである。5月中は64%がススキに営巣されるが.6月,7月と徐々に減り8月には11%になった。一方チガヤに営巣されるものは5月には28%であったが徐々に増し,8月には80%以上がチガヤに営巣された。5月にはススキの草丈は短かいが,生長するに従い営巣するものが少なくなる。チガヤは5月ではセッカの営巣には草丈が短かすぎるが,生長するに従い営巣するものが多くなる。
    7.90巣につき地上から巣底までの高さを計測したが,営巣した草本が生長するのに従い巣の位置は高くなる。ススキは生長が早く,20日間に巣の位置が23cm高くなったものがある。チガヤはススキ程生長が早くないので,雛の巣立時でも構巣時とあまり変らない。90巣の地上高は20cmから30cmのものが26巣と最も多く,10cm以下のもの50cm以上のものがそれぞれ7巣で最も少なかった。ほぼ70%が10cmから40cmの間に集中している。営巣初期の5月中は一般に巣の位置は低いが,8月には草丈の生長につれ高くなり,20cm以下の巣は全く見られなかった。
    8.♂が外装のみを作った巣のうち,番が形成され巣として利用されたものは55.7%であった。巣は葉の縁に嘴であけたと思われる小さな穴にクモの糸を通して葉を綴り合せるが,糸のぬけるのを防ぐため一端は糸がこぶ状になっている。葉のすき間や巣底,側面にはチガヤの花穂を多量に使用するが,巣材としてはほかにチガヤとススキの枯細根,加工綿,スゲ,ネザサの枯葉などであった。
    巣は長楕円形で上部に入口がある。巣高はほぼ18.3cm外側直径7.5cmで入口は6~7cm×3~4cmであり,雛が成長して親鳥の出入が頻繁になると入口は拡大され巣はつぼ型となる。
    9.1腹の卵数は4卵から7卵であるが,大多数は5卵と6卵で,平均5.7卵である。
    10.調査地域で測定した新鮮な26卵の平均重量は1.24gで偏差は極めて微小であり,長径平均16.0mm,短径11.7mmであった。地色は白色のものと淡青色のものと2型あり,いずれも褐色微小斑が散布している。
    11.11例によると抱卵日数は10日~12日,孵化後巣立までに11日~12日を要した。
    12.セッカは第1回目の繁殖に成功した時でも2回目の繁殖を行うが,外敵により失敗に終ると,3回目の繁殖を試みるがこれも成功せぬとその年の繁殖は断念する。
    13.繁殖用の巣として利用されたものは♂の作った巣型のうち60%であるが,そのうち巣立に成功した巣は42.6%だけである。巣立不成功の原因は主として外敵によるものであり,38.7%はネズミ類による被害,32.4%はヘビによるものであった。
    14.産卵された卵は249個であり,雛が巣立に成功したのは49.4%であった。1腹の卵数は平均5.7個であるから,年2回繁殖すると11.4羽が生産されることになる。所が巣立成功率は49.4%であるから平均1番から5羽が巣立することになる。巣立後事故によって死ぬものも多いが,この様な繁殖成功率を繰り返し,種族の維持が保たれている。
  • 宗近 功, 中山 孝
    1983 年 15 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 1983/03/31
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    野生鳥類には実施が困難とされている人工受精による繁殖をマナヅルに応用し,1例ではあるが成功し,次の様な結果が得られた。
    1.ツルの精液採取は,鳥の大きさの関係で立った状態で腹部マッサージ法により可能であった。雌への精液の注入を雄と同様立った状態で実施した。
    2.精液の採取量は平均0.17ml(0.01~0.4ml)であった。
    3.採取された精液中の精子数は2,250,000~2,480,000/mlで,そのpH値は平均7.16であった。
    4.受精状況は注入後,翌日産卵されたものは受精しておらず,4日目に産卵したものは受精卵であった。ところが9日目に産卵したものは無精卵であった。
    5.孵化した雛は,外見上特別な異状は認められず,また,成育過程においても特別な変化は認められず,正常な成育をしたものと思われた。
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