山階鳥類研究所研究報告
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21 巻 , 1 号
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  • 田中 博之
    1989 年 21 巻 1 号 p. 1-41
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    北太平洋亜寒帯域の主要海鳥類の一種であるエトピリカにおいて生態学的特性とPCBsの蓄積•代謝を明らかにする目的で,オホーツク海,ベーリング海を含む北部北太平洋で1973~1984年の夏期に採集した試料を用い,分布,クチバシの外部形態,組織•器官重量,食性などの生態学的特性,さらに,PCB異性体•同族体の濃度と負荷量,及びその組成を解析し以下の結果を得た。
    1.エトピリカの夏期ベーリング海及び北部北太平洋における平均分布密度は1km2当たり0.953個体であった。また,観察された全海鳥類の1.62%を占めた。エトピリカは他の海鳥類と比較し外洋性の特徴を示し,その特徴は成鳥に比べ幼鳥で顕著であった。
    2.エトピリカの越冬海域からの北L移動は幼鳥と比べ成鳥で時期的にも,また速度的にも早かった。これは成鳥が繁殖地にいち早く達する必要があるのに対して幼鳥は好適索餌海域の形成に合わせ北上すればいいためと考えられた。ざらにこの成長段階による北上過程の違いは幼鳥の換羽が5~7月なのに対して成鳥の換羽が繁殖期以降に行われることを示唆した。
    3.エトピリカは表面水温2~12°Cの広い水温帯に分布していた。成鳥は6°C前後の水温帯に集中的に分布していたが,幼鳥は2°Cから12°Cまで比較的均一に分布していた。そして表面水温12°C以上の海域には分布せず,8~9月には北緯47度以北に分布が限られていた。このことは,北西部北太平洋における冬期の分布南限が北緯35度近辺,つまり亜寒帯境界を越え亜熱帯北部に達することを示唆した。
    4.エトピリカの上嘴に形成されるFurrowを基に六つの成長段階に分け(F(Y),F(0),F(1),F(2),F(3),F(4))クチバシの外部形態を測定したところ,ほとんどの測定部位で雄>雌であった。特に会合線方向の測定値では中央値を基に約7割の確率で雌雄の判別が可能であった。
    5.Furrowの増加に伴う各測定値の変化は以下の三つに分類できた。1.一定。2.F(Y)からF(0)で増加しその後一定。3.F(Y)からF(0),F(2)からF(3)で増加する。そして,クチバシの成長は,まず会合線方向以外の成長がみられF(Y)の成長段階からF(0)~F(2)の成長段階となり,次いで上嘴が成長しF(3),F(4)の成長段階になると考えられた。
    6.エトピリカにおけるFurrowと年齢の関係を推定すると,F(Y):0~1歳,F(0):1~2歳,F(1):2~3歳,F(2):3~4歳,F(3)及びF(4):5歳以上となった。このFurrowと年齢の関係はクチバシの成長とよく一致していたことから,F(Y)を幼鳥,F(0)~F(2)を亜成鳥,F(3),F(4)を成鳥とする三つの成長段階に区分できた。
    7.組織•器官重量はいずれの成長段階でも雌に比べ雄で大きい値を示し,特にその差は臓器に比べ骨格系と筋肉系で顕著であった。幼鳥から亜成鳥で全体的な成長,そして亜成鳥から成鳥で骨格系の成長が認められた。生殖腺は重量,重量割合共に成長に伴い増加した唯一の器官であった。骨格系の重量割合は雄では成鳥>亜成鳥,雌では亜成鳥>幼鳥で有意であり,雌雄間における成長のタイミングのずれが示唆された。
    8.エトピリカの成鳥雄の組織•器官重量割合は,近縁種であることを反映しニシツノメドリと類似していた。一方アデリーペンギンと比較すると,肝臓及び腎臓の重量割合が高く,エトピリカで代謝,排泄能力が優ることが示唆された。
    9.主要餌生物はイカ類で,ついで魚類もよく利用されていた。オキアミ類,端脚類など他の餌生物は主に成鳥により利用されていた。特にベーリング海における利用が顕著であった。
    10.イカ類はいずれの海域でもよく利用されていたが,魚類は幼鳥では北緯47度からアリューシャン列島に至る海域,成鳥では4月,5月のアリューシャン列島以南の海域で利用されていた。また,成鳥に比べ幼鳥は小型の魚類,イカ類を利用する傾向が認められた。つまり,エトピリカにおける餌生物の利用は,成長段階で時空間的,サイズ的に異なることが示唆された。
    11.エトピリカに残留するPCBs,DDEの総体中濃度は,それぞれ270±50ng/g(平均値±標準偏差),170±50ng/g,体内総負荷量は160±40μg,100±30μg,またPCBs/DDE比は0.61±0.11であった。両化合物濃度の間には相関係数0.818の正相関が認められ,いずれの検体でも質的に似た暴露を受けていること,さらにはエトピリカの分布域におけるPCBs,DDEの汚染状況が似ていることが示唆された。
    12.PCBs,DDE濃度には顕著な雌雄及び成長段階による差はなかった。このことは成長段階の早い時期に化合物の蓄積平均に達していることを示唆する。そして,両化合物の魚介類との間の生物濃縮係数はイルカ類に比べ小さく,代謝力が優る,もしくは効率よく排泄できる,またはその両方が考えられた。
  • Saumen Kumar Maitra
    1989 年 21 巻 1 号 p. 42-51
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    成鳥雄バライロコセイインコを年間精巣周期の異なる段階において45日間にわたり毎日,長日(22L)と短日(2L)に晒した。
