山階鳥類研究所研究報告
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25 巻 , 2 号
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  • 前田 琢
    1993 年 25 巻 2 号 p. 105-136
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    経済•生産性重視の開発手法のもとにつくられてきたわが国の都市は,自然環境にきわめて乏しく,野生動物が生息できない非生物的な環境によって構成されている。しかし近年,多様な生物が生息できる環境を都市に創造し,人間と生き物の共存を図ることが要望されつつある。そうした生物的な都市を実現するためには,野生動物とその生息環境の関係を知り,街づくりへ展開していくことが必要である。本論では,陸上性鳥類群集を対象に,その特性と都市の様々な環境要因との関係についての生態学的研究を整理,分析し,鳥類の生息を考えた都市環境形成の方策について検討,提案を行なった。主な論点は以下の三つに要約される。
    (1) 都市の鳥類群集は植被量,植生構造,植物種構成,植被の分散度など,植生に関係した要因に影響されており,中でも植被量の増加は多様性の高い群集を都市に導くために特に重要であると考えられる。市街地の植被を増やすためには,住居の集合化,袋道を活用した道路網への転換,駐車場の地下化,屋上や壁面の緑化といった植被スペースを増やす設計や,過度な剪定を行なわない植栽管理方法の採用などが望まれる。
    (2) 都市に島状に存在する緑地の鳥類群集は,緑地の面積,孤立性,形状などの地理的要因と関係を持つ。これらの関係は更に,地域,季節,分析方法などによっても大きく変化すると考えられるため,鳥類保護のためのよりよい緑地の特性を明らかにするには,地域に即した数多くの情報を得る必要がある。しかし,島嶼生物地理学理論による提案(Diamond 1975)も現時点でのひとつの指針として有効であり,その観点から見ると,広大な緑地帯を確保する田園都市(Howard 1902)は鳥類の生息に好ましい都市形態であると考えられる。
    (3) 都市の鳥類は建物などを営巣場所として利用することができ,また給餌や巣箱の設置など,人間による積極的な援助を受けることができる。しかし,こうした人工的資源への依存は,一部の鳥種のみの繁栄につながるとともに,自然資源の利用に基づいた本来の生態を失う可能性があるため,極力減らすべきと考えられる。同様に,土地固有の鳥類群集や生態系に大きな影響を与え得る外国産種の導入•定着にも,十分な防止策を講じる必要がある。
  • 岡崎 正規, 押田 友紀子, Richard Malony, John Warham
    1993 年 25 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    ニュージーランド•モツアラ島においてハイイロミズナギドリ(Puffinus qriseus)の表層土の化学的性質に対する影響を,島内3地域それぞれに設置した3つのコドラートを比較することによって明らかにした。化学分析用土壌試料はハイイロミズナギドリが営巣を開始する直前の1990年9月27日にコドラートの左あるいは右隅下方5cmの距離(巣穴入口から55-60cmの距離)から表層土(0-20cm)を採取した。1.巣穴の入口から50cm以内で,リターは存在するがハイイロミズナギドリの踏み付けのない地点(巣穴コドラート)の表層土のpH(平均5.08),EC(平均0.79mScm-1),有効態リン酸(平均2681mg P2O5kg-1)と,巣穴から20-50m離れ,ハイイロミズナギドリの影響が少ないとみられる地点で,リターを保持し,植物が存在する地点(リター存在コドラート)およびリター存在コドラートと同じ条件であるが,本研究を始めるに当たってすべてのリターと植物を1990年7月3日に除去した地点(リター除去コドラート)の表層土のpH(6.52,6.53),EC(0.51,0.48mScm-1),有効態リン酸(149,138mg P2O5kg-1)とは有意な差異が認あられ,ハイイロミズナギドリの糞が土壌の化学的性質を変化させることが示された。2.リター存在コドラートとリター除去コドラートの土壌の化学的性質には有意な差異は認められず,ハイイロミズナギドリ営巣前の約3ヵ月(冬期)ほどの短期間のリターの除去は表層土の化学的性質に影響を及ぼさなかった。
  • 藤巻 裕蔵, 梅木 賢俊
    1993 年 25 巻 2 号 p. 144-156
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1) 1987年に北海道全域にわたりクマゲラの繁殖•生息状況に関するアンケート調査を行ない,1,929人からの回答を得(回収率92.5%),回答件数は2,544であった。
    2) 観察された成鳥数は1-15羽であったが,1-2羽が90%を占めた。
    3) 観察された幼鳥数は1-4羽で,観察例の63%は6-7月の記録である。
    4) 北海道3,652区画(1区画は約5km四方)中,47区画で繁殖が確認された。繁殖確認の区画の植生は常緑針葉樹林と落葉広葉樹林が主である。また標高では500m未満に多かった。
    5) 繁殖期(3-8月)にクマゲラが生息する区画は787で,植生では常緑針葉樹林,落葉広葉樹林,カラマツ林の割合が高く,標高では400m未満で65%を占め,標高が高くなるにしたがって少なくなった。
    6) 時期に関係なくクマゲラが生息する区画は985で,植生,標高とも繁殖期における傾向と似るが,平野部で生息する区画が増加した。
    7) アンケート調査から得られた繁殖に関する情報はかなり信頼できるが,生息する区画の数は既存の観察記録と比較すると過大であると考えられる。
  • 江口 和洋, 武石 全慈, 永田 尚志
    1993 年 25 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    山口県熊毛郡熊毛町八代地区に渡来し越冬するナベヅルは,戦後の47年間に250頭から41頭に減少した。減少の原因究明と越冬地保護策を検討するたあに,1983年~1985年の3年間現地での調査を行なった。ナベヅルは日中は刈り入れ後の耕作地で採餌し,渡来初期には家族単位の採餌なわばりを防衛するが,1月以降は給餌場近辺に集中し群れを形成する。夜間は山あいの田,山腹の裸地,ため池の岸辺などで集団で就時する。気温が低下すると,たあ池の利用率が上昇する。採餌場所の減少,人間による干渉,ねぐらの劣悪化などが越冬個体数減少の原因と考えられる。行政当局による給餌,ねぐらの改良,干渉の防止などが試みられているが,個体数の回復には至っていない。
  • 橋本 博明
    1993 年 25 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    1) 1980年2月8日,北海道積丹岬の沿岸でホッケ刺網に羅網し,溺死したハシブトウミガラス11羽の胃内容物を調査した。
    2) 空胃個体の2羽を除いて,胃内容物にはすべてイカナゴのみが出現した。多いものでは1羽の胃から,イカナゴが5-6尾,合計重量で約80-130g出現した。
    3) イカナゴの全長と体重を,その相対成長式で計算復元した結果,ハシブトウミガラスは全長186-253mmのイカナゴを1度に合計重量で103.7-140.0g摂食していた。これはハシブトウミガラスの体重の7.0-12.5%にあたる。
    4) ハシブトウミガラスは,夏季の繁殖期以外は陸に近づくことはなく,食性も無脊椎動物を中心とする多食性であることからすると,冬季にごく沿岸に分布し,単一種のみの魚類を摂食していたことは極めてまれなことと考えられる。
    5) ハシブトウミガラスは,冬季,積丹水域に産卵のたあに来遊してきたイカナゴを狙って摂食活動をしていたものと考えられる。この海域ではホッケ,サクラマス,スケソウダラなどの魚食性魚類も来遊してイカナゴを摂食していた。ハシブトウミガラスはイカナゴをめぐってこれらの魚食性魚類と競合関係にあったものと推察される。
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