    日照実験を行った副腎皮質の活動は,同時に平行して行われた自然の日照に晒した鳥と,それぞれ異なった組織生理学的基準によって比較した。これらの基準は,鳥の副腎のステロイド合成に関わる部分における分泌機能の正確な指標となるものと思われる。この研究で短日(2L)条件では,年周期の如何なる段階における副腎皮質組織の活動にも影響しないことが解った。長日(22L)に晒した鳥の副腎皮質の組織は,繁殖期の段階では影響はなく,準備期の後期と進行期の初期及び繁殖前期の各段階では皮膜下域内に不活発な相を示した。そして年間精巣周期の準備期の初期と進行期の後期の間,日照に晒した場合には皮膜下域と内部域の両方とも萎縮した。
    この結果をインコにおける副腎の活動について日照の影響に関するこれまでの研究に照らして考察した。
  • 北川 珠樹
    1989 年 21 巻 1 号 p. 52-75
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1) 千葉県市川市で,1985年9月から1987年12月にかけて行ったセイタカシギの敵対行動に関する研究結果を述べた。
    2) 敵対行動は行動姿勢と声に分けて記述した。
    3) 敵対姿勢は同種または異種個体との関係で生じるもので,1.警戒姿勢,2.傾斜姿勢,3.低頭姿勢,4.水面っっき,5.パトロール,6.転移姿勢,7.攻撃姿勢,8.忌避姿勢,9.牽制姿勢に区分された。
    4) 敵対発声は,1.警戒声,2.ヘビ警戒声,3.攻撃声,4.牽制声に区分された。
    5) これらの行動姿勢と声が生じる状況も併せて述べた。
    6) 同種個体間で生じる忌避姿勢とその発現に関連した敵対姿勢についてまとめた。
    7) 各敵対発声と関連して生じる行動姿勢について述べた。
  • 藤巻 裕蔵
    1989 年 21 巻 1 号 p. 76-83
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.十勝川下流(河口~札内•十勝合流点)沿いで調査地4か所を設け,1981~1987年の5月中旬~7月上旬に線センサス法で鳥類の調査を行った、
    2.全調査地で47種の鳥類が観察され,このうち相対優占度2%以上の主要種は,オオジシギ,ヒバリ,ノゴマ,ノビタキ,シマセンニュウ,マキノセンニュウ,コヨシキリ,ホオアカ,シマアオジ,アオジ,ベニマシコで,すべて灌木•草原性鳥類であった。
    3.各調査地における鳥類群集の多様度指数は,それぞれ3.49,3.13,3.94,3.55で,調査地点では大きな差はなかった。
    4.川沿いは農耕地に比べ,より多くの灌木•草原性鳥類が生息できる環境である。
  • 田岡 三希, 佐藤 哲, 鎌田 勉, 奥村 浩
    1989 年 21 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1.北海道の大黒島でコシジロウミツバメの雄•雌のChatter-callとPurr-callの再生実験を行った。
    2.コロニーから少し離れた地点にスピーカーを置き鳴声を再生すると,Chatter-callを発しながら多くの鳥が上空に集まった。
    3.反応した個体の性をそのChatter-callを分析して調べたところ,異性の鳴声に反応していることがわかった。
    4.巣穴中の個体への再生実験では,同性の鳴声に反応することが既にわかっている。従って,これらの鳴声は再生実験の方法の違いによって全く逆の性の個体の反応を引き起こすことが出来ることになる。
    5.このことは同じ鳴声が状況の違いによって複数の意味を持つことを示している。
  • 黒田 長久
    1989 年 21 巻 1 号 p. 90
    発行日: 1989/03/15
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    A number of observations of one or more buff-mutant (schizochroismic) Jungle Crows, Coruvus macrorhyrchos, are reported. These observations occurred between January 5 1987 and February 6 1988. On January 5 1987 a buff-mutant individual was observed near the TBS television station. It appeared to be paired with a normal individual and was circling with its partner. The next observation was on February 3 1987 in the same locality. This time the buff bird was flying together with a partner in a territorial quarrel with another pair. The bird disappeared after four days. Finally, on February 6 1988, a sighting was made near the Hikawa Shrine, 500m from the earlier sightings. The local priest reported a buff bird being chased by other crows. It is highly probable these sightings are all of the same bird. It may also be possible the individual is the same as one previously reported about 500m east of the TBS television station (Kuroda 1986). If so, then the individual has been alive for 14 years from the first sighting.
